低学年のやる気を引き出す7つのしかけ〈学級づくり編〉

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北海道公立小学校教諭

山田洋一

低学年の子供たちが主体的に考え、自ら学んだり行動したりできるようになるためには、担任はどんなしかけをすればよいのでしょうか。子供たちのやる気を引き出す学級づくりのポイントを紹介します。

執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一

低学年のやる気を引き出す7つのしかけ

①やり方を分かる方法で示そう

6月は、学級経営の最初の難関と考えられています。地域によっては運動会などの行事があったり、ゴールデンウィーク明けで身に付けたことが元に戻ってしまったり、生活に慣れてきて中だるみしてしまったり、さまざまな原因が指摘されています。

どの指摘もとても大切な視点を含んでいます。また、そこから生まれる担任の「だからきっちりと厳しく指導しなくてはならない」という感覚もよく理解できます。

しかし、ここでは子供たちのもっている不安という視点から、子供たちを捉えてみましょう。すると、次のような子供たちの思いが見えてきます。

「運動会のことを、急にたくさん覚えなくてはならない」
「覚えられなかったらどうしよう」
「きちんとできなかったらどうしよう」
「先生に叱られたらどうしよう」

そのうえ、教えてもらったことをゴールデンウィークの間に忘れてしまい、「やり方が分からない!」「先生に聞くと叱られそうだから、先生にも質問できない……」という感じにさえなっているかもしれません。こう考えてみると、子供たちには大きなストレスがかかり、やる気を起こすどころではないことが分かるでしょう。

そこで、やり方を忘れてしまっても、「大丈夫だ。なんとかなる」と子供たちが感じられるような工夫(足場的支援)を、教室にしておきましょう。

例えば、朝、教室に入ってきたら、どんな手順で何をすればよいのかを掲示物などで示しておくとよいでしょう。これによって子供たちは、不安から適応できなくなるということが少なくなります。

朝行うことをまとめた掲示物のイラスト。

②成功を見えるようにしよう

子供にやる気がわいてくるときとは、そもそもどんなときでしょう。

おそらく、「成功に対する楽観的な見通し」がもてるときではないでしょうか。もしも、今まで取り組んできたことの結果の多くが、思うようなものでなければ、子供たちは自信を失った状態になって、新しいことにもチャレンジしようとは思わないでしょう。

ですから、小さくてもよいから成功体験を積み重ねることが、子供たちには大切です。

ところが、この成功体験を積み重ねることは、そんなに簡単ではありません。せっかく成功体験を積み重ねたとしても、それがどれくらいのものであるのかが記憶されにくい子や、失敗のほうが記憶に残りやすいという子もいます。

そこで、「成功を見えるようにしておく」ということが、大切です。

例えば、「1日1回、発表した」「友達に優しい言葉をかけた」などができたときには、カードにシールなどをはり、自分が、何を、どれくらいの回数、続けて成功したのかを可視化してあげましょう。

③貢献を引き出そう

低学年の子供たちは、自分のよさや自分がしたよいことを担任にたくさんアピールしてきます。

「先生、こんなことができるようになったよ」
「先生、こんな絵を描いたよ」
「先生、給食が落ちていたから、片付けたよ」

一般に、こうした場合のフィードバックは「えらいねえ」「すごいねえ」などのほめ言葉ではなく、「私」を主語にした「わたくしメッセージ」にするとよいと言われます。

つまり、「えらいねえ」ではなく、「そういうことを〇〇さんがしてくれるから、とっても嬉しいよ」と返すのがよいとされています。

しかし、一番大切なことは、子供たちに「よい行動をすると、先生が喜んでくれる」ということを感じさせてあげることです。ですから、言い方を気にしすぎず、どんどんポジティブなフィードバックをしましょう。

また、一方で、「先生を喜ばせたいから、よいことをしたい」という考え方を、二年生であれば、少し高度なものへと移行させたいものです。

それは、「クラスのみんなに貢献をしたい」という気持ちをもてるように促すことです。そのためには、クラスのみんなのためになる行動を見付け、みんなの前で取り上げることが大切です。

例えば、ゴミを拾ってくれた場合、「〇〇くん、ゴミを拾ってくれてありがとう。みんながきれいな教室で過ごせるよ。みんなも嬉しいよね?」のように、他の子供たちの感じ方も引き出し、さらに掲示物にもしてあげるようにします。

