フリースクール【教育用語】

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教育分野で度々耳にするようになった新しい用語を、深く掘り下げて解説します。今回は「フリースクール」を取りあげます。

執筆/金沢大学准教授 ・鈴木瞬
監修/筑波大学教授・浜田博文

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「自分のことは自分で決める」という理念

フリースクールを直訳すれば「自由な学校」ですが、学校教育法第1条で「学校」が規定されている日本の制度では、フリースクールは正式な「学校」に含まれないというのが現状です。しかしいま、「多様な学びの場」としての存在感が高まりつつあります。

日本で用いられている「フリースクール」という言葉には、既存の学校になじみにくい子どもたちの居場所や学び場というニュアンスが強いと思います。その源流は、1924年にイギリスにおいてニイルがつくったサマーヒル・スクール(1921年にドイツにつくられた国際学校が前身)という学校にあり、それが諸外国に波及して発展したといわれています。

サマーヒル・スクールは、寄宿制の私立学校でした。そこでは、「自分のことは自分で決める自由」を子どもたちに徹底して認めました。そのため、

①授業への出席を強制されない、
②ほとんどの問題は全校集会で話し合って決める自治を徹底する、
③大人も愛称等で呼ぶ、
④教科学習よりも創作活動や表現活動を重視する、

の4点が際立った特徴とされました。

その後、一時下火になったものの、1960年代後半から70年代のアメリカで再び注目されるようになりました。子どもの思考や行動を束縛する硬直した「学校」という制度を批判的に問い直し、子ども達の自由を尊重した学校を実現しようとする動きです。

例えば、1967年にアメリカでモンゴメリーによって開校されたクロンララ・スクールは、日本でもよく知られているフリースクールの草分けの一つです。当時の先進諸国では、既存の学校制度の画一性が批判されており、こうした動きは諸外国にも影響を与えました。

日本も例外ではありません。1980年前後には、北海道新聞の記者だった大沼安史によって、このような欧米の実践が「フリースクール」として紹介されました。

「不登校問題タイプ」と「新しい教育タイプ」

以上の経緯を経て、1980年代以降に日本でもフリースクールと呼ばれる場所が増大してきました。それらは大きく2つのタイプに分けることができます。

一つは、不登校や中途退学の子どもに居場所を提供する「不登校問題タイプ」です。1975年頃より増加する登校拒否(不登校)を背景に、1980年代から徐々にさまざまな人たちの力によって広がりました。

2015年の「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」(文部科学省)では、「フリースクール(フリースペースを含む)」は、不登校の子どもを受け入れることを主な目的とする団体・施設を指すと定義されています。

もう一つは、既存の学校とは異なる教育理念と方法を掲げる「新しい教育タイプ」です。欧米の教育システムや理念、方法を日本で導入しようとする試みです。例えば、アメリカのデモクラティック・スクールの一形態であるサドベリー教育に感銘を受けて始まった東京サドベリースクールなどが知られています。これらの取り組みには従来の学校とは異なる多様な学びの場をつくろうという指向性がみられます。

以上のどちらの取り組みも、日本では正式な学校の外側に位置づけられてきました。特に前者の「不登校問題タイプ」は、不登校の子どもの受け皿という、どちらかというと消極的なイメージで受けとめられています。しかし、学習プログラムへの参加・不参加の自由をはじめ、日常的な活動の運営に対する子どもたちの積極的な参加を求めるなど、制度に縛られないからこそできる重要な特長を備えているとみることができます。

柔軟性や多様性をもつ新たな学校への期待

日本の学校制度は、教育の機会均等や水準の確保を重視して発展してきました。小・中学生では1992年から、高校生では2009年から、フリースクールに通うことも学校への「出席」として扱うことができるようになりましたが、もともと通っていた学校に籍をおいてフリースクールに通い、卒業する学校も在籍校だという措置がとられます。しかし、フリースクールの広がりのなかで、このような制度の枠組みを緩和しようとする動きが進められてきました。

例えば、教育特区制度を活用して、日本のフリースクールの草分け的存在である東京シューレ(1985年設立)は、子ども中心の教育を行う「東京シューレ葛飾中学校」を2007年に開校しています。さらに、2016年には「教育機会確保法」も成立し、子どもにとっての多様な学びの場を公式に認めるべきだという議論も活発になっています。

従来のフリースクールには、画一的な学校制度への対抗や、それに代わる「受け皿」という受け止め方が強かったといえます。しかし、教育特区や教育機会確保法等の制度の成立を経て、その関係は大きく変化しつつあります。従来の学校制度に縛られない多様な学びの場を保障する存在としての認識が広がってきています。

もちろん、制度の中に入れてしまうとフリースクール本来の存在意義がなくなるのではないかという懸念の声もあります。しかし、フリースクールの豊かな実践は、従来の「学校」のあり方を問い直し、柔軟性や多様性をもつ新たな学校を創りあげる上うえで、重要な意味をもつものだといえるでしょう。

▼参考文献
NPO法人東京シューレ『フリースクールとはなにか―子どもが創る・子どもと創る―』教育史料出版会、2002年
沖田寛子(「欧米と日本におけるフリースクールの比較研究――フリースクールの歴史と系譜をめぐって」(日本社会分析学会『社会分析』25号、1997年)
奥地圭子『明るい不登校―創造性は「学校」外で開く―』NHK出版、2019年
大沼安史『教育に強制はいらない――欧米のフリースクール取材の旅』一光社、1982年

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