小1生活「あきの おもちゃを つくろう」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小1生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「あきの おもちゃを つくろう」の単元を扱います。
執筆/高知県公立小学校教諭・中森悠太
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
高知県公立小学校校長・尾中映里
目次
年間指導計画
4月 | どきどき わくわく 1ねんせい(スタートカリキュラム) |
5月 | がっこう だいすき |
6月 | きれいに さいてね |
7月 | なつが やって きた |
8月 | いきものと なかよし |
9月 | あきを さがぞう |
10月 | あきの おもちゃを つくろう |
11月 | あきまつりを しよう |
12月 | じぶんで できるよ |
1月 | ふゆを たのしもう |
2月 | しん1ねんせいに がっこうの ことを つたえよう |
3月 | もうすぐ 2ねんせい |
単元目標
秋の自然物や身近な素材で遊ぶ活動を通して、遊びや遊びに使う物を工夫して作ることができ、遊びの面白さや自然の不思議さに気付くとともに、みんなと楽しみながら遊びを創り出そうとすることができるようにする。
本単元と関わりの深い幼児期の経験
- ドングリ、クリ、マツボックリ、落ち葉など、秋の木の実や木の葉を拾ったり、集めたりした経験。
- 集めた木の実の数を数えたり、長さ、大きさ、重さを比べたり、測ったりした経験。
- マツの葉を集めて、友達とマツの葉相撲をして遊んだ経験。
- ごっこ遊びを通して、遊び方を考えたり、友達と役割を決めて遊んだりした経験。
- 身の回りの物を使って遊びを創り出し、友達と一緒に遊んだ経験。
学習の流れ(全7時間)
集まった秋のお宝で、どんなおもちゃができるかな?
ドングリを使ったボウリングができそう!
マツボックリのけん玉を作ったことがあるよ。
ドングリはこまみたいな形に見えるから、こまができそう!
くっつき虫を使って魚釣りをしてみたい!
【小単元1】あきの おたからを つかって おもちゃを つくろう(4時間)
①秋のお宝でおもちゃを作ろう
子供が集めた秋の自然物と、保護者の協力を得て用意してきた材料を使って、おもちゃを作ります。最初からグループを決めるのではなく、まずは一人一人でおもちゃを作ります。おもちゃを作っていく中で、「マツボックリでけん玉を作ろうと思っているけど……」「私も! 一緒に作ろう!」と、自然とグループができ始めます。
【教師の支援・援助】
最初に、秋の素材に触れたり遊んだりした経験を基に話し合う場を設け、おもちゃについての好奇心を高め、イメージを広げるようにします。
【物的支援】
子供がおもちゃについてイメージをもったり、その作り方や必要な材料が分かったりできるようにしておきましょう。例えば、教室に工作の本コーナーを設置します。そうすることで、子供がおもちゃを作ろうとするときにいつでも参考にすることができます。
②おもちゃで遊ぼう
おもちゃがある程度完成してくると、マツボックリを使ったけん玉や、ドングリ迷路、ドングリを使ったマラカス、落ち葉を使った魚釣りなどのおもちゃで遊ぶ様子が見られます。自分で遊んでみたり、友達に遊んでもらったりすることで、「ドングリの数を増やすと、マラカスの音が大きくなるかも!」「落ち葉で飾り付けをしてみよう」と、おもちゃをよりよくするためのアイデアを伝え合います。
試行錯誤しながら、おもちゃ作りに没頭します。子供がおもちゃを作る過程で、「作る→遊んで試す→見通す→作る」のサイクルを何回も繰り返すことで、探究心が高まっておもちゃがどんどんパワーアップしていきます。
子供が伸び伸びと遊ぶことができるように、遊ぶ時間を十分に確保します。たっぷり遊ぶことで、子供の発言や対話から新たな気付きが生まれます。子供が何度も試行錯誤しながらおもちゃを作ることで、納得のいくおもちゃに近付きます。
【教師の支援・援助】
ドングリとコップを使って、マラカスができたよ!
本当だね。そういえば、〇〇さんは太鼓を作っていたよ。
他の楽器も作ってみたかったから、〇〇さんの太鼓も見てみる!
