AI&クラウドを活用した効率的で豊かな卒業文集づくり~Googleドキュメントで書き、Gemini Notebookと共に「自分」を振り返ろう

卒業文集は、子どもたちにとって小学校生活の集大成となる大切な記録です。しかし、下書きの印刷、赤ペンでの添削、清書、再度の誤字チェックなど、その作成には膨大な時間と手間がかかります。そこで今回、Googleドキュメントでの書き始めから業者への提出まで、クラウドやAIを活用して無理なく進める卒業文集づくりを提案します。
執筆/大内秀平(仙台市公立小学校教諭・Google for Education認定イノベーター)・鈴木優太(宮城県公立小学校教諭)
目次
はじめに:卒業文集の「手間」と「思い」
卒業文集やアルバムは、子どもたちにとって小学校生活を形に残すかけがえのない宝物です。しかし、従来の作成手順のままでは教員の負担が非常に大きくなってしまいます。
もちろん、効率化を求めるあまり単なる「事務作業」になってしまっては本末転倒です。AI等を活用して無駄な手間を削るのは、子ども一人ひとりと文章についてじっくり語り合ったり、子ども自身の「こだわり」を丁寧に大切にしたりする時間を確保するためです。
今回提案する実践では、Googleドキュメントやスプレッドシート、Gemini Notebookなどのクラウドツールを組み合わせ、下書き段階で何度も印刷することなく、入稿直前の「最後の1回だけ」紙でチェックする、持続可能な文集づくりを実現しました。
卒業文集の進め方:8つのステップ
(1)事前に業者とレイアウトをすり合わせておく
子どもたちが書き始める前に、印刷業者と事前の打ち合わせを済ませておくことが最も大切です。具体的には、次の2点を確認します。
- 1ページの文字数と行数:「1行あたりの文字数」と「全体の行数」をあらかじめ正確に把握します。
- 原稿データの納品方法:Googleドキュメントの共有リンクで受け取れるか、ファイル形式での書き出しが必要かを取り決めます。

文字数と行数が確定したら、Googleドキュメントで共通のひな形を作成します。ページ設定で余白やフォントサイズを微調整し、1行あたりの文字数と行数が業者の指定枠と完全に一致するように設定します。画面上で「あと何行書けるか」を視覚的に把握しながら執筆できるため、終盤での枠あふれによる差し戻しを防げます。
Googleドキュメントは標準で縦書きに対応していませんが、横書きのまま文字数と行数さえ揃っていれば、何の問題もありません。文章を縦書きの体裁に美しく組み直す工程は、印刷のプロである業者に委ねましょう。
(2)スプレッドシートで「はじめ・中・おわり」の構成案をつくる
レイアウトが定まったら、すぐに文章を書き始めるのではなく、スプレッドシートを用いて作文全体の骨組みとなる「たたき台」をつくります。
いきなり文章を書かないことで、大幅な手戻りを防ぐ
ドキュメントを前にしていきなり長文を書き始めると、途中で話が逸れたり論理が破綻したりしがちです。後から「全部書き直したい」となると、子どもの意欲の低下につながります。
そこで、一人1行を割り当てたスプレッドシートを用意し、最初に「題名」「はじめ(きっかけ)」「中(具体的なエピソード)」「おわり(自分の変化・将来への決意)」を箇条書きで整理します。全体の流れを短い言葉で先に決めておくことで、執筆途中の迷いや手戻りを未然に防ぐことができます。

友達のアイデアを参考にする
全員のたたき台が1つのシートに集まることで、手が止まった子どもも、友達のアイデアを自然と参照できます。「〇〇さんは運動会の悔しさから書き始めているんだ…」などと友達の思考の流れをヒントにしながら、教師が手取り足取り教え込まなくても、自力で構成をブラッシュアップできます。
(3)題材に迷ったら、Gemini Notebookで過去の自分と対話する
「何を書けばいいか思いつかない」と手が止まる子どもには、生成AIの力を活用してアシストします。
AIに文章作成を委ねない理由
卒業文集は、一生手元に残る記録です。AIが生成した美辞麗句を載せてしまっては、その子にとって実感を伴わない形式的なページになってしまいます。そのため、「AIは作文を書かない。過去の学びの記録を整理し、自分を見つめ直すための問いを返す役割に徹する。」という原則を徹底します。
ここで用いるのがGemini Notebookです。指定した資料(ソース)の情報のみをもとに、AIと対話できるツールです。
子どもたち一人一人の振り返り記録をソースにする
ソースとして読み込ませるのは、「子ども自身が過去に蓄積してきた振り返り」です。運用のポイントは、スプレッドシートのファイルを丸ごと追加するのではなく、「自分の記録が書かれたセル」だけを選択してコピーし、ソース追加画面にテキストとして貼り付けることです。
学級全体のシートをそのまま読み込ませると他の子の記録まで参照してしまうため、自分の記録だけを渡す工夫をします。紙のノートやワークシートの記録も、写真に撮って画像として取り込むことができます(利用可否は学校の規程に従ってください)。

プロンプト(指示文)の具体例
子どもたちには、次のような形式で質問を投げかけるよう伝えます。
わたしのふり返りを読んで、教えてください。
・1年間を通して、何度も出てくる言葉や大切にしている考え方はありますか?
・4月と今を比べて、自分の変化や成長が見られるところはどこですか?
・わたしが大切にしてきた価値観は何だと思いますか?

