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性的指向と性自認――実は「将来に直面する課題」はまったく違う【教室から始める性教育~“いのち”と“多様性”を育てる授業】#10

連載
教室から始める性教育~“いのち”と“多様性”を育てる授業

小学校や中学校で性教育の指導に長年携わったスペシャリストである、帝京平成大学教授・郡吉範先生による連載「教室から始める性教育~“いのち”と“多様性”を育てる授業」の第10回です。この連載では、安心して実践できる基礎的・基本的なことがらやすぐに使えるヒント、ちょっと背中を押す言葉などをお届けします。今回のテーマは「性的指向と性自認――実は『将来に直面する課題』はまったく違う」。今回は、LGBTが向き合う将来の課題についての話です。LGBとTでは、10、20年後に直面する課題はまったく異なります。教員の視点で子供たちにできることを考えていきましょう。具体例は、郡先生の経験や現場での実践に基づくものですので、現場でのヒントにしてください。

執筆/帝京平成大学人文社会学部教授・郡 吉範

LGBが向き合う将来のテーマ

まず、LGBの人たちが将来向き合う代表的なテーマとして挙げられるのが、同性婚に関する問題です。現在の日本では法的に認められていませんが、ニュースなどで耳にする機会も増えてきました。

この問題は、若いうちはそれほど切実に感じられないこともあります。ところが、いざパートナーと人生をともにしようとしたとき、病気や老後、相続といった場面で、「法的に家族として扱われない」という形で、現実の問題として立ち現れてきます

つまりLGBの人たちが向き合う将来の課題は、「自分の生き方が、社会の制度の中でどう扱われるのか」という問いでもあるのです。

一方で、LGBの人たちは、恋愛対象についてあえて語らなければ、日常生活を送れる場面が多いのも事実です。ただし、それは「困っていない」という意味ではありません。むしろ、「語らないことで、何とかやり過ごしている」という言い方のほうが、実感に近いかもしれません。

その結果、当事者が抱えている生活上の困難が見えにくいまま、社会の一部では、LGBの人たちが「消費者」として注目されるようになりました。これは「生きやすくなった」という話とは少し違います。社会がどこに関心を向け、どこに支援が届きにくいのかを考えるための、ヒントの1つと考えることができます。

例えば、子供を持たず、共働きで収入が安定しているLGBカップルは、可処分所得が高い層として見られることがあります。ファッションや旅行、インテリアなどの分野で「LGBTフレンドリーなサービス」が増えてきた背景には、こうした経済的な側面も影響しています。

教室より10回イラスト

T(トランスジェンダー)の課題は?

一方、トランスジェンダーの人たちはどうでしょうか。こちらは、もう少し生活の根っこに関わる課題が多くなります。

周囲の理解が得られず、学校や職場でなじみにくさを感じる。
書類の性別欄や制服の指定などで、日常的にストレスを抱える。
性別適合手術やホルモン治療には高額な費用がかかり、経済的な負担が大きくなりがち。

その結果、就労の面でも壁にぶつかりやすく、生活が不安定になりやすい状況が生まれます。実際に、トランスジェンダーの若者が経済的な困難や社会的な孤立に直面しやすいことは、海外においても、共通する課題として繰り返し指摘されています。

教員として、今からできる視点とは?

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