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4年体育(投の運動)児童の投力を高める「ロングスロー&ダッシュゲーム」

2020/1/7

執  筆/山口大学教育学部附属山口小学校教諭・紀村修一
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・高田彬成、山口県岩国市立東小学校教頭・前川 孝

授業づくりのポイント

2020年度からの学習指導要領では、走・跳の運動のなかで「児童の実態に応じて投の運動を加えて指導することができる」ことが明記されました。ここでいう「投の運動」は、「遠くに力一杯投げること」に指導のねらいが置かれています。

しかし、投げる経験が少ない子供の多くは、正しい投げ方を知りません。そこで、投の粗形態の確認が重要です。

具体的には、
①横向きになる、
②両腕を左右に開いて肘を上げる、
③体重を後ろ足に移動した後、前方の足を1 歩前に踏み出しながら、
④スナップを利かせて腕を振り下ろす、

といった一連の動きです。慣れるまでは、「1、2、3」と声を出して、投げ方の確認をすると効果的です。

体育科における「投げる」という動きは、体つくり運動では用具を操作する動きとしての「巧みに投げる」であり、ゲームでは味方が捕りやすいようなパスや相手がいない場所をねらうシュートとしての「投げる」という動きになります。

投げる目的が異なることを子供自身が理解して、「遠くに力一杯投げることを楽しむ」学習に取り組んだり、休み時間に友達とボール遊びをしたりすることが、投力向上を図るうえで重要なのです。

単元計画(例)

※1・2 時間目は、主に個人を主体とした運動を楽しみ、3・4 時間目は、集団をつくってゲーム化して楽しむことを想定しています。

単元計画
クリックすると別ウィンドウで開きます

投の運動に意欲的でない子供には

・単元のはじめに、いろいろな種類のボールを選んだり、いろいろな投げ方をしたりすることで、投げることへの抵抗感を弱めていくようにしましょう。

・「遠くに投げる」ことへの見通しをもつことができるように、新体力テストのソフトボール投げの記録から、少し努力すれば達成できる範囲での目標記録を設定できるようにしましょう。

・遠くに投げる投げ方がわかりにくい子供には、よい動きの友達を観察できるようにするなど、動き方のモデルを示すようにしましょう。

運動を楽しもう~投の運動を楽しもう~

思い切り投げる機会が少ない子供にとっては、投げる経験を重ねることが大切です。とはいえ、投の運動は、投能力の向上のみをめざしてトレーニング的に経験を積ませても、遠くに投げることを楽しんだり技能が飛躍的に向上したりすることは期待しにくく、また、単調な運動は長続きしづらいです。

そこで、自ら進んで運動に取り組み、友達と十分に関わり合いながら、自分なりに遠くに投げることを楽しみ、ボール投げそのものを好きになるような学習内容を工夫していく必要があります。

種まきゲームを楽しもう

楽しみながら投げることができるゲームです。運動場で行うときは高跳び用スタンドを利用します。体育館で行うときはバレーボールやバドミントンのネットを利用するとよいでしょう。

ゲームを開始する前に、安全に行うためのルール(例えば、顔に向かって投げない、蹴らないなど)を話し合うと、けがなく、みんなが楽しむことができ、ルールを守ることの大切さを学ぶこともできます。

種まきゲーム

いろいろな種類のボールで、いろいろな投げ方を試してみよう

ここでは、「いろいろな投げ方を楽しむ」ことが目標ではありません。いろいろな投げ方(投げる方向や投げる手、投げる姿勢など)を試すなかで、体を上手に使って投げることの重要性に気付くことが大切です。

真上に

真上に

両手で

両手で

利き手ではない手で

利き手ではない手で

座って

座って

気を付けの姿勢で

気を付けの姿勢で

いろいろな種類のボールを

いろいろな種類のボールを

いろいろなボールを上手に投げるには、どうしたらいいかな?

