小6体育「表現運動」指導アイデア
執筆/福岡県公立小学校教諭・成澤千晶、福岡県公立小学校教諭・菊竹麻衣
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・塩見英樹、福岡県公立小学校校長・大人形孝浩、福岡県公立小学校教頭・森田元一郎
目次
授業づくりのポイント
高学年の「表現」では、これまでの学習で身に付けた即興的に踊る能力やリズムに乗って踊る能力、コミュニケーション能力等を土台にして、いろいろな題材から表したい感じやイメージを強調するように、変化を付けたひと流れの動きで即興的に表現したり、グループで「はじめ–なか–おわり」の構成を工夫した簡単なひとまとまりの動きにして表現したりすることをねらいとしています。
本単元では、「群(集団)が生きる題材(スポーツの攻防)」に焦点を当てています。授業づくりにおいては、子供の実態に合わせて、題材となるスポーツを選ぶことが重要です。「盛り上がる場面はどこかな?」と尋ねてイメージを共有し、実際に踊ってみるなどして表現しやすいスポーツを選ぶとよいでしょう。群(集団)を生かすため、個人の採点種目ではなく、複数人で行う種目が望ましいです。2人で行う種目の場合、周りの観客の動きを取り入れるなどして工夫するとよいでしょう。また、子供のイメージを膨らませ、動きを引き出すための資料の活用や教師の言葉がけも大切です。
授業を行う際には、新型コロナウイルス感染症対策として、子供たちに授業前後の手洗いを徹底するように指導しましょう。活動中は地域の感染レベルに応じて、適切な身体的距離を確保するようにしましょう。
単元計画(例)
楽しむ① できる表現を増やして楽しもう
表現への抵抗感をなくし、仲間と積極的に交流しながら踊ることができるように、毎時間のはじめに、できる表現を増やす時間を設定します。
心と体をほぐしながら、様々な即興表現を楽しみ、題材を表現するためのもととなる動きを経験できるようにします。子供が「どのように動いたらよいか分からない、できない」という不安をもたないようにするためにも、「思い浮かばなかったら、先生や仲間の動きを真似してね」と言葉がけをし、一緒に踊ってみるとよいでしょう。
単元を通じて「表現運動って楽しいなあ、おもしろいなあ」と思えるような授業を目指しましょう。
できる表現を増やすために
新聞紙にへーんしん!

1人が新聞紙を動かし、相手はその動きを真似します。新聞紙を動かす人は、たたんだり、丸めたり、ねじったりと、いろいろな動きの変化が出るように工夫しましょう。
だるまさんが○○!

いろいろなポーズで急に止まる楽しさを味わいます。「だるまさんがくっついた」「だるまさんがねじれた」など、いろいろな動きを入れると、ダイナミックな動きへと変化します。
THE☆対決!

本当に闘っているように、スローモーションでダイナミックに動いたり、素早く動いたりするなど、速さを変え、動きの誇張をねらいます。
ミラー人間になろう!

ペアになり、1人の動きを相手がミラー人間になって真似をします。離れたり、くっついたり、あえて反対の動きをしたりする動きの中で、相手との対立・対応した動きをねらいます。
イントロジェスチャー!

はじめは教師がリーダーになります。子供が「トントントン、何の音?」と聞くと、教師が「ボールが飛んでいく時の風の音」と言ったら、みんなで風になって動きます。「ヒュ――」「ビュンビュンビュー――ン」など、オノマトペを口ずさみながら動くとよいです。次に、子供がリーダーになり、何度か繰り返します。題材の特徴を捉えた即興的な表現をねらいます。

エアワールド!
2人組やグループで本当にスポーツをしているかのように動きます。ハイライトニュースのように、一瞬を切り取った動きを中心にして、スローモーションやコマ送りなどの速さの変化や、集まるー離れるなどの群の動きを経験できるよう意図的に計画します。ダイナミックな動きは大いに称賛しましょう。
<競技の例>
・バスケットボールのシュート前の攻防
・ラグビーのトライ前
・フェンシングの得点シーンなど
フェンシングの得点シーン

「エアーワールド!」で学んだことを「なか」の動きに生かして、「ひとまとまりの動き」につなげます。
楽しむ② ひとまとまりの動きをつくって楽しもう
3~6人のグループで、スポーツの攻防である「なか」の場面をつくり、動きを工夫した後に「なか」につながる「はじめ」と「おわり」の動きを付け加え「ひとまとまりの動き」を構成します。実際に踊ってみながら、グループボード(下欄参照)を活用して、題材に関わるいろいろな動きを見付けましょう。
「なか」の部分は競技のストーリーを追うのではなく、ハイライトニュースのように一番伝えたいところを明確にして動きを工夫します。下の例のように、速さや向きを変えたり、繰り返す動きを入れたりするようにしましょう。また、「集まる–離れる」、「一緒に–バラバラ」等、群の動きという視点でも工夫します。攻防の後の勝者と敗者の感情の対比も表現できるとよいでしょう。
教師は、言葉がけによって個人やグループの動きの質を高めたり、動きの変化がよくつけられているグループを紹介したりするなどして、より良い動きを共有できるようにします。そして、各グループででき上がった作品をつなぎ、発表会を行うと、達成感が味わえます。なお、踊ることへの抵抗感を感じている子供には積極的に言葉がけしたり称賛したりして、表現を楽しめるように支援しましょう。
「『なか』の動きの工夫の仕方」の例
〈その他の例〉集まる・離れる・揃う・バラバラ・巻き戻し・早送り・3倍速など
コマ送り

シュートの動きを何人かで表現しよう。
くり返し再生

円になったり直線になったり、隊形を工夫しよう。一斉に跳んだり1人ずつ跳んだりして、変化をつけよう。
スローモーション

全員で一方向を見て、止まってみよう。
「ひとまとまりの動き」の例
〈例〉バスケットボール表したいテーマ・ゲームの激しい攻め・守りの様子や、スタンドの応援と一体となる試合の興奮
○音楽をかけ、全体で2~3分間程度(なかの場面は1分半程度)の作品になるようにしましょう。
○表したい場面に、「感情」が入るようにしましょう。
かかわり思考ツール①
「グループボードの活用」
ひとまとまりの動きをつくる際に、下図のように動きを簡単に書くなどすると、グループ内での動きを視覚的に共有化することができます。思いついた動きや考えを付箋紙を使って交流するのも効果的です。

かかわり思考ツール②
「ICT端末の活用」
グループごとにタブレット型端末等でひとまとまりの動きを撮影し、自己やグループの動きを実際に見ることで、動きを工夫することができます。また、教師が動きのポイントや良さを認めて伝えると、子供が仲間の良い動きを真似しやすくなります。
学習の進め方については、下記の文部科学省の動画を参考にしてみるのもよいでしょう。
文部科学省/mextchannel 小学校高学年体育~16 表現:文部科学省
イラスト/たなかあさこ、横井智美
『教育技術 小五小六』2022年2/3月号より