夏休みの小学生。安全指導は、禁止事項の説明だけでは難しい! 正常性バイアスに囚われず、危険を「判断できる」子どもにするためには
学校では常に子どもたちの安全に向き合い、交通事故、水難事故、熱中症、SNSトラブルなど、安全指導に心がけていますが、それでも毎年事故は起こります。それは一体なぜでしょう? 実は、子どもたちただ禁止事項を並べたとしても、「他人事」だと思ってしまいます。危険の知識を我が物にして、それを行動に反映できる「判断力」こそ大事です。詳しく見ていきましょう。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
執筆/元山形県公立学校教頭・山田隆弘(ようだたかひろ)
目次
なぜ「知っている」のに事故は起きるのか
夏休みを前にすると、学校ではさまざまな安全指導が行われます。
- 交通安全
- 水難事故防止
- 熱中症対策
- 不審者対応
- SNSやオンラインゲームのトラブル防止
どれも大切な内容です。
担任は学級活動や終業式前の時間を使いながら、子どもたちに繰り返し伝えます。
しかし、事故に遭った子どもたちの多くは、危険を知らなかった子ではありません。
- 川が危険であることも知っている
- 飛び出しが危険であることも知っている
- 知らない人について行ってはいけないことも知っている
- SNSには危険があることも聞いている
それでも事故は起きます。なぜでしょうか。
それは、心理学で言われる「正常性バイアス」の問題です。
- 自分は大丈夫だろう
- 友だちもいるから大丈夫だろう
- 少しくらいなら大丈夫だろう
- まだ大丈夫に違いない
このように、予期せぬ事態を過小評価し、自分にとって都合が悪いことを無視してしまう心理のはたらきが人間にはあります。
安全指導の難しさはここにあります。知識を教えるだけでは不十分なのです。なぜ危険なのか? という理由をしっかり子どもたちと共有し、子どもたちが危険を自分事として捉え、「もし自分だったら」と考えられるようになることが必要です。
安全指導のゴールは「判断力」を育てること
わたしたちは「安全指導」というと、ついつい最短で正しい答えを教えようとします。
- 危ないから近づかない
- 知らない人にはついて行かない
- 体調が悪くなったら休む
これらはもちろん間違いではありませんが、危険な場面は意図せずに訪れ、しかも迷いを伴います。
- 友だちが誘っている
- みんながやっている
- 相手の言っていることがもっともらしい
などのシチュエーションは容易に想像できるでしょう。だから、ただ禁止事項を知っていても、どう対処したら良いかの判断が難しいのです。
そのため、
- 危険を察知する(なぜ危険なのかを知る)
- 立ち止まる
- 考える
- 安全な行動を選択する
- 必要なら助けを求める
という一連のプロセス=判断力に基づいて行動する力を身に付けることこそが、本当の意味での安全教育だと言えるのです。