「スロー&バウンドキャッチ」をしてみよう

スロー&バウンドキャッチ

相手が捕りやすいように投げるパスではありません。遠くに力一杯投げたボールを捕るのです。けがの防止のため、バウンドキャッチで行います。ただし、バウンドは1 回までです。捕る人は、投げる人の投力から構える位置を決めます。投げる人は、その位置を見て指示を出します。このようにして、自然と対話が生まれてくることを期待しているのです。

ボールを投げることが苦手な子供には、自分ができる投げ方でよいことを伝えたり、遠くに投げることができる子供とペアをつくり、投げるこつを教え合うことができるようにしたりします。

できるだけ遠くに投げるには、どうすればいいかな?

もっと運動を楽しもう~投の運動をゲーム化して楽しもう~

投の運動を中核としたゲーム化を工夫し、チームで協力して取り組むことで個々の楽しみ方を広げていきます。

個人的な運動を集団化する際には、チーム編成やルールの工夫などの欠かせない要素を整理しておく必要があります。

本単元のねらいとして設定している「遠くに力一杯投げる」という動きの要素に、仲間と協力し合って勝敗を競う楽しみ方を取り入れることで、さらに意欲的に活動できるようにしていきましょう。

「ロングスロー&ダッシュゲーム」をしよう

基本のルール

・1 チーム3 人で男女混合の等質グループ(単元計画2 時間目「ドッジボール投げ」の記録を参考にチーム編成しましょう)

・S(スロー)ラインの位置は線を引き固定、P(ポイント)ラインの位置はボールを投げる人によって変動する。

・攻撃は、1 人2 分×3 人の計6 分間。投げる人に応じてP ライン(ドッジボール投げの記録-2m)を移させる。

・守備にブロックされずにP ラインを越えた回数が、投げた人の得点。投げ方はオーバースローのみ。

・ ボールは、ドッジボール1 球、ハンドボール1 球、玉入れ用の玉1 球の計3 球を準備し、かごに入れる。

・ Pラインを越えないボールはすべてファールとなり、得点にならない。時間内であれば何回投げてもよい。

・投げる人以外の攻撃側の子供はP ラインより後ろで待機し、得点したボールやファールのボールを取ってS ライン上のかごに、走って入れに行く。

・守備は、全員S ラインとP ラインの間に入り、投げられたボールがP ラインを越えないようにブロックする。

・3 分ごとに教師は合図し、全チーム投げる人の交代が済んだ後、開始の合図を出す。

・両チームの全員が投げ終え、得点が多いチームの勝利。

※ このルールはあくまでも例なので、学級や子供の実態に応じて改良してください。

投の運動のゲーム化

このゲームの特徴は、仲間と共に楽しみながら投能力を高めることにあります。守備のチームにブロックをされないように、投げる方向は自然と斜め45 度になります。

また、P ラインの幅が4m 程度と限定されているので、目標に向かって狙って投げる必要性が生じ、コントロールを身に付けることもできます。

3 分間という限られた時間内にたくさん得点を取りたい攻撃側の子供は、投げられたボールを取り、急いでかごに向かって走り出します。そのため、運動量を確保することができます。

さらに、チーム全員で攻めたり守ったりするので、達成感や連帯感を味わうことも期待できます。

自分のチームの記録の変化を分析することで、投げることが好きになったり、課題を見付け、その解決策をチームで探ったりすることも可能です。

わくわく学習アイディア

運動の日常化を図ろう

新聞紙を丸めて投げる、紙鉄砲を鳴らすなど、投の運動に関連する遊びをいつでもできる環境を整えることが、運動の日常化の第一歩です。

新体力テストのソフトボール投げを活用しよう

● 多くの学校が一学期に実施する新体力テストを積極的に活用したいものです。しかし、1 回目の実施から時間が経過しているようであれば、より正確な記録をとってみるのもよいでしょう。

