なぜ作成するの? 学校経営計画の立案と実施~シリーズ「実践教育法規」~

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田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第10回は「学校経営計画の立案と実施」について。学校経営計画は、何のために作成するのでしょうか。また、作成するうえでの注意点を、例とともに解説します。

執筆/蛯谷 みさ(大阪体育大学教育学部教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#10

学校経営計画の作成根拠

学校経営計画とは、学校教育目標と、それを達成するための戦略を示したものです。中期的には3年程度、短期的には当該年度の学校経営方針を校長が明らかにして作成します。

2007年における学校教育法及び学校教育法施行規則の改正(第42条、43条/第66条、67条、68条)により、学校は法令上、次の3つを行うことが必要となりました。

①自己評価の実施・公表
②保護者など学校関係者による評価の実施・公表
③評価結果の設置者への報告

これを受けて2008年度からの学校評価の取り組みに活用できるよう、文部科学省において「学校評価ガイドライン」が改訂されました(2008年1月)。主な改訂点は次の通りです。

①自己評価について、重点化された目標を設定し精選して実施すること
②保護者による評価、学校の積極的な情報提供、それらを通じた学校・家庭・地域の連携協力を促進すること
③学校評価の結果を設置者に報告することにより、設置者が学校に対して適切に人事・予算上の支援・改善策を講じることの重要性が強調されたこと

こうして学校の自己評価が義務づけられたことから、法令ではありませんが、このガイドラインにあるように、学校運営の状況について評価を行う前提として、目標や評価項目等の設定を行う「学校経営計画」を作成することが必要となったのです。PDCAサイクルによる学校改善を推進し、学校が適切に説明責任を果たし、学校・家庭・地域の連携協力による学校づくりを進めるために「学校経営計画」は重要な意義をもちます。

自己評価、具体的かつ明確な目標の設定について
文部科学省「学校評価ガイドライン(改訂)」(2016年3月22日)より

立案の手順と留意点

1.教育の方向性を捉える
立案にあたっては、日本国憲法や教育基本法、関係諸法規に従い、各都道府県及び各市町村教育委員会の教育基本方針と重点施策を踏まえて作成します。社会に開かれた教育課程の編成、資質・能力の3つの柱の育成、「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善、カリキュラム・マネジメントの推進など現行の学習指導要領の理念を踏まえ、児童生徒の実態、保護者や地域住民等の願いや期待、地域や学校の強みや課題、特色等を校長は総合的に捉えて方針を示します。

2.学校経営ビジョンを構築する
1にあげた視点のほか、「令和の日本型学校教育」の構築に向けた「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現のための改革の方向性」も考慮して学校経営ビジョンに取り入れていきます。

記載内容の例を次に示します。
①学校教育目標 教育活動を通して実現を目指す価値概念(~を育成する。)
②目指す姿(学校像・児童生徒像・教師像)
③現状と課題
④中期短期重点目標・評価指標
⑤目標達成のための具体的方策

重点的に取り組む教育活動等について実現したい目標を設定し、その実現のための手立てや行動計画を整理して示します。④⑤の例を下図に示します。

学校経営重点計画の例

3.重視したい学級経営
近年、学校経営を揺るがしているのが学級経営の破綻による問題の連鎖です。人員補充がない中で管理職が担任を代行せざるを得ない状況もあります。外国籍や特別な支援を要する児童生徒の課題も多様化しており、学級経営が成り立ちにくくなっています。学校経営は学級経営が基盤です。全校一斉に取り組む学級経営の基本方針を示し、学級経営の在り方を議論したり事例を示したりする研修を位置づけ、若手育成支援を明確にした具体的な計画が求められます。

4.ビジョンの共有と実現
学校経営計画は、教職員や保護者、地域関係者に公開し、共有することで、それぞれの役割や行動目標が明確になり、実現が促進されます。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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