• 勉強マーク小学館ロゴ
  • facebookアイコン
  • twitterアイコン

めざすは「道徳教育の質的転換」─教科化の経緯とねらいを振り返る

2019/11/4

2018年度、小学校での教科化がスタートした「特別の教科 道徳」。教科化により道徳の授業と評価はどのように変わったのか? 1年半経った今、見えてきた成果と課題とは? 「考え、議論する道徳」のあるべき姿に迫ります!

道徳
イラストAC

教科化により検定教科書と記述式の評価を導入

「特別の教科 道徳」がスタートして小学校では約1年半、中学校ではおよそ半年が経過しました。従来の「道徳の時間」からの主な変更点としては、

①教科外の活動から、「特別の教科」となったこと
②検定教科書が使用されるようになったこと
③記述式の評価を行うようになったこと

が挙げられます。年間35時間(小1は34時間)という授業時数はこれまでどおりですが、他教科の学習に振り替えたり、行事の練習の時間に充てられたりすることも、教科化によりできなくなったのも変化のひとつです。

今回の道徳の教科化は、2011年に発生した滋賀県大津市での中学生いじめ自殺事件をひとつの契機として実現したという背景があります。深刻化・複雑化するいじめ問題に対して道徳教育の充実が叫ばれるようになり、教育再生実行会議、中央教育審議会等での議論を経て、学校教育法施行規則および学習指導要領が一部改正。その後、教科書の検定と各自治体による採択が行われ、2018年度より、まずは小学校で「特別の教科 道徳」がスタートしました。

「道徳の教科化」の経緯 表

道徳教育の質的転換で「考え、議論する道徳」へ

いじめ問題への対応のほか、道徳の教科化の背景には、従来の道徳授業の形骸化という問題もありました。教科ではないため、ともすると軽んじられがちで、教科書もないために教師の力量により授業の質に差が出やすく、それゆえ単に読み物を読むだけに終始したり、わかりきったことを教えるだけの授業となってしまうなど、道徳授業の質への危機感も強く叫ばれていたのです。

そこで今回の教科化にあたっては、「道徳教育の質的転換」が大きな課題となり、文部科学省はこれを「『考え、議論する道徳』への転換」と位置づけました。道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議による「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」では、その具体的な指導方法として、①読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習、②問題解決的な学習、③道徳的行為に関する体験的な学習、の3つを提示して道徳授業の質の向上を求めています。

「道徳科」における質の高い多様な指導方法

○道徳教育の質的転換のためには、質の高い多様な指導方法の確立が求められており、本専門家会議においては多様な指導方法の実践的な取組についてヒアリングを行った。そこで出された道徳科の質の高い多様な指導方法は「別紙1」に示すとおりであり、それぞれの特長は以下のとおりである。

①読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習
教材の登場人物の判断や心情を自分との関わりにおいて多面的・ 多角的に考えることを通し、道徳的諸価値の理解を深めることについて効果的な指導方法であり、登場人物に自分を投影して、その判断や心情を考えることにより、道徳的価値の理解を深めることができる。

②問題解決的な学習
児童生徒一人一人が生きる上で出会う様々な道徳的諸価値に関わる問題や課題を主体的に解決するために必要な資質・能力を養うことができる。問題場面について児童生徒自身の考えの根拠を問う発問や、問題場面を実際の自分に当てはめて考えてみることを促す発問、問題場面における道徳的価値の意味を考えさせる発問などによって、道徳的価値を実現するための資質・能力を養うことができる。

③道徳的行為に関する体験的な学習
役割演技などの体験的な学習を通して、実際の問題場面を実感を伴って理解することを通して、様々な問題や課題を主体的に解決するために必要な資質・能力を養うことができる。問題場面を実際に体験してみること、また、それに対して自分ならどういう行動をとるかという問題解決のための役割演技を通して、道徳的価値を実現するための資質・能力を養うことができる。

○このような質の高い多様な指導を展開するに当たっては、道徳科の授業としての「質」の確保・向上の観点から、道徳科の特質を踏まえるとともに、発達の段階を考慮することが重要である。

※文部科学省「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」(2016 年 7 月)より

教科化にあたって検定教科書が導入されることにはなりましたが、教科化のねらいが「『考え、議論する道徳』への転換」である以上、教科書に書かれている内容をそのまま教えればよい、というものではないことは明白です。教科としての道徳の授業づくりでは、教科書にある読み物・資料等を素材に、いかに子どもたちの主体的な思考や発言、交流を生み出していくかが問われることになります。そして、その学習を通じて子どもがどのような気づきを得たのか、どう変容していったのかを見取り、適切に評価することも求められます。

構成・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2019年11月号より

★小学館『みんなの教育技術』Webサイトでは小学校の先生に役立つ情報を毎日発信中★ぜひお気に入り登録して最新記事をチェックしてください!
↓↓↓
『みんなの教育技術』トップへ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

関連する記事

『先生の教養』の記事一覧

学校のガバナンス【教育用語】

教育分野で度々耳にするようになった新しい用語を、深く掘り下げて解説します。今回は「学校のガバナンス」を取りあげます。

2020/3/30

先生前夜、私たちの本音【令和2年度新任教師のリアルドキュメント】

令和2年度、念願叶って小学校教師の道を歩き始めることになった優花と美咲(仮名)。

これは、ともに1997年生まれ、学生時代からとても仲がいい彼女たちが語る…

2020/3/29

2019年11月学級イラストダウロード
学級通信に!教室掲示に!学級イラストダウンロード 教育技術小五小六4/5月号読者限定

学級通信や掲示物を飾る「教育技術小五・小六」の読者限定でオリジナルイラストをダウンロードできます。学級活動に限りご自由にお使いいただけます。

【臨時休校】1日1回の名文音読で教養人!<ダウンロードOK>

休校中の宿題も全て終わってしまい、ヒマで仕方がないという子もいるかもしれません。そんな子におすすめなのが、古典を中心とした「音読」。あえて学年のレベルに「合わせ…

【臨時休校 家での過ごし方提案】手づくりチーズで結合と分離を学習してみよう

臨時休校により、小学生保護者からは「給食がなくて栄養状態が心配」「子どもに学習をさせるのが大変」といった声も…。
そこで、一石二鳥なのは、料理しながら学習する…

【臨時休校 家での過ごし方提案】「マジックジュース」で科学しよう!

臨時休校により、小学生保護者からは「子どもとどう過ごしたらいいかわからない」といった声も聞かれます。そんな時は、親子でキッチンに立つことを提案してみるのはいかが…

【臨時休校 家での過ごし方提案】かんたんラテアートで科学しよう!

臨時休校により、小学生保護者からは「給食がなくなって栄養状態が心配」「子どもに学習をさせられない」といった声も。
そこで、一石二鳥なのは、料理しながら学習する…

新学習指導要領:現場教師の6つのモヤモヤを元視学官に聞いてみたら…

2020年4月から全面実施の「新学習指導要領」。現場の先生方は、今、どんなことに不安を感じ、疑問をもっているのでしょうか? 座談会形式で洗い出された先生方の率直…

プリント配布OK!子どもと楽しむ「ひな祭り」のぬり絵

3月はひな祭りをテーマにしたぬり絵です。 ぬり絵があると、ちょっとした隙間時間も私語の時間にせずにすみますし、クラス全体の空気が落ち着いてきます。掲示して教室に…

男性教師必見!卒業式入学式のスーツ選びの正解をスタイリストが伝授

男性教師がスーツをまとうシーン――。それはセレモニーがある日など「ここぞ!」という場面であることが多いですよね。だからこそ、かっこよく見せてくれる一着をもってい…

もっと見る