小3国語「モチモチの木」指導アイデア

教材名:「モチモチの木」(光村図書三年下)

指導事項:〔知識及び技能〕(1)オ 〔思考力、判断力、表現力等〕C(1)エ・カ
言語活動:イ

執筆/東京都公立小学校主任教諭・本村文香
編集委員/文部科学省教科調査官・大塚健太郎、東京都公立小学校校長・加賀田真理

単元で付けたい資質・能力

①身に付けたい資質・能力

登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像する力や、文章を読んで感じたことや考えたことを共有し、一人一人の感じ方に違いがあることに気付く力の育成を図ります。

本作は、小見出しのついた五つの場面に分かれ、共感しやすい主人公など、登場人物の気持ちの変化や性格について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像しやすい作品です。しかし、どの叙述とどの叙述を結び付けて考えるかにより、中心人物の性格の捉えに差異が生じます。

また、モチモチの木についても相反する叙述から、どのような木なのかについての捉えが違ってきます。その違いについて互いに確認し合い、どうしてそのように考えるのかを共有することで、叙述を基に多面的に想像しながら読む力を育成していきます。

② 言語活動とその特徴

本単元では、中心人物である豆太や、物語を象徴するモチモチの木について考えたことを話し合い、感じ方や考え方の違いについて共有するという言語活動を設定します。まず、扉ページの挿絵や「モチモチの木」という題名から、どのような木であるのかを想像し、この物語で注目すべき重要なキーワードであることを確認します。

初読の後、「おくびょう」と表現されていた豆太が、じさまのはらいたをきっかけにして、「勇気のある子供」にしか見られないというモチモチの木に灯がともるのを見る、という物語の概略と、登場人物の確認を行い、豆太が中心人物であることを押さえます。

初発の感想などから、豆太の性格については「おくびょう」「勇気のある子供」、モチモチの木については「空いっぱいのかみの毛をバサバサとふるって、両手を『わあっ。』とあげる」「秋になると、茶色いぴかぴか光った実を、いっぱいふり落としてくれる」などの相反する印象の叙述が存在することに着目します。

そして、自分にとっての「豆太」、自分にとっての「モチモチの木」は、どのような人物や木であるのかを明らかにしていこうとする意欲を喚起します。同時に、性格などに関する語彙の拡充も行っていきます。

自分が感じたり考えたりしたことを、対話を通して共有することで、同じ文章を読んでも、文章のどこに着目するのか、どのような思考や経験、感情と結び付けて読むのかによって、一人一人の捉え方や感じ方が違うことについて確認していきます。

その際には、互いの感じたことや考えたことを理解し、友達の感じ方の良さに気付いていくことが大切です。「自分と同じ叙述から、自分とは違う感じ方をしている」「自分と違う叙述から、同じ感じ方をしている」などの視点をもち、友達の感じ方や考えを積極的に取り入れるように促していきます。

友達の考えなどは、自分とは違う色分けをして記録することなどを促すと、共有することで得た学びが自覚しやすくなり、評価を行う際にもこの活動で何を友達から取り入れて学んだのかが分かりやすくなります。このことを通して、自分の考えを深めていくだけでなく、友達や自分の良さについて実感し、友達と一緒に学習することの良さについても気付くようにしていきます。

単元の最後には、「じさまやおとうは、どのような子供だったのか」という物語に書かれていない内容について想像させます。書かれてはいない内容ですが、物語の叙述を基に想像することで、「モチモチの木に灯がともるのを見る」という体験や「モチモチの木」の存在についての考えを深めていきます。根拠のない単なる空想にしないためには、自分が読み取ったことや叙述に基づく発言をさせることが重要です。

単元の展開(12時間扱い)

主な学習活動

第一次(1・2時)

◎学習の見通しをもち、学習計画を立てる。
・挿絵や題名から、「モチモチの木」とはどのような木かを想像してから全文を読み、初発の感想を書く。
・豆太の性格やモチモチの木の様子には、相反するような表現があり、より詳しく読んで友達と比べてみたいという意欲をもつ。
・学習課題を設定して、学習計画を立てる。

【学習課題】豆太はどんな子? モチモチの木はどんな木? 話し合って、友達とのちがいについて考えよう。

第二次(3~9時)

◎豆太はどんな子なのか、自分の考えをまとめ話し合う。
・語り手やじさまの豆太の性格についての見方を確認する。
・豆太の性格が表れている豆太の行動や会話文、心情が表れている言葉や文を見付け、言葉や叙述を基に豆太の性格を考える。
・考えたことをグループで話し合う。
→アイデア1 主体的な学び

◎モチモチの木はどんな木なのか、自分の考えをまとめ話し合う。
・モチモチの木の様子や説明についての叙述を確認する。
・考えたことをグループで話し合う。
→アイデア2 主体的な学び

第三次(10~12時)

◎「じさまやおとうは、どのような子供だったのか」について想像し、話し合う。
・「モチモチの木に灯がともる」のを見たじさまやおとうは、どのような子供だったのか、豆太と比較して想像する。
・「モチモチの木に灯がともるのを見る」とはどういうことなのかを考える。
・友達と意見を出し合って、考え方や感じ方の違いを共有する。
→アイデア3 深い学び

