指導案は「提出書類」じゃない! 指導案を深めれば、子どもの「育ち」が見えてくる―学級を育てる指導案づくりのススメ|学級経営のための授業づくり②【若手先生の航海図】

「明日までに指導案を出さないと…」と、パソコンの前でため息をついていませんか? 指導案というと、「管理職や指導主事に見せるための書類」や「授業を予定どおりに進めるための台本」というイメージをもっている人も多いかもしれません。しかし、そのように捉えていると、指導案を書く作業はただの苦痛な時間になってしまいます。
実は、ちょっと見方を変える(マインドシフトする)だけで、指導案は「あなたが目の前の子どもを理解し、授業を楽しむための最強の味方」になります。
指導案づくりは、「旅行の計画」や「友達へのプレゼント選び」に似ています。「このルートなら楽しめるかな?」「ここで疲れるかもしれないから、休憩(ヒント)を用意しておこう」と、相手の顔を思い浮かべながら準備をする時間なのです。 本稿では、指導案づくりを「授業前・計画中・授業中・授業後」の4つのステップに分け、授業づくりがもっと面白くなる「考え方のコツ」を紹介します。
執筆/環太平洋大学准教授・内田仁志
協力/教師実践研究塾(実践塾)
目次
STEP1:授業前(誰に・何を届けるか)
<児童観・教材の価値>「教科書を終わらせる」から「この子たちにどんな力を付けるか」へ
指導案づくりは、パソコンを開くことではなく、目の前の子どもたちの顔を思い浮かべることから始まります。
「さて、うちのクラスの子たちは今、どんな感じだろう?」
「この授業で、子どもたちにどんな力をプレゼントできるかな?」
ここで、「うちのクラスは明るい」「元気な子どもが多い」といった、漠然とした印象では授業の手立ては思いつきません。授業中の発言やノートの記述、前の単元でどこにつまずいたかといった「学習の事実」から、子どもたちの今の姿(児童観)を具体的に捉えます。
そして、「この教材を使って、子どもたちにどんな力を付けたいか(考える力なのか、伝え合う力なのか)」を考えます。
教材は教える目的ではなく、子どもを育てるための手段です。
STEP2:計画中(どうやって届けるか)
<展開と支援の予想>「どんな発問をしようか」から「何を考えさせたいか」へ
育てたい力が決まったら、それを具体的な授業の形にしていきます。ここで大切になるのが、目標・活動・評価を一本の線でつなぐことです。
「この教材で本当に伝えたいことはなんだろう?」
「絶対ここで『えー?』って立ち止まる子がいるよな。そのときどう助けよう?」
例えば、一年生国語の「くじらぐも」。この教材の価値が、「くじらぐもの言葉には子どもたちに勇気を与える力があるのでは」というところにあるとすれば、それに気づかせることが授業の目的です。それが決まれば「どう読めばその気持ちが伝わるだろう」と活動に具体的な意味が生まれます。
そして評価とは、どのような発言があればよいのか。ノートにどのような記述が見られればよいのか。友達との対話で、どのような考えの変化が現れればよいのか、と、目標にどれだけ到達したかを見ていくことです。
子どもを「できた子・できなかった子」と分けるのではなく、「この子は、どこで立ち止まりそうか」「何があれば(写真か、友達との対話か)学び始められるか」とつまずきを予想し、そのための策をあらかじめ想定しておきます。
指導案とは、予定通りに進める台本ではなく、子どもの姿を予想しながら必要な支援(お助けアイテム)を準備しておくためのものなのです。
STEP3:授業中(予定を捨てる勇気)
<見取りと評価>「予定どおり進める」から「目の前の子どもの姿を見る」へ
いよいよ授業本番です。しかし、どれだけ完璧な指導案を作っても、子どもが予想通りに動くとは限りません。
「おっ、予想外の面白い反応! じゃあ、このルート(地図)をどう進もうか?」
「『今日の目標に近づいた!』という証拠は、子どものどこを見ればわかるだろう?」
指導案はあくまで「登山のルートマップ」です。目的地(目標)はブレてはいけませんが、途中で子どもが面白い花(素敵なつぶやきや疑問)を見つけたら、予定を変更して立ち止まってもいいのです。
また、「今日はよくできた」という教師の印象だけで授業を終わらせないために、あらかじめ指導案で「この発言が出たらOK」「ノートにこう書けていたらOK」と、具体的な子どもの姿を想定しておきましょう。そうすることで、30人以上いる教室でも、子どもが発信する小さなサインを確実に見取ることができるようになります。
STEP4:授業後(答え合わせと次への種)
<見取りと自己成長>「提出して終わり」から「書き込んで自分の成長記録にする」へ
指導案は、授業が始まった瞬間に役目を終えるものではありません。授業後に読み返すことで、もう一つの大切な役割が始まります。
