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失敗しない初任者・若手教員の職場作法~「先生」って偉いの?~【学級経営1年間の見通しと毎月のアイデア#9】

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たとえ新任教師であっても、学校において教員は全員「先生」と呼ばれます。特定の世界で高い地位を持つ人に対して使われる敬称と同じですから、ついつい、「私も偉いのだ」と思ってしまう人がいます。しかし、先生の語源は「先に生まれた人」。学校における先生はまさに、子どもたちより何年か先に生まれた人だから、そう呼ばれているのだと思ってください。学校は、あらゆる立場の人が対等かつ平等に手を携えて「チーム」で動く場所です。初任者にとって最も大切なのは、チームの一員として信頼される存在になることです。

若手先生の航海図|学級経営1年間の見通しと毎月のアイデア バナー

執筆/環太平洋大学教授・内田仁志

学校の関係者にはこんな人たちがいます

学校の主役といえばもちろん子どもたちですね。その学びを支えるために、学校にはさまざまな役割の大人たちが関わっています。簡単に整理してみましょう。

① 校長・教頭 … 学校の責任者
② 学年主任 … 学年の統括
③ 学年の先生方 … 日々最も関わる協働者
④ 初任者指導教員 … あなたを育てる役目の先生
⑤ 支援員 … 教室運営を支える存在
⑥ 事務職員 … 給与・旅費・会計を担う専門職
⑦ 校務員・用務員 … 学校環境を整えるプロ
⑧ 教材店などの業者 … 教育活動を支える外部パートナー

こうした人たちが、それぞれの役割を果たすことで、学校は回っています。
担任一人では、授業一つ、教材一つ、行事一つ回すことができないのです。

「先生」は偉くない

教員という仕事は、みんなから「先生」と呼ばれたり、子どもや保護者から丁寧な態度で接してもらえたりします。また、自分のクラスという「城」を持ち、その指導者としての責任を負います。
すると無意識のうちに、「自分が上」という錯覚が生まれることがあります。
その結果、

  • 事務職員や校務員に対して横柄な態度をとる
  • 業者に対して命令口調になる

といった態度をとる人が出てくることがあります。
これは絶対にあってはなりません。教員は「偉い」のではありません。学校教育という制度において、子どもたちに対して指導的な役割を負っている、という、ただそれだけに過ぎないからです。

それと同じように、事務職員は給与や会計を管理する役割を負い、校務員は安全な学校環境を維持する役割を負っています。そして業者は、教材を安定供給する役割を負っているのです。
そしてもちろん、教頭や校長は、意思決定権を持ち最終的な責任を負う、という組織運営上の上位関係にあるだけで、人間としては対等です。
関係者の誰一人が欠けても学校は回りません。全員が対等な立場として、それぞれの責務を全うしているという事実を忘れないようにしましょう。

このような人間関係の中で最も大切なのは、相互尊重です。
すべての人に対して敬意をもって、丁寧に接することを是非、心がけましょう。

たった1つ、この心がけがあるだけで、あなたの教員人生は間違いなく幸せなものになります。

若手・新人教員に最も大切なスキルとは?

ここまでで、まず皆さんと「相互尊重」という、最も大切な心構えについて共有しました。
次に、若手・新人教員にとって、いちばん大事なスキルは何? というお話をしたいと思います。
みなさん、それは何だと思いますか? 失敗しないことでしょうか? 上手に指導できることですか?
実は、最も大切なスキルは協調性です。
もっと具体的な言葉にすると、

  • 他の教職員としっかり「報告・連絡・相談」をする
  • 意思決定のルートを守る

という、この2点です。ここから具体的に、ケースワークでみていきましょう。

協調性ケーススタディ1: 報連相は必ずしっかり

ある日、保護者からクレームの電話が入りました。そんなとき、どうしたらいいでしょう?
ステップバイステップで見ていきましょう。

① まず相手の話をよく聞く

感情的にならず、事実を整理します。まず、相手の話を遮らず、適宜メモをとりつつ、すべて聞きましょう。「そうだったのですね」と受け止める姿勢が大切です。

② 自分で判断せず、すぐ学年主任と指導教員(主任)へ報告

クレーム処理で最も大切なこと。それは、自分で判断しないことです。ものごとの大小を決めるのは学年主任です。即座に報告して、問題を共有します。
また、事案に確実に対処するためには、混乱なく情報を共有する必要があります。そのため、校長や教頭などの上位への報告は、あなたから直接すべきではありません。まず学年主任に報告し、指示を待ってください。

④正直に、隠さず、正確に事実を共有しよう

事態の内容によっては、管理職などに事情説明の場が設けられることもあります。
その場合は、関係すると思われる人たち全員に同席してもらいます。
○学年主任・初任者指導教員・校長(または教頭)・児童指導主任
などです。もし支援員が関わっていたら、必ず同席してもらいましょう。

