「お辞儀」「会釈」?「ジョギング」「ランニング」?日常生活で耳にする言葉の違い、児童に説明できますか?

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

知りたい星人のキッズたちがぶつけてくる、いろんな質問。みなさんも返答に困ること、結構ありませんか? 今回は日常生活の中で耳にすることのある、似た言葉の違いについて、わたしがどんな風に説明しているかをご紹介します。授業中に児童が飽きてきたときの、ちょっとした気分転換にも使えますよ!

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

会釈とお辞儀

前回・前々回の記事も併せてご覧ください。
「チャーハン」?「焼きめし」? 食品・料理にまつわる言葉の違い!
〇児童からの質問に、ちゃんと答えられてますか?~ニュースでよく聞く、似た言葉の違い~

日常生活でよく耳にする、似た言葉の違い

整形外科と形成外科

「整形外科」は、骨や関節、筋肉など、身体を動かす機能に問題が生じたとき、治療するところです。
スポーツや事故などで、骨折したり肉離れしたり、ねんざした時などがそうですね。
一方「形成外科」は、身体の表面全体を診療するところです。あざやできもの、皮膚の変形などを手術などで消したり、目立たなくしたりします。よくテレビコマーシャルなどで知っている美容を目的とするものは、「美容外科」と言いますが、これも「形成外科」の一つの分野に含まれます。
病気になったり怪我をした時は、ぴったり合ったお医者さんに診てもらいたいですね。

放射性物質、放射能、放射線

とくに「放射能」と「放射線」は、ごっちゃにされることが多いのですが、この3つの言葉はすべて、違う意味を持っています。
プルトニウムやラジウムなどの言葉を聞いたことがありますか? これらが、放射性物質です。
放射性物質は、実は常に少しずつ壊れています。そして壊れるときに、目には見えない、小さな小さな粒や、目には見えない光(物質粒子と電磁波)を出しています。これが放射線です。
放射線は、ごく少ない量だと問題ありません。地球にはいたるところに存在していますし、宇宙からも降ってきています。
ただ、放射線は、物質の中を突き抜けることができる性質を持っています。そのため、この放射線をたくさん浴びると、物質の性質が変わったり、生物の体が影響を受けたりします。
たとえば、ジャガイモにある種の放射線を当てると、芽が出にくくなり保存しやすくなります。
病気の悪い細胞をやっつけるときに放射線を使うことがありますが、逆に、健康な細胞に悪さをすることもあります。
この、放射性物質がどのくらいの放射線を出す力があるかを示すのが、放射能です。ニュースなどで「ベクレル」という言葉が出てきたら、それは放射能の単位です。
そして、放射線をどのくらい受けたか、ということを示すのが、「シーベルト」という単位です。
人間の体にどんな影響があるかは、このシーベルトをもとに説明されます。

X線とレントゲン

X線は、放射線の中で、電磁波と呼ばれるものの1種類です。すごく波長の短い、目には見えない光です。
光は、波の形によって、いろんな色に分かれますね。虹の色が良い例ですが、波の形が長いと赤くなり、短いと青になっていきます。そして、光が青よりさらに短い波長になっていくと、目に見えなくなり、物質を突き抜ける性質が強くなります。
この光は、ぶつかる物質の種類によって、たくさん突き抜けたり、突き抜けなかったりします。その差をセンサーが感じ取り、人間の目に見える映像に変換したものが、X線写真です。
X線がたくさん突き抜けたところは色が濃くなり、あまり突き抜けなかったところは、白く映ります。
たとえば骨が折れているところの写真を撮ると、骨はX線をあまり通さないので白く映りますが、折れたところにはすき間があるので、そこはX線がたくさん通るから黒く映り、「ここが折れているんだ!」と分かります。
「レントゲン」は「X線」を発見した人の名前です。「X」は謎、目に見えない光線という意味で命名されました。X線もレントゲンも、同じ意味で使われます。ちなみに、日本では「エックス線」などと、カタカナで書くことも多いですよ。

日射病と熱中症

温度が高く、湿気も多い場所に長い間いると、体温調節がうまくできなくなり、身体の中の温度が異常に高くなります。
2つの言葉は、どちらもこの状態のことを言いますが、直射日光を浴びたことが原因で起こる場合を「日射病」と呼びます。広い意味で使われるのが、「熱中症」なんだね。
熱中症は、人の命をおびやかすこともある、恐ろしい症状です。暑いときには激しい運動をひかえ、たくさん水分をとって、体調に気を付けよう。そして、外に出るときは、帽子をかぶるようにしましょう。病気のことを知って予防に努めたいですね。