● グラウンドの基準となる位置にポイントを打っておき、記録を測りたいときに簡易に実施できるようにしておきましょう。

いつでも、だれでも、簡易に実施できるような場や状況をつくっておきましょう。ただし、ソフトボール投げは危険を伴うので、必ず周囲の安全を確認し、教師とともに行うようにしましょう。

ボールの種類

・ソフトボール1号球(体力テストで使用)…少し重い

・テニスボール…よく弾む。少し空気を抜いておくとよい

・ソフトテニスボール…総ゴムなので投げやすいかも

・ハンドベースボール… よく弾む。少し空気を抜いておくとよい

・軟式野球ボール(小学生はC 球を使用)…やや硬め

・ドッジボール… やや投げにくいが、子供にとって最も身近なボールの1 つ

・ロケットボール… 斜め45 度に投げると音が鳴るボール

・てるてるボール… ソフトテニスボールを布で包んだボール

ロケットボール、てるてるボール

「 ロケットボール」や「てるてるボール」といった用具の活用も有効です。投げたボールの軌道を確認することで、どのタイミングでボールから手を離せばよいか、ボールに力は伝わっているかなどを振り返り、投の粗形態を再確認することができます。

「遠くに力一杯投げる」ことがねらいなので、ボールは個々の特性に応じて選択できるようにしておく必要があります。

言葉がけを工夫しよう

「もっと力を込めて」や「一生懸命に投げよう」といった言葉がけは、子供を意欲的にする言葉として大切にしたいものですね。もちろん、情意面の言葉だけでなく、下記のような正しい投の運動の行い方や効果的な練習方法などを伝えることも必要です。

・ 2本の指でボールを握っているけれど、次は3 本で握ってごらん。

・ 投げるときに声を出すと遠くへ投げることができるみたいだよ。

このように、「いつ、どのようにして、どのような知識」を扱っていくかが、これからの授業づくりのポイントの1 つとなります。

他教科との関連を図ってみよう

四年生の算数科で学習する「角度」を取り入れてみる

もっと斜め上に投げたら遠くへ投げることができるかな?

斜めとは何度くらい?

45 度くらいかな? 50 度くらいかな?

教師と子供の間で、このような関わりがあってもおもしろいかもしれません。

中学校の理科の教師と連携してみる

少し発展的ですが、 中学校の理科の教師と連携し、投の運動に取り組みながら、どうしたら物を遠くに飛ばすことができるかという素朴な疑問をぶつけてみるのもよいかもしれません。

学校だけでなく家庭や地域の力も活用しよう

家庭での実践を促すために、例えば、学年だよりや学校保健安全委員会などで保護者の協力を呼びかけたり、子ども会や地域の行事に、投の運動を取り込んだりするなどの工夫が必要です。

ある程度の習慣化をめざすには、継続して長期間取り組むことや家庭や地域も巻き込んで取り組むことが大切です。

調査官からのワンポイントアドバイス

国立教育政策研究所教育課程調査官 高田彬成

投の運動は、力いっぱい走ったり跳んだりする陸上運動系において、子供の実態に応じて加えて指導することができる運動です。

友達と競い合ったり、自己の記録に挑戦したりする楽しさを味わいながら、ボールをより遠くに投げるための動きを身に付けることをめざします。

本単元では、ただ投げる動作をくり返すのではなく、自己に適した課題を見付け、その解決に向けて楽しく学習するために活動を工夫することが大切です。本稿にあるように、チーム対抗のゲーム形式にすることも工夫の一つと考えられます。

友達と励まし合って練習やゲームをしたり、ゲームの勝敗の結果を受け入れたりする態度を身に付けることができるようにします。

さらに、友達と相談しながら練習やゲームをすることは、学習をより楽しくするだけでなく、思考力、判断力、表現力などの育成のためにも重要であるため、これらをバランスよく指導することに留意しましょう。

イラスト/栗原 清

『小四教育技術』2019年1月号より

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