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樺山敏郎先生の 全国花まる国語授業めぐり~子どもと登る「ラーニング・マウンテン」! ♯16 北海道富良野市立東小学校「さけが大きくなるまで」(教育出版2年)の授業

連載
樺山敏郎先生の 全国花まる国語授業めぐり~子どもと登る「ラーニング・マウンテン」!~
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カバT(Teacher&Toshiro)こと、元・文部科学省学力調査官の樺山敏郎先生が全国の国語の研究校の授業を参観し、レポートする連載第16回。今回のカバTは、北海道富良野市を訪れました。

カバTこと樺山敏郎先生


執筆/樺⼭敏郎  KABAYAMA Toshiro
(⼤妻⼥⼦⼤学家政学部児童学科教授、元・⽂部科学省国⽴教育政策研究所学⼒調査官)

【第16回】 北海道富良野市立東小学校
「さけが大きくなるまで」(教育出版2年)

授業者:片原顕光 教諭
訪問日:令和8(2026)年10月2日(金)

訪問の概要
富良野市立東小学校は、小生の科学研究費助成事業に関連する調査研究校として、昨年度まで2か年間かかわりをもたせていただきました。そのご縁が続き、今回、市主催の授業づくり研究会にお招きをいただきました。
富良野市では、小生が推奨する“ラーニング・マウンテン”を活用した単元デザインに取り組んでくださっています。今回訪問した同校では、国語科のみならずさまざまな教科等でもその実践を全校挙げて取り組み、諸学力調査において大きな成果を収めているとのことです。研究授業を公開した片原先生は、これまで積み重ねてこられた研究実践の成果の一端を披露してくださいました。
 
北海道富良野市
 

↓今回の授業者・片原顕光 教諭

授業者 片原顕光教諭
授業者 片原顕光教諭

Good Practice ~授業の花まるポイント(全11時間中の第2時)

単元のゴールは、「筆者になってもっと詳しく説明する」

今回の教材は、第2学年「さけが大きくなるまで」(教育出版)です。
単元のゴールは、“文章に書かれていないことについて調べたことを書き出し、説明をもっと詳しくする”、というものでした。文章理解に留まらない、書き足し(書き加え)という言語活動を楽しんでいる子どもたちの様子が見て取れました。

単元は全11時間。単元の導入では、教師作のさけ以外(かえる)の成長が書かれた説明文(写真1)に基づき、情報の書き足し(書き加え)とはどのようなものかを理解できるようにしていました。単元のゴールイメージを高めながら、そこへ向かっていくプロセスを検討することを通して、ラーニング・マウンテンを完成させました(参照 学習指導案)。

写真1 教師作のさけ以外(かえる)の成長が書かれた説明文。単元の導入で用いた。
写真1 かえるを題材にした自作の説明文で書き足し(書き加え)のモデル学習

片原先生は、これまで教師主導で学習のプランを立てたほうが手っ取り早いと考えていましたが、子どもの思いや願いを大切にする授業観への転換を図りました。
ラーニング・マウンテンを子どもと共につくっていくことを繰り返してきたところ、子どもたちが自分たちの思いや願いを率直に出し合うことができるようになってきたと、嬉々として報告していました。

低学年ですから、単元のゴールやプロセスを有効かつ適切に検討することは難しいのは確かです。それでも、自立・自律・自走を求めて、まさしく子どもの学びの文脈に寄り添うことの大切さを参加者全員で確認することができました。


確かな読みを前提に、足りない情報に着目し問いをもつ

本時は、5時間目。課題は、「文しょうにたりないせつめいをさがし、かんぜんばんを作るために『問い』」を立てよう」というものでした。“かんぜんばん”という言い回しは、さけが大きくなるまでの説明をより詳しくするという活動への意欲を掻き立てるものでした。

日頃、説明系の文章を読んだ後、不思議に思うことやもっと知りたいことは自然に湧き上がってくるものです。日常的にはそれに関連する他の本やインターネットを活用して調べることはよく行われます。では、こうした国語科授業ではどこに肝があるでしょう。それは、やはり共通のテキストである教科書教材を正しく読んでいくことが前提です。

片原先生は、このことを重視しようと、「さけが大きくなるまで」の全体の精査・解釈を深めるために、①時、②場所、③大きさや様子の3観点に即してマトリクス(チャート型)で整理する活動を丁寧に行っていました(写真2)。その上で、マトリクスに取り出した情報が薄かったり、不足していたり、時間や空間が飛んだりしている箇所に着目させていました。そのことにより、子どもたちは足りない情報の書き足し(書き加え)への意識が高まっていきました。

写真2 教材文を3観点を基にしてマトリクスで整理
写真2 教材文について、3観点を基にしてマトリクスで整理

書き足し(書き加え)の情報を問いに仕立てる

子どもたちは足りない情報をどのようなものかを探しながら、書き足し(書き加え)しようとする情報を検討し、問いとして表出していきました。片原先生は、友達同士での他者参照を促し(写真3)、出された問いを学級全体で共有しました(写真4)。

写真3 自分なりの問いがどこから生まれたのかを説明し合う
写真3 自分なりの問いがどこから生まれたのかを説明し合う
写真4 学級全体で問いを整理する
写真4 学級全体で問いを整理する

