#43 親への感謝の会【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

浅見哲也

今回は最後の授業参観、保護者への感謝の会のお話です。準備を重ね、工夫を凝らした思いのこもった会。子供たちの手紙が泣かせます。

第43話  感謝の会2

泣きながら手紙を読む大山くん

「これから、保護者への感謝の会を始めます」

始めの言葉を担当した花崎さんの合図で感謝の会が始まった。

初めにクラス全員でリコーダーの二部合奏を行った。曲は「涙そうそう」「アメイジング・グレイス」「さよなら大好きな人」の3曲で、サビの部分をうまくつなげて1曲にまとめたものだ。

子どもたちは休み時間を使ってこの日のために練習してきた。相変わらず休み時間がなくなるのが3組の特徴になってしまった。ごめん、子どもたち…。

いよいよ手紙の発表だ。先陣を切るのは名前の順で1番の青田くん。最後まで先頭バッターとしてよくがんばった。

青田くんが読み始める。そして私はCDプレイヤーのスイッチを押す。青田くんが読み上げる手紙の後ろで、ユーミンの「卒業写真」の曲が静かに流れる。これだけで雰囲気が一気に高まる。

さらに、パソコンに取り込んでおいた幼い頃の青田くんの写真を、フェイド効果でスクリーンにすーっと浮かび上がらせる。そして、少し時間をおいて、今度は卒業アルバム用に撮っておいた現在の青田くんの写真を、幼い頃の写真の隣にまた映し出す。

青田くんのお母さんは、予期せぬ事態に早くもハンカチで涙を拭い始めた。保護者を泣かすという目標はあっけなく達成した。

その後も次々に曲が流れ、子どもたちは感謝の気持ちを伝えていった。

そして、大山くんの番を迎えた。

「お母さんは、いつも仕事で忙しいのに、朝起きてご飯を作ってくれてありがとう。

ぼくは、お母さんの言うことを聞かずに、ゲームとか好きなことばかりやって遊んでいるけど、これからは言うことを聞いてお手伝いをします。

学校にもちゃんと行って迷惑をかけないようにします。これからもよろしくお願いします」

とても短い手紙であったが、大山くんにとっても、お母さんにとっても、私にとっても、当たり前のことの大切さが詰まったすばらしい手紙であった。

おそらく手紙を読む子どもたちの中にも、手紙を読みながら感極まって泣き出す子もいるのではないかと思っていたが、それが意外な子だった。亮太だ。

「お母さん、ぼくはいつもお母さんの言うことを聞かずに迷惑をかけました。お母さんに何か言われてもあまり返事もしないでごめんなさい。でも本当はお母さんにすごく感謝しています。

この前、サッカーの試合に行く時も、せっかく作ってくれたお弁当を家に忘れて出てしまいました。だけど、お母さんは、仕事もあったのに遠い所まで届けてくれました。

ぼくは、お昼にお母さんが作ったおいしいお弁当が食べられたので、元気が出…、元気が出…、(涙)…次の試合でシュートを決めることができました。

もう、その時にはお母さんは仕事に戻って、いなかったけど、この得点は…、この得点は…(涙)…いつもおいしいお弁当を作ってくれて、応援してくれるお母さんへのプレゼントでした。これからもよろしくお願いします」

3組の子どもたちや自分の子どもでもない親までも涙を誘った。

今度は花崎さんの発表になった。花崎さんが教えてくれた曲は、プリンセス プリンセスの「パパ」だった。そして、その手紙を聞いているのは、まさに花崎さんのお父さんだった。

「パパ、今日は仕事を休んで参観日に来てくれてありがとう。

パパは、私が小さい頃から毎日仕事が忙しくて、休みの日にも仕事に出かけていたので、ママとは楽しい思い出がたくさんあるけど、パパとはあまりありません。そんなパパが嫌いな時もありました。

本当は、パパに相談したいこともたくさんありました。でも、学校でみんなと生活しながら、いつの間にか悩み事も解決することができました。

今日は、私の過ごしてきた小学校をどうしてもパパに観てもらいたくて、ママに頼んでおいたんだよ。

私はパパがよく言う言葉で、とっても好きな言葉が2つあります。1つは、『ちゃんと靴を揃えたか?』 と『ごはんつぶは残さず食べたか?』 です。

私は、どうしてパパがそんなことを私によく言うのか、パパは私に何を伝えようとしているのか、ちゃんとわかっています。

それは『すべてはつながっている』からなんですよね。(ふと花崎さんがこちらを向いたのがわかった)パパ。楽しい思い出がなくたって、私はそんなパパが大好きです。これからも私とママをよろしくお願いします」

「…やられました、花崎さん」

花崎さんには「さすが」の言葉しか思い当たらない。この教室の中にいる大人の男2人は、周囲の目を気にせず、おいおいと泣いた。

こうして全員の子どもたちが感謝の言葉を述べ、全員の保護者がその気持ちを受け止めた。

これで本日のプログラムはすべて終了…というはずであったが、ここでサプライズ。私が3組の子どもたちや保護者に宛てた手紙を読んだ。

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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