ジョギングとランニング

どちらの言葉もよく聞きますね。これは、スピードの違いなのです。「ジョギング」は無理のない程度に軽めに走ることです。「ランニング」は「ジョギング」よりも速く走りますので、会話は難しいですよね。最近は、健康保持のために「ジョギング」をする人が多くなりましたね。心肺機能があがるだけでなく、脂肪燃焼にも役に立つし、手軽にできるのが人気の秘密のようです。。

会釈とお辞儀

よく学校では「お辞儀」や「会釈」という言葉を聞き、実際に実行する場面が多いですね。何が違うのでしょうか。「お辞儀」は、あいさつの方法全体を指します。
細かく、「最敬礼」「普通礼」「会釈」と3つに分けることができます。
もっとも格式が高く、目上の人に対して行うのが「最敬礼」です。背筋を伸ばしてひざやかかとをつけ、姿勢をまっすぐにして、身体を前に倒すようにしていきます。角度で言うと45度くらい、腰から身体を折り曲げるようにします。
「普通礼」は、30度くらいの角度で、「会釈」は軽く15度くらいの角度で上半身を傾けるのがいいですね。学校では儀式の時は「最敬礼」、全校朝会などの時は「普通礼」、学校を訪れたお客様に廊下でお目にかかった時などは「会釈」と考えておくといいですね。

事典と辞典

「事典」は、ことがらについての知識を丁寧に解説しているものです。「辞典」は、言葉の意味や、その使い方を説明しているものです。同じ読み方なので、分かりやすく区別したいときに、事典を「ことてん」、辞書を「ことばてん」と呼んだりします。「辞」は「ことば」と言う意味だからです。
図書館には、「事典」の仲間として、「百科事典」「歴史事典」「科学事典」などがありますね。また、「辞典」には「国語辞典」「漢和辞典」「英和辞典」などがありますね。
中高生になれば、昔の言葉の意味を説明する「古語辞典」、日本語の言葉を英単語で言い換える「和英辞典」、英単語の意味を英語で説明している「英々辞典」などを使うようになります。

天国と極楽

「天国」はキリスト教の死後の世界を表し、「極楽」は、仏教で信じられている死後の世界です。天国は、キリスト教を信じている人や良い行いをした人が行ける天の上の国だとされています。一方、極楽は厳しい修行を乗り越え悟りを開いた人しか行けないとか、良い行いを重ねた人なら誰でも行ける等、宗派でさまざまな考え方があります。自分の家で信仰している宗教宗派があるなら、その考え方を知ることも良いかもしれませんね。

幽霊とおばけ

この2つは、同じ意味で使われることが多いですね。
「幽霊」は人間の魂が肉体を離れ、この世にとどまっているものとされます。
そして「おばけ」は、「別の姿に変わった何か」を意味します。霊魂の姿に変わった人間はもちろん、ばけ猫やばけ狐などの特殊な霊力を持つようになった動物、からかさおばけや一反木綿のように古道具に魂がこもり、姿を変えて悪さをするようになった物など、昔から信じられてきた「妖怪」も意味します。

自首と出頭

刑事ドラマなどで、よく「自首しろ」とか「出頭した」という言葉を聞きます。
これってどう違うのでしょう。「私がやりましたと自首した」。「私が犯人ですと出頭した」。両方使うので、ややこしいです。
実は「出頭」は、犯罪などの事件以外でも、役所や警察などに自分から出かけるときに使われる言葉なのです。それで、ごっちゃになりやすいのだと思います。
しかし事件の場合は、「自首」と「出頭」は明らかな違いがあります。
「自首」は、まだ犯人が誰か分かっていないときに、犯人が自分から「私がやりました」と警察に名乗り出ることです。
「出頭」は、すでに犯人が誰か分かった後で、逮捕される前に警察に名乗り出ることです。
「情状酌量」といって、犯人がどれだけ反省しているか判断する材料として、自首したり出頭したりしたことは、裁判の参考にされるそうです。

以上、今回10の違いを紹介しましたが、日常的には、説明に難しい言葉がたくさんあります。でも、心に余裕がないと、言葉の違いにさえ気付かないこともあります。ゆとりをもって言葉に敏感でいたいですね。多くの言葉の意味を知っていると児童との会話も膨らんできますよ。


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【参考図書】
博学こだわり倶楽部『この言葉の違いを言えますか?』(河出書房新社)
日本こだわり雑学倶楽部『この言葉の「違い」、説明できますか?』(講談社)

イラスト/したらみ


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。

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