子供が何を作ろうとしているのか、どのように作ろうとしているのかなど、子供の思いや願いを把握します。さらに、子供同士をつなげて協働的な活動となるように言葉がけをします。子供の行動やつぶやきから思いや願いを把握したり、評価したりできるように、教師がICT端末でビデオ撮影をして、授業後に活用する方法もあります。
【空間的支援】
教室内に、「秋のお宝ボックス」や「材料コーナー」、「道具コーナー」を設け、子供が作りたいおもちゃを作ることが可能な環境にします。「秋のお宝ボックス」には、子供が見付けてきたドングリや落ち葉などを入れます。「材料コーナー」には、割り箸や紙コップなどの材料を準備します。「道具コーナー」には、子供から要求のあった、きりや色ペンなどのおもちゃ作りに必要な道具を準備しておきます。
【物的支援】
ドングリに穴を空けたり、割り箸を切ったりなど、子供が作業をするときに怪我をしないように安全な道具を準備した場づくりをしましょう。道具を安全に使うことができるように、園での経験を把握したり、しっかり練習したりしてから使うようにします。
●協働性
おもちゃを作る活動を通して、同じおもちゃを作っている友達と対話したり、作業を一緒にしたりしながら、秋の自然物の色や形、大きさなどの特徴に気付き、協力して作ろうとします。
●思考力の芽生え
ドングリやマツボックリなどの材料を使い、おもちゃを作る活動を通して、素材の色や形などの特徴に気付いたり、その特徴を生かしておもちゃを工夫したりして、自分の作りたいおもちゃのイメージをもって製作に取り組もうとします。
1人1台端末活用のポイント
子供が1時間ごとにおもちゃの写真を撮り、作る過程を記録します。撮った写真を友達と見せ合うことでアドバイスをもらったり、真似したい点を見付けたりすることができます。
評価規準
思考・判断・表現:比べたり、例えたり、試したり、見立てたりしながら、使う物を選んでおもちゃを作っている。
主体的に学習に取り組む態度:秋の自然物を生かしたおもちゃを作ろうとしている。
【小単元2】おもちゃの パワーアップ大さくせん(3時間)
①もっと おもちゃを パワーアップさせよう
グループでおもちゃを作っていく中で、「もっとおもちゃをパワーアップさせたい!」といった探究心が高まります。「もっと楽しく遊ぶためにはどうすればよいかな?」と問いながら、作り方や遊び方の工夫について自分の意見を伝え合いながらグループで考えます。
ある程度おもちゃが完成してくると、「1人3回まで遊べるよ」「緑のテープより後ろからドングリを投げるよ」など、おもちゃの遊び方やルールについてのアイデアを伝え合います。遊んでくれる人に楽しんでもらうためにはどのような遊び方やルールがあるとよいのか、相手意識をもって同じ遊びのグループで考えます。
【教師の支援・援助】
おもちゃをパワーアップさせていく中で、「作る→遊んで試す→見通す→作る」のサイクルを意識して、活動時間を設定しましょう。
【空間的支援】
各グループで困っていることや悩んでいることができたときには、「お悩み相談タイム」を設けます。困っていることを聞き、子供同士で解決できるようにします。
②他のグループのおもちゃで遊ぼう
子供はおもちゃが完成してくると、「他のグループの友達にも紹介したい!」といった思いをもち始めます。おもちゃの遊び方や仕組みを言葉で伝えますが、うまく伝わりません。すると、「遊んでもらったらいいんじゃない?」と言ったことがきっかけとなり、子供は遊び始めます。他のグループの友達にも遊んでもらって、自分たちのおもちゃの楽しさを知ってもらいます。
遊んでもらう中で、「ドングリの数を変えると、マラカスの音がもっと大きくなるんじゃない?」「ドングリ的当ては、1人3回まで投げられることを説明するといいよ!」と、アドバイスをしたりもらったりすることがあります。アドバイスを受け、さらにおもちゃを改良していきます。
【教師の支援・援助】
友達からのアドバイスを受け、「マラカスの中にドングリを3個入れていたけど、6個にしよう」と、おもちゃを改良しようとしている子供を価値付け、おもちゃをよりよくすることを促します。
子供は遊ぶことを通して、学級の中に楽しいおもちゃがたくさんあることに気付きます。子供の「年長さんを招待して、おもちゃ祭りを開きたい!」といった発言をきっかけに、年長さんとの交流活動が始まります。
【教師の支援・援助】
園での経験を振り返ったり、自分たちもおもちゃ祭りに招待してもらったときの写真を用意したりして、そのときのことを思い出すように声かけをします。
●言葉による伝え合い
おもちゃを作る中で、自分の考えを友達に伝えたり、友達の考えを聞いたりする活動を通して、言葉による伝え合いを楽しみながら、協力して製作に取り組もうとします。
●協働性
おもちゃを作ったり、遊んだりする活動を通して、友達の考えや気持ちに共感して、折り合いをつけながら一緒に楽しもうとします。
●数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
おもちゃを作ったり、遊んだりする活動を通して、遊び方やルールを文字で表したり、ドングリやマツボックリの数を数えたりして、遊びの中に取り入れようとします。
1人1台端末活用のポイント
おもちゃを作っている中で、うまくいかないところがあったときには動画に撮ります。
「お悩み相談タイム」の中で他のグループに動画を見せ、アドバイスをもらいます。言葉による説明だけでなく動画に残すことで、より分かりやすくなり、的確なアドバイスをもらうことができます。
ICT端末を使って保存した写真を学級で共有します。他のグループのおもちゃの進捗状況を見たり、子供同士でアドバイスをし合ったりすることで、子供の意欲の継続につながります。また、単元の振り返りの際に見返すことで、自分自身の成長や変容に気付くこともできます。
評価規準
知識・技能:秋の自然はいろいろな遊びに利用できることや、遊びを工夫したり、遊びを創り出したりすることの面白さに気付いている。
思考・判断・表現:おもちゃを作ったり、遊んだりして、おもちゃの遊び方やルールを友達と一緒に工夫しながらつくることができる。
主体的に学習に取り組む態度:友達と関わり合いながら工夫したり、協力したりしておもちゃを作っている。
参考資料/
・『あたらしいせいかつ上 教師用指導書 朱書編』(東京書籍)
・『高知県保幼小接続期実践プラン』高知県教育委員会
イラスト/木村旨邦