作文は書かないでください。わたしが考えるための質問を3つ投げかけてください。
「作文は書かないでください」「考えるための質問をしてください」と釘を刺すことで、AIは代筆者ではなく、散らばった記録を整理して本人へ問い返す「鏡」として機能します。
(4)Googleドキュメントで下書きを作成し、共同編集で推敲する
構成案が固まったら、作成したひな形を複製し、児童一人一人にドキュメントを配付して執筆に入ります(Google Classroomの「各生徒にコピーを作成」機能を活用します)。
友達同士でコメントを交わし合う
まずは子ども同士で下書きを読み合い、コメント機能を活用して気づいたことや感想を直接書き込みます。「この場面について、もう少し詳しく知りたい」「この一文に、〇〇さんらしさが出ているね」といった友達からの率直な言葉は、自分の文章を客観的に見つめ直すきっかけになります。
教師は「提案モード」で寄り添う
教師が文章を確認する際は、編集モードを「提案」に切り替えて修正案を提示します。提案モードで書き加えた部分は色付きで表示され、子ども自身が「提案を承認」をクリックすることで初めて文章に反映されます。「最終的な決定権は常に子ども自身にある」という姿勢を保ち、「先生に直された作文」ではなく「自分で吟味して納得した作文」として完成させます。

家庭でも家族と一緒に読み合い、構成を固める
持ち帰り端末を活用すれば、家庭でも保護者と一緒に同じドキュメントを開き、励ましや感想をコメント欄に残してもらえます。原則として、保護者による内容の確認もこの段階で行います。これ以降の工程では、誤字脱字程度の軽微な修正は行いますが、文章全体の構成に関わる大きな変更はできないルールにしておきます。
この推敲のタイミングで内容をしっかりと固めておくことで、終盤になってからの大幅な書き直しや手戻りを未然に防ぐことができます。
(5)Geminiパネルを活用して誤字脱字を一次チェックする
作文が書き上がった後の誤字脱字の校正作業は、GoogleドキュメントのサイドパネルにあるGemini機能に担ってもらいます。
- 誤字脱字の検出:タイピングミスや助詞の抜け落ちを確認します。
- 漢字表記の整合性:学年配当漢字がひらがなのままになっていないか、表記揺れがないかを点検します。
- 文構造の確認:主語と述語のねじれがないかを確かめます。

校正プロンプトの具体例
この作文の誤字脱字と、漢字の表記をチェックしてください。
・誤りがある箇所と、修正候補の一覧を作成してください。
・文章そのものは書き直さないでください。修正するかどうかはわたしが決めます。
AIが提示するのはあくまで修正の「候補」です。事前の機械的なチェックが一度入るだけで、教師による校正の負担は大幅に軽減されます。
(6)最後だけ紙に印刷し、人の目で最終チェックを行う
紙だからこそ気付ける視点がある
下書きの段階では一度も紙に印刷しませんが、入稿直前のこのタイミングだけは、一度紙に印刷して確認します。
画面上だけで追っていると見落としがちな助詞の重なりや改行バランスも、紙に印刷して鉛筆で文字を追いながら声に出して読むことで初めて違和感に気づくことができます。子ども自身が声に出して読み直して最後の修正を行い、担任も最終確認として丁寧に目を通します。
「最後の一度だけ紙でチェックする」というメリハリをつけることで、途中の無駄な印刷を省きつつ、一生残る文集にふさわしい原稿に仕上げることができるのです。
(7)完成したドキュメントを業者にそのまま共有する
推敲と校正を終えたドキュメントは、オンライン上で業者に直接共有します。業者はテキストデータをそのまま組版ソフトに取り込み、縦書きのレイアウトへ流し込みます。手書き原稿のタイピング工程が不要になり、誤植のリスクも低減します。
共有を行う際は、次の点に配慮します。
- 共有権限は「閲覧者」に設定する:誤操作による文章の改変を防ぐため、編集権限は付与しません。
- 締め切り後は子どもの編集権限を停止する:提出期日を迎えた段階でアクセス権限を固定します。
- 個人情報の保護規定を遵守する:児童の氏名やデータの外部共有は、学校のセキュリティポリシーに必ず従います。
(8)クラスページはCanvaで手書きとデジタルを組み合わせる
文集に掲載するクラスページは、「Canva」を用いて手書きの良さとデジタルの利便性を組み合わせて作成します。
- 方法1(手作業の質感を残す):文集委員がCanvaで大枠をデザインし、印刷した台紙に全員が手書きの文字やイラストを書き込んで切り貼りします。温かみのある手作業の質感を残したい場合に適しています。
- 方法2(同時作業で効率化):共同編集機能を使い、端末上で全員が同時にデザインを進めます。直筆のメッセージやイラストは写真で撮影して画像として配置します。短時間で統一感のあるページが完成します。