ここで最も大切なのは事実を正確に伝えること。少し言いにくいことでも、正直に話します。
これは、クレーム処理を「学校として」対応するためです。

⑤失敗やクレームは成長のチャンスでしかない

保護者など外部の人からのクレームにあなたが関わっている場合、あなたの意識としては
「個人対個人」と捉えるかも知れません。
しかしクレームを申し立てて来た相手の意識は常に「個人対学校」です。
具体的な解決策・再発防止・ハラスメント対策などあらゆる面で、学校という組織として対応します。
自分一人で解決しようとしても、二次クレームにつながったり、事態が悪化(エスカレーション)する可能性が必ずあります。
少し言いにくいことでも、包み隠さずすべて、関係者と共有します。

関係者全員で協議した結果の対応策は、事案の重大性で異なるでしょう。

・電話での説明で済む場合
・保護者に来校していただく場合
・家庭訪問になる場合

ここで意識したいのは、失敗することであなたは孤立したり疎外されたりしない、ということです。

正しく対処すれば、失敗やクレームはあなたの成長のチャンスにしかなりません。なぜなら、例外なくどんな人間も失敗するからです。失敗から学ぶことは、子どもたちに教えたい最も大切なことではありませんか? それは教員にとっても同じことです。

  • どこで早めに共有できたか
  • どんな言葉がけが有効だったか
  • 今後どう予防できるか

そんな教訓を得て、次は失敗しないようにと、全員で学んでいきましょう。

協調性ケーススタディ2: 意思決定のルートを守ろう

担任が教育活動で使えるお金としては、学級教材費があります。だいたい全国的に見て、年に2回1万円ずつの、計2万円を徴収することが多いのではないかと思います。
教育の質を向上させるため、算数セットや画材、ドリルなどを購入することが多いですが、この学級教材費の運用にあたっては、意思決定のルートがあり、さまざまな関係者との連携が必要となってくることを忘れないようにしましょう。

① 自分の判断で動かない

初任者がやりがちな失敗は、「自分のクラスのことだから」と単独で動くことです。
まず、学年全体でどのような教材費の使い方をするかの確認をするために、学年主任に相談します。
もしかしたら、あなたの知らない備品(プリント集など)があるかもしれません。
もしかしたら、過去の事例から推奨品を提案してくれるかも知れません。
大事なのは、学校は学年単位、学校単位でのグループとしての運営方針と過去の実績がある、ということです。

② 学級費は計画をもって

学級費は担任が管理し、1年間で計画的に使用します。ここで大切なのは、

  • 年間の見通しを持つこと
  • 残額を常に把握しておくこと

です。足りなくなるのは論外ですし、余り過ぎるのも計画性がないと見られます。
教材選定は、教育的意図と予算管理の両立です。

③ 事務職員に必ず相談しよう

教材を購入するときは、必ず事務職員に事前相談します。
「この処理でよろしいでしょうか?」
会計処理は最終的に事務職員が責任を持ちますから、必ず情報を共有し、事務処理の流れが正しいかどうかを確認しながら行います。

④ 業者とのやり取りには時間的余裕をみて

購入の事務的な承諾が得られたら、教材業者へ連絡をします。
ここで意識したいのは、ほしいものがすぐにそろうとは、必ずしも言えないことです。
業者の倉庫に在庫がないときは、ある程度の期間をかけてメーカーに発注することもあります。
そのため、
「恐れ入りますが、〇日までにお願いできますでしょうか」
と、期間的な余裕をもって発注するのがよいでしょう。
さらに、教材を選定する最初の段階で、まず業者に相談をして納品にかかる時間を確認し、実際の購入手続きに入るのが確実です。

⑤ お礼とともに最終確認を

教材が無事に届いたら、学年との共有・事務職員への報告を行います。

「ありがとうございました」と一言添えましょう。この積み重ねが信頼をつくります。
そしてもちろん、予算の残額確認も忘れずに。

報告・連絡・相談 のイラスト

イラスト/しゅんぶん


内田仁志(うちだ・ひとし)。
環太平洋大学准教授。栃木県の小中学校で三十余年、子どもたちと向き合いながら学級づくりや国語科の授業に取り組んできました。現場にいる頃から大学や地域の研究会に関わり、先生同士が学び合う場づくりを続けています。現在は、その経験を生かして環太平洋大学独自の教員の実践力養成講座「青年教師塾」を中心に、学生や若手の先生方と一緒に成長できる学びの場を全国へ広げる準備を進めています。専門は国語教育・初等教育。著書に『国語教師のための「反論の技術」入門』(明治図書)、ほか共著も多数。現場の悩みに寄り添いながら、明日の教室で使えるヒントをお届けします。

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