こうすることによって、「先生に喜んでもらいたい」という気持ちが、「クラスのみんなに喜んでもらうために、よいことがしたい」という気持ちへと移行します。

ゴミを拾っている子供にその場でほめて、後で掲示物にしているイラスト。

④評価規準を先に示そう

子供たちには、はじめから「評価規準」を 知らせるようにしましょう。

例えば、机の中を整理整頓するとき、片付 けた後に「◎、〇、△」と、その規準を言わ れるのと、片付ける前に「◎、〇、△」の規準を伝えられるのとでは、どちらがやる気が出るでしょう。

前者の場合、とりあえずしゃにむに片付けたあとから、「残念だなあ、教科書とノートは横長に入れるんじゃなくて、縦に入れるんだよ」と言われることになります。これでは、 片付けているとき、やる気が出ないばかりではなく、「はじめから言ってよ」と、怒りさえ湧いてきます。

最初から、「◎、〇、△」の規準を示してくれたら、片付けるときに、できるだけ「◎」に近付けようと、子供たちはがんばるのではないでしょうか。

このとき、子供たちは自分の活動を規準に照らしながらモニターし、活動していることになります。こうした姿を引き出すために、評価規準を先に示す必要があるのです。

「並ぶときの」評価規準を示した掲示物のイラスト。

⑤指導言を減らしていこう

基本的に、人は指示されることは嫌いで、指示されずに行動することを好むものです。一方で、やり方を教えられずに正しい行動をとることはできません。

では、「言われてする」状態から、「言われなくても、気付いてする」状態になるよう、 子供たちを促すには、どうすればよいのでしょうか。

それは、ずばり指導言を漸次減らしていくというのがよい方法です。

棚から、ランドセルが落ちそうな子が数名います。

まずは、「棚から、ランドセルが落ちそうですね。このままだと、誰かがぶつかったり、つまずいて転んだりするかもしれませんね。危ないですねえ。直しましょう」と言います。もちろん、直せた子供には、「ありがとう」と声をかけます。

次は、「棚から、ランドセルが落ちそうですねえ」とだけ伝えるようにします。そうして子供たちの中に、直せる子がいたら、「ありがとう。これで、誰かが怪我をする心配がなくなったね」と声をかけます。 このとき、自分のランドセルだけではなく、人の分まで直せる子がいたら、そのことにも心から感謝を伝えます。また、全体にも「〇〇さんが、自分のではないランドセルまで直してくれたよ。みんなのことを考えてやってくれるなんて、優しいねえ」と伝えます。

最後は、乱れた棚のほうだけを見て、「あれ?」とだけ言います。その後の対応は、まったく同じです。

さらに、この後が肝心です。教師が注意を促さないときに、ランドセルを片付けている子供がいたら、ぜひ全体の場で取り上げてあげましょう。

このように、指導言を減らすことで、徐々に子供たちのやる気を高めていきます。

⑥外的動機によってやる気を引き出そう

子供たちとの間で、学校の中での期待される行動について、話し合っておきましょう。

例えば、教室では「発表を1日3回以上する」「給食のときは、話さないで食べる」「友達に優しい言葉をかける」「廊下では右側を歩くようにする」「先生に会ったらあいさつをするようにする」などです。

もちろん、話し合っただけでそれができるわけではありません。大切なのはこうした期待される行動を、子供がとったときのフィードバックです。

例えば、キラキラシールや、その子の好みのイラストが書いてある読書用しおりを渡すなどが効果的です。こうした「ごほうび」をあげることには、賛否両論あるようです。

しかし、大切なことは、望ましい行動が子供に身に付くことです。また、こうした「ごほうび」などの外的な動機付けは、やがて子供たちにとっては、どうでもよいものとなり、望ましい行動をとることそのものが、その子の喜びとなっていきます。こうしたことは、心理学の中ですでに証明されていることです。

⑦1日の見通しをもてるようにしよう

今日1日、どのような順で何が行われるのか。その大まかな内容は、なんなのか。こうしたことを、子供たちが教室に入ってきたら、分かるように示しておくとよいでしょう。

やる気を出そうにも、今日1日がどのような1日であるのかが分からなければ、出しようがありません。黒板や電子黒板などに、イラストを加えながら、次のようなアナウンスを出しておきましょう。

黒板に書かれた1日の見通してを見て、やる気にあふれる子供たちのイラスト。

参考文献/トレイシー・E・ホール、アン・マイヤー、デイビッド・H・ローズ編著、バーンズ亀山静子訳『UDL 学びのユニバーサルデザイン』(東洋館出版)

イラスト/浅羽ピピ

『教育技術 小一小二』2021年6/7月号より

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