運用にあたって留意したい点
- AIの回答を鵜呑みにしない指導:Gemini Notebookが過去の振り返りの意図を誤って解釈してしまうこともあります。違和感を覚えた際は、必ず元の振り返りシートに立ち返って自分の言葉を確認するよう促します。
- AIの利用を強制しない:書きたい題材が明確に定まっている子どもはAIを使う必要はありません。題材選びに迷った際の選択肢として提示します。
- 思い出の記録も尊重する:行事について書きたい願いも大切にし、「その行事を通して自分はどう変わったのか」という問いを一緒に投げかけることで内省的な作文へと引き上げます。
- 印刷業者との早期の連絡調整:早い段階で担任側の意図を伝え、受け入れ可能なデータ形式について事前に相談しておくことが大切です。
おわりに:効率化は「こだわり」のために
途中の無駄な印刷や書き直しを省き、最後だけ紙でチェックする文集づくりは、教員の事務負担を大幅に軽減します。しかし本質的に重要なのは、その効率化によって生み出された時間を「何に充てるか」です。
以下の表に、文集作成の過程における子ども、AI、教師、保護者、印刷業者、それぞれの役割と実践内容を整理しました。
| 主体 | 役割と実践内容 |
|---|---|
| 子ども | スプレッドシートで構成案をつくり、友達とアイデアを参照し合います。Googleドキュメントで執筆し推敲します。 |
| AI(Gemini Notebook) | 蓄積された振り返りを整理し、子どもが自己を見つめ直すための問いを返します(代筆は不可)。 |
| AI(Geminiパネル) | 誤字脱字や表記の揺れを機械的に点検し、修正候補を提示します(書き直しは不可)。 |
| 教師 | 提案モードを活用して伴走します。子どもとの対話に時間を割き、紙での最終チェックを担います。 |
| 保護者 | 家庭の端末から下書きを閲覧し、励ましのコメントを残します。 |
| 印刷業者 | 共有されたテキストデータを受け取り、縦書きの組版レイアウトへ直接流し込みます。 |
これまで教師が印刷機の順番待ちや連夜の朱書き修正に費やしていた時間を、子ども一人ひとりと文章についてじっくり語り合う時間へと振り替えていきます。そうすることで、文集づくりの工程そのものが、小学校6年間の歩みを振り返るかけがえのない学びの時間へと変わっていきます。
参照:
鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)
鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)
鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)
鈴木優太『クラス全員が「聞ける」「話せる」!ペア活動図鑑100』(学陽書房)
鈴木優太編『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク (ロケットスタートシリーズ) 』(明治図書出版)
鈴木優太編『小学6年の学級づくり&授業づくり 12か月の仕事術(ロケットスタートシリーズ) 』(明治図書出版)
鈴木優太編『どの学年でも通用する学級づくりのワザだけ集めました。 』(明治図書出版)
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鈴木優太(すずき・ゆうた)先生プロフィール
宮城県公立小学校教諭。1985年生まれ。2013年より教育サークル縁太会を主宰し、アイデアに富む教育実践と学びの場づくりに定評がある。最近著に『クラス全員が「聞ける」「話せる」!ペア活動図鑑100』(学陽書房・3月31日発売予定)があり、『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)はベストセラーを記録。みんなの教育技術では5年にわたり連載を担当、現在は『「個」も「集団」も育つ 学級経営&授業アイデア』を連載中。
大内 秀平(おおうち・しゅうへい)先生プロフィール
宮城県公立小学校教諭。1994年生まれ。文部科学省の在外教育施設派遣として、シンガポール日本人学校に3年間勤務。探究的な学びを軸に、総合的な学習の時間やICTを活用した授業づくりに取り組んでいる。Google for Education 認定イノベーター。共著に紺野 悟・大野睦仁/編著『どの教科でも通用する授業づくりのワザだけ集めました。』(明治図書出版)、阿部隆幸/編著『学級経営DX 60のエピソードで示すデジタル活用の実践』(学事出版)などがある。
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