小2国語「スイミー」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、有名な物語文の「スイミー」です。この単元では、「お話を読んで、しょうかいする」という学習活動が設定されています。お話を読む学習で、子供たちが大好きな活動は「登場人物の気持ちを考えること」です。その手がかりとなり、語句を増やすような板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・松下祐子

 

教材名 「スイミー」(光村図書)

単元の計画(全9時間)

1・2 全文を読み、大体の内容をつかむ。
3~7 場面の様子から、スイミーの気持ちを考える。
8・9 物語を読んだ感想とそのわけを書き、紹介し合う。

板書の基本

〇教材「スイミー」は、楽しいお話です。それは、読んでいてわくわくするところやスイミーの気持ちになってどきどきするところが多いからです。

単元の目標には「お話を読んで、しょうかいしよう」という活動が設定されています。紹介するためには、様子や出来事、したことの理解が必要です。

板書では、場面ごとに、したことや様子を理解する手助けになるように、考える手がかりとなる語句を見付けさせることと、その語句から考えたことを大事にしました。

〇2年生の子供が、お話を読む学習で大好きな活動は、「登場人物の気持ちを考えること」です。それは、「気持ち」という言葉を身近に感じるためと、「うれしい」「たのしい」という言葉で安定するからです。しかし、そのことで満足させるだけでなく、「うれしい」「たのしい」などの気持ちを表す語句に似た語句(類語)があることに気付かせることも大事です。

板書では、教材に出てくる親しみがある語句を見付けて、その語句から気持ちや様子を想像し、よく似た言葉を基に、語句によって想像していた気持ちが少し違うということを考える手がかりとなるように工夫しました。

本単元の6時間目の授業のめあてを「本文の中のことばから、スイミーの気持ちを考える。」とした場合、「考える」という活動と、考えることによって、自分の言葉の数が増えることを理解できるようにしました。

板書のコツ(2/9時間目)

小2国語「スイミー」 板書
2/9時間目の板書

板書のコツ①

めあてである「スイミーがくらしていたようすを読む。」と板書し、最初の場面を音読させました。海の中の様子を理解するには、それほど時間を必要としませんでした。最初の場面では、スイミーはどんな魚であるかということについては、どの子も理解ができました。

「スイミーについて」と板書し、「一ぴきだけまっくろ」「からす貝よりもまっくろ」「およぐのは、だれよりもはやい。」と板書しました。この言葉を共有することで、大体理解したという雰囲気でしたから、特に大事にしてほしい部分を黄色のチョークで○をしました。文章を読む上で特に何に気を付けるとよいのかを理解させることを意図した板書です。

板書のコツ②

スイミーのすんでいた海の中の様子を「くらしていたようす」と板書しました。そして、答えになる文章に線を引くことを指示しました。

学習内容は難しいはずですが、「たのしくくらしていた。」という文に線を引いていた子がほとんどでした。おそらく「くらす」という語句が手がかりになったのだと判断しました。

本文では「きょうだいたちとたのしくくらしていた。」となっています。この文で見過ごしてしまいそうなのが、「たのしく」という言葉です。概念としては、だれもが知っている言葉です。知っている言葉を手がかりにして、知らない言葉と出合うのが言葉の概念を広げる上で効果があると考えました。

黒板に、「たのしくとは…。」と示し、スイミーのきょうだいたちと楽しく暮していたであろう様子を発表させ、板書しました。

子供たちは、「なかよし」「おにごっこ」「かくれんぼ」など、自分のもっている語句を次々と発表しました。これらの語句を基に「たのしくくらしていた。」という文から、海の中の様子を想像し、単元の目標である「しょうかいする」ことの内容をもつことができた板書になりました。

板書のコツ(6/9時間目)

小2国語「スイミー」 板書
6/9時間目の板書

板書のコツ①

「めあて」と板書し、「本文の中の言葉から、スイミーの気持ちを考える。」ということを口頭で伝えました。そのとき、「スイミーのお話を書いているもの」が「本文」であることを説明しました。また、「気持ち」とは、「こわかった」「さびしかった」「かなしかった」という言葉の仲間であることを理解させました。

「めあて」の「スイミーの気持ち」の見付け方が理解できない子には、「スイミーは」から始まる言葉に線を引くことを指導し、ほとんどの子が「本文のことば」と「気持ち表す」ということが理解できたようでした。

「スイミーがかんがえたこと」は、「みんなでいっしょにおよいで、大きな魚のふりをすること。」と板書し、いいことを考えたスイミーの気持ちを考える方向に授業を進めました。

板書のコツ②

スイミーの気持ちを直接的に表現していないが、「それから、とつぜん、スイミーはさけんだ。」という文には、スイミーの気持ちが表れていることを共通理解させるために、授業を次のように進めました。

この文を、普通に書けば「スイミーは言った。」になることを説明しました。続いて似た言葉を使って、次のような文を口頭で指導しました。

〇それから、とつぜん、スイミーは 大きな声で 言った。
〇それから、とつぜん、スイミーは 小さな声で 言った。
〇それから、とつぜん、スイミーは 笑い声で 言った。
〇それから、とつぜん、スイミーは わめいた。
〇それから、とつぜん、スイミーは ささやいた。
〇それから、とつぜん、スイミーは つぶやいた。

このような文を口頭で伝えながら、「そうだ。みんないっしょにおよぐんだ。海でいちばん大きな魚のふりをして。」という文の読み方の見本を示すことを意図して、音読しました。

音読しながら、「わめいた。」「ささやいた。」「つぶやいた。」を板書し、「言う」にもいろいろな言葉があることを理解させました。

スイミーの気持ちが、「さけんだ」という表現であることを、「言う」という語句を広げることによって、多くの語句を知ることができるように授業と板書を工夫しました。

 

構成/浅原孝子

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