アイデア1 豆太についての考えの違いから、もっと詳しく読みたいという意欲をもつ

主体的な学び

扉ページの挿絵や「モチモチの木」という題名から、モチモチの木とはどのような木なのだろうという想像をさせて、モチモチの木について知りたいという期待を高めてから読み始めます。豆太の性格を表す言葉は物語の最初と最後で、「おくびょう」と「勇気のある子供」とまったく反対の言葉で表されるようになっていることを確認します。

最後の3行の「それでも、豆太は、じさまが元気になると」という叙述に着目させると、一部の子供は「やっぱり豆太はおくびょうなままだ」という反応を見せる一方で、「おくびょうなだけではない」「勇気がある子だ」「やさしい子だ」という考えの子供も出てきます。

豆太は本当に「勇気のある子供」となったのかについて考えることで、もっと詳しく読んでみたいという意欲を高めます。そして、「おくびょう」「勇気のある子供」という言葉に関連する豆太の行動や発言などの叙述を集めて、性格についての言葉を補完していきます。

そのような活動のなかで、性格にかかわる言葉を誰が言っているのかを確認し、「語り手」の存在を意識させます。語り手、じさま、豆太自身のそれぞれの視点で語られていることで、多面的な人物像が浮かび上がることを意識させ、自分にとっての「豆太」とはどんな子か、自分の考えをまとめようとする意欲とともに、友達はどのように考えているのだろうという、友達の感じ方や考え方についての興味や関心を高めます。

同時に、「モチモチの木」についての相反する表現に着目することで、モチモチの木についても同じようにまとめていきます。

アイデア2 話合いを通して友達との違いを知り、その良さを取り入れる

対話的な学び

豆太はどんな子であるかや、モチモチの木がどんな木であるかを一人一人がまとめた後、グループで発表し、友達の意見と比べる活動を行います。

「同じ叙述から違う感じ方」「違う叙述から同じ感じ方」をしていることなどを中心に、互いの感じ方や考え方について共有を図ります。最後の3行をどのように捉えるかにより、豆太に対する見方が変わってきます。

「勇気のある子に変わった」「たまたま勢いでできただけで、おくびょうなまま」「もともと勇気があったかもしれない」など、様々な考え方に触れることで、自分の考えがゆさぶられ、もう一度、叙述に戻って確認することになります。

そのような活動のなかで、友達の感じ方の良さや自分の感じ方の良さに気付くだけでなく、「おくびょう」「勇気」「弱虫」「やさしさ」などの言葉のもつ意味について考えることとなり、語彙の広がりや言語感覚を磨くことにもつながっていきます。

また、「モチモチの木」についても同じように確かめることで、「小屋のすぐ前に立っている」「モチモチの木とは、豆太がつけた名前」「『実ぃ落とせぇ』と、いばってさいそく」などから、豆太はモチモチの木を恐れているだけではなく、「昼間は」日常的に親しんでいることや、あこがれをもっていることなど、豆太とモチモチの木の関係性を捉えることができます。

「モチモチの木に灯がついた」という豆太やじさまの感じ方と、「とちの木の後ろにちょうど月が出てきて……」という医者様の見方の違いを確かめ、自分は「モチモチの木に灯がついた」と思うかについて話し合うと、作品についての多面的な理解が深まります。

アイデア3 じさまとおとうの子供時代を想像し、豆太と比べて考える

深い学び

アイデア1でまとめた内容や、アイデア2で話し合った内容に基づき、じさまやおとうの子供時代について想像します。

単元の導入で、モチモチの木がどのような木であるのかを想像してから読み始めました。単元の最後に、モチモチの木に灯がともるのは、なぜ「一人の子どもしか、見ることはできねえ」のか。そして、なぜ「勇気のある子どもだけ」なのかについて問いかけます。

同時に、「おまえのおとうも見たそうだ」というじさまの伝聞の表現から、おとうも見るときには「一人」だったことが窺えることや、豆太と一緒に見た医者様には「とちの木と月、星、雪」にしか見えなかったことから、そのきまりは今も生きているらしいことを確認します。

そのうえで、「モチモチの木に灯がともる」ところを見ることができたじさまやおとうの子供時代は、どのようであったかを想像させます。

この物語のなかには、じさまやおとうの子供時代のことは書かれていません。書かれてはいない内容ですが、これまでの学習活動で捉えてきた内容に基づき、自分なりの根拠をもって想像を広げることが可能です。「じさまとおとうの子供時代を考える」という活動を通して、「モチモチの木に灯がともるのを見る」ということの意味についても考えを深めていきます。

子供からは、モチモチの木の灯がともるのは、なぜ「霜月二十日のうしみつ」なのか、「山の神様のお祭り」とは何かなどの疑問が派生してくるかもしれません。その際にも、勝手な想像ではなく、叙述や自分が読み取った内容など、想像の根拠を明らかにしながら説明し合うことが大切です。

『教育技術 小三小四』2021年2/3月号より

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