【相談募集中】支援を要する子がクラスに数人います
支援を要する子に向き合うべきタイミング、厳しく指導するタイミングが分からないと悩んでいる先生からの相談が、「みん教相談室」に届きました。ここでは、特別支援教育をベースとした学級経営を提唱されている、岡山県公立小学校教諭・南惠介先生の回答をシェアします。
Q.クラスに数人いる支援を要する子への対応について悩んでいます
支援を要する子がクラスに数人います。そのうち、4人程が衝動的に感情を表し、離席も見られます。
クラス崩壊を防ぐために、真面目に勉強している子が可哀想という思いもあり、指導はしますが、離席している子に選ぶ言葉を毎日悩みます。
自分にかまって欲しいと大声をわざと出したりもするので、指導ばかりではなくて、その子に向き合って話すときもありますが、毎時間向き合っていると授業が成り立ちません。向き合うべきタイミング、厳しく指導するタイミングを見極める力がまだ付けられていません。
何度も同じことを指導するのは、その子に向き合い続けるということに繋がるのでしょうか? 同時に離席した際、他の子が感化されて、同じように離席や大声や手遊びなど、悪影響を受けていくことになるのかと不安を感じます。児童本人も自覚していない発達支援のことを、低学年の子に伝え理解を得るのは難しく悩んでいます。授業中の教師の在り方についてアドバイスをください。
(もも先生・30代女性)
A.ほんの少し視点を変えて、できることをしてみましょう
個として
関わりすぎによる誤学習がしばしば見られます。「誤学習」とは、不適切な行動を正しいと誤って理解していることです。例えば、子どもが「ほしいものは泣けば買ってもらえる」と考えるようになるといった事例が当てはまります。
ただし、周りから見てその子にとって得だなということだけが誤学習につながるわけではありません。教師が良かれと思って関わることで、叱られることさえも「刺激」となり、その子にとっての「報酬」となります。だからその行動を繰り返していくのです。
もちろん関わることが必要な場面はありますが、過剰な関わりは往々にして、マイナスの結果を生み出します。
そこで、次のような短く「気づかせる」ことを主眼に置いた関わりが大切になってきます。
- ワンタッチ
- 短い声かけ
- 予告と称揚
- アイコンタクト
- にっこり笑う
もう一つ大切な対応に、「教育的無視」があります。不適切な行動には意図的に関わらないようにすることです。
ただ、本当に関わらないだけなら、それは放置となり、「これは許される行為だ」と誤学習し何度も繰り返すことにつながります。そうならないために、不適切な行動の反対にある代替行動の具体的な示唆も必要です。
同時に、他の子と同じようにできている「当たり前の状況」でこそ注目し、声をかけることも大切です。
集団として
個への関わりだけではなく、「集団」という観点からも考えてみます。
一番に考えたいのは、多くの子が楽しめて、「わかった」「できた」と喜び、教師がほめることができる活動を行うことです。明るく楽しい何かがあれば、そこに近づいていきたくなる低学年の子どもは多いでしょう。そして、1年生の1学期、2学期であれば、まだ保育園や幼稚園での学びの延長です。そう考えて、できるだけ活動的で、関わりあう学習形態を取り入れていくと、子どもたちには馴染みが良かったりします。
ここに書いたことは、それほど簡単ではないけれど、真面目にやっている子を大切にすることを考えていらっしゃるなら、まずはそこを一番に考えられた方が良いと思います。特定の子をきちんとさせるという志向より、できるだけ多くの子を楽しくさせる方が(先生にとっても)幸せにつながります。遠回りに見えて実は、少し時間はかかるけれどそちらの方が早道です。
また、多くの子が楽しそうに活動している子が多いほど、前述した「教育的無視」はしやすく、代替行動を示しやすいという面もあります。
本当に「衝動的」?
ここで再び個に焦点を当てて、質問の冒頭にこだわってみたいと思います。
しばしば「衝動的」という言葉が使われますが、本当にそれは衝動的なのでしょうか。「衝動」はきっかけにすぎず、既に導火線に火がついていたことが多いと感じます。
ではなぜ導火線に火がつくのか。支援が必要な子の多くが「衝動的」に見える行動を起こす背景には3つあると考えます。
- 認知の歪み
- ワーキングメモリの少なさ
- 過緊張(見通し、分かりづらさ、怖さ)や不安感
認知の歪みは「誤学習」と繋がる部分があり、「そうでない方法」を伝えたり、一緒に考えたりしていくことが効果的です。ソーシャルスキルエデュケーションやアンガーマネジメントの手法や視点が役に立つと思います。コロナ禍の真っ只中で幼児期を過ごしてきた子どもたちの中には、かなり自分本位なままの認知をしている子もいるので(本人たちのせいではない)、一から教えるくらいのつもりで取り組むのがよいでしょう。
ワーキングメモリの少ない子は、いくつかの情報であっという間に頭の中がいっぱいになることがあります。先生に当てはまるかどうか分かりませんが、次のような環境が、ワーキングメモリがそもそも少ない子たちのコップの中を「情報」でいっぱいにしてしまい、ちょっとしたことで溢れさせる要因に繋がっていきます。
- 教師の言葉が多い。
- 板書量が多い。
- 前面の掲示が多い。
「ごちゃごちゃしているなあ」と感じたら、それは改善する余地があります。授業をしている自分を撮影したり、黒板の写真を撮ったりしてチェックしてみましょう。
過緊張や不安感も、案外、衝動的な行動に影響を与えます。
キレやすい子を時々観察し、必要に応じてにっこりと笑うだけでも、子どもはリラックスし、衝動的な行動を回避できることがあります。
あれこれ書きましたが、少しでも参考になるところがあれば幸いです。
文面からも先生が子ども思いで頑張り屋さんの素敵な先生だということが伝わってきました。
キャリア的にも色々とバランスを考えないといけないこともあると思いますが、楽しく過ごしていけるよう、頑張りすぎず、深刻になりすぎず、ほんのちょっとだけ視点を変えてみると良いかもしれませんよ。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。