「こども家庭庁」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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2022年2月25日に設置のための法案が閣議設定され、話題を集めている「こども家庭庁」。どのような目的で創設され、今後どのような役割を担っていくのでしょうか。

執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

「こども家庭庁」とは?

こども家庭庁は、すべての子どもが、自立した個人として、平等に、健やかで、幸せな状態(Well-being)で成長することができる社会の実現をめざし、子どもや子育て当事者の視点に立った政策立案や、子どもや家庭の抱えるさまざまな課題に対する包括的支援を行うことを目的に、2023年4月1日に設置される国の行政機関です。ここでの「こども」とは、年齢にかかわらず、「大人として円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの心身の発達の過程にあるもの」と定められています。

こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント~こどもまんなか社会を目指すこども家庭庁の創設~」では、創設の目的として、常に子どもの最善の利益を考え、子どもに関する取り組みや政策を社会の真ん中に据える「こどもまんなか社会」の実現を掲げ、次の基本理念を定めています。

こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策立案
すべての子どもの健やかな成長、Well-beingの向上
誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援
こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援
待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)

「こども家庭庁」創設の目的と役割

こども家庭庁の目的は、これまで文部科学省、厚生労働省、内閣府などの各府省に分散していた子どもに対する行政業務やこども政策に関する総合調整権限を集約し、司令塔としての役割をもたせることにあります。その結果、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁などを越えた切れ目ない包括的な支援を実現させることをめざしています。

例えば、内閣府の子ども・子育て本部や厚生労働省の子ども家庭局は移管され、廃止となります。一方、幼児教育や義務教育の振興や、学校におけるいじめ防止や不登校対策はこれまで通り文部科学省が、医療の普及および向上や労働者の働く環境の整備などは厚生労働省が担い、こども家庭庁と密に連携を取りながら進めていくことになります。

内閣府の外局として設置し、3部門で構成

強い司令塔としての機能をもたせるため、こども家庭庁は、内閣総理大臣直属の外局として設置され、各省大臣への勧告権などをもつ内閣府特命担当大臣が置かれます。

内部部局としては、「企画立案・総合調整部門」「成育部門」「支援部門」の3部門で構成され、それぞれが次の事務を担います。

企画立案・総合調整部門
・こどもや子育て当事者の視点に立った政策の企画立案・総合調整・情報発信や広報
・エビデンスに基づく政策立案、実践、評価、改善

成育部門
・妊娠・出産の支援、母子保健、成育医療など
・就学前のこどもの育ちの保障
・こどもの居場所づくり
・こどもの安全(子どもに関わる仕事に就く人に性犯罪歴がないかを確認する日本版DBSチャイルド・デス・レビューの検討)

日本版DBS……DBSとは、イギリスの組織である「Disclosure and Barring Service」の略。過去に性犯罪歴がないことを証明する「無犯罪証明書」を発行している。イギリスでは、子どもに関わる職業につく際、この証明書の提出が必須となっている。日本でも、同様の無犯罪証明書を保育教育に関わる者に対し、提出を求めるしくみが検討されている。

チャイルド・デス・レビュー……和名は「予防のための子どもの死亡検証」。医療機関や警察、消防などの複数の関係機関や専門家が、子どもの死亡に対する効果的な予防策を検討することを目的に、死亡した子どもの既往歴や家族背景、死亡の直接の原因等を幅広く検証すること。

支援部門
・困難な状況にある子ども(児童虐待、ヤングケアラー、高校中退、非行など)や家庭に対する包括的支援
・いじめ防止や不登校対策(文部科学省と連携)
・貧困対策
・ひとり親家庭の支援
・障害児支援

また、こども家庭庁の創設に伴い、2022年4月4日には、子どもにまつわるすべての政策の基盤となる「子ども基本法」案が、自民・公明の両党より衆議院に提出されています。

▼参考資料
内閣官房(ウェブサイト)「こども政策の推進(こども家庭庁の設置等)」
厚生労働省(ウェブサイト)「チャイルド・デス・レビュー(Child Death Review)に関する資料」
厚生労働省(ウェブサイト)「イギリスのDBS制度について」
公益財団法人日本財団(ウェブサイト)「子ども基本法WEBサイト」

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