それに呼応するように、子どもたちの問いは広がりを見せていました(写真5)。

写真5 4つにまとまった、A児の問い
写真5 4つにまとまった、A児の問い

その後、片原先生は自分の問いを一つに絞るように指示し、子どもたちは悩んだ末に選んだ問いを一つ、ラーニング・マウンテンに転記していました。

書き足し(書き加え)の問いを解決するために、本やインターネットを活用することになりますが、そこへの手立ても十分に配慮されていました。インターネット上のお薦めのサイトを複数提示するなどし(写真6)、子どもたちに伴走する教師の姿勢にも感心しました。  

写真6 教師によるインターネットのサイト情報の提供
写真6 教師によるインターネットのサイト情報の提供

Advice~エールを込めてアドバイス

対象となる事物を“言葉を通して”理解する

今回、片原先生の提案は、文章に書かれている内容を正しく理解することに留まらず、書かれていない内容に注目し、それを教科書以外の媒体(本やインターネット等)にアクセスし、情報を収集し、説明を加筆していくというものでした。

現在の学習指導要領国語「読むこと」の“精査・解釈”が狙うところは、文章の叙述に即した正確な理解を求めると同時に、そこから派生する不可思議な行間や余白を埋める読む行為にあります。そこには、読む目的を明確にもつことが鍵になります。読む目的とは、例えば、書き手の説明の仕方や工夫を捉えたり、その上で論理の不備を批正したり、読み手の知的欲求を満たしたりするなどがあります。

国語科授業では、無目的に与えられたテキストを単に正しく読むことだけが求められているのではありません。片原先生は、子どもたちに知的欲求を高める読書行為を求めていったのです。
 
これらのことを踏まえて助言したことが、“対象となる事物を言葉を通して理解する”ということに意を用いることの重要性です。足りない情報を書き足し(書き加え)する際、それらを補充する情報をそのままコピペするだけでは十分とは言えません。

対象となる事物を言葉を通して理解していくためには、他の媒体に記載される内容(言葉)を十分に吟味し、どのように書き足し(書き加え)すれば、他者によりよく伝わるかを検討する必要があります。

その際、教科書の原文の抽象度が高いと判断するのではあれば、その原文に新たな情報を加えて書き換える(リライト)などの活動を重視することをお勧めしました。それを一文にしたり、複数の文にしたりしてその文の繋ぎ方を検討するのです。

また、小学2年段階における論理の指導は、“順序”という概念に注目することが必要です。片原先生が示した、「①時」の観点を第一義として、そのフレームに即して空白を補うだけでも十分であったかもしれません。
 
このような考え方(助言)は、事物や現象を言葉で認識し、言葉で伝達するという、国語の本質的な役割に自覚的になることにつながるものと考えます。理科や社会、総合的な学習の時間等の調べ学習とは違うレベルまで押し上げることが、国語科の役割です。

〜旅のこぼれ話〜
この連載では、全国各地の凄腕の先生方の国語科授業を紹介していますが、富良野市立東小学校はなんと2回目。連載第7回では同校(現在も勤務)の四ツ嶋千晴先生の実践を紹介しました。
今回の片原先生は、四ツ嶋先生とも協力して授業をつくり上げたとのことでした。授業研究会の後、一緒になって国語科授業の明日を語り合っていました。子どもと共に伸びようとする教師の姿に出合うと心が満たされます。

「ラーニング・マウンテン」とは…?
「Letʼs Climb the Mountains of Learning」(学びの⼭に登ろう)の略称で、国語科の三領域における単元の学び全体を“山登り”に例え、⼦どもたちが⽬指す頂上(ゴール)とルート(プロセス)をデザインし、⾒える化したものです。筆者のオリジナルです。
コンピテンシー・ベースの国語科授業を⽬指し、 ユニバーサル・デザインに配慮しながら、⼦どもと共に創る学びの実現につなげるねらいがあります。
「ラーニング・マウンテン」には、教師が教えたいことを⼦どもたちが学びたいことへ変えていく⼒があります。そして、マウンテンの頂上に⽴つ⼦どもたちの学びは、教師が教えたいことを越えていく可能性を秘めているのです。
単元の導⼊段階で学び全体の⾒通しをもち、学びの中途における振り返りを⼤切にすることで主体性を育成します。同時に、課題の解決と⽬標の達成という頂上(ゴール)を⽬指して、最後まで粘り強く、学びを調整していこうとする態度を培っていきます。

※この連載は、不定期に更新予定です。

イラスト/大橋明子

樺山敏郎教授の顔写真

かばやま・としろう。早稲田大学大学院教育学研究科卒、教育学修士。鹿児島県内公立小学校教諭、教頭、教育委員会指導主事を歴任後、2006年度から2014年度まで文部科学省国立教育政策研究所学力調査官(兼)教育課程調査官を務める。 2015年度より現大学へ。2022年度より現職。著書に『個別最適な学び・協働的な学びを実現する「学びの文脈」 学級・授業・学校づくりの実践プラン』(明治図書出版)、『読解✕記述 重層的な読みと合目的な書きの連動』(教育出版)がある。

↓樺山先生が編集委員を務める文部科学省教科調査官監修の連載も、好評公開中です。

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