めざすは「道徳教育の質的転換」─教科化の経緯とねらいを振り返る

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2018年度、小学校での教科化がスタートした「特別の教科 道徳」。教科化により道徳の授業と評価はどのように変わったのか? 1年半経った今、見えてきた成果と課題とは? 「考え、議論する道徳」のあるべき姿に迫ります!

道徳
イラストAC

教科化により検定教科書と記述式の評価を導入

「特別の教科 道徳」がスタートして小学校では約1年半、中学校ではおよそ半年が経過しました。従来の「道徳の時間」からの主な変更点としては、

①教科外の活動から、「特別の教科」となったこと
②検定教科書が使用されるようになったこと
③記述式の評価を行うようになったこと

が挙げられます。年間35時間(小1は34時間)という授業時数はこれまでどおりですが、他教科の学習に振り替えたり、行事の練習の時間に充てられたりすることも、教科化によりできなくなったのも変化のひとつです。

今回の道徳の教科化は、2011年に発生した滋賀県大津市での中学生いじめ自殺事件をひとつの契機として実現したという背景があります。深刻化・複雑化するいじめ問題に対して道徳教育の充実が叫ばれるようになり、教育再生実行会議、中央教育審議会等での議論を経て、学校教育法施行規則および学習指導要領が一部改正。その後、教科書の検定と各自治体による採択が行われ、2018年度より、まずは小学校で「特別の教科 道徳」がスタートしました。

「道徳の教科化」の経緯 表

道徳教育の質的転換で「考え、議論する道徳」へ

いじめ問題への対応のほか、道徳の教科化の背景には、従来の道徳授業の形骸化という問題もありました。教科ではないため、ともすると軽んじられがちで、教科書もないために教師の力量により授業の質に差が出やすく、それゆえ単に読み物を読むだけに終始したり、わかりきったことを教えるだけの授業となってしまうなど、道徳授業の質への危機感も強く叫ばれていたのです。

そこで今回の教科化にあたっては、「道徳教育の質的転換」が大きな課題となり、文部科学省はこれを「『考え、議論する道徳』への転換」と位置づけました。道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議による「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」では、その具体的な指導方法として、①読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習、②問題解決的な学習、③道徳的行為に関する体験的な学習、の3つを提示して道徳授業の質の向上を求めています。

「道徳科」における質の高い多様な指導方法

○道徳教育の質的転換のためには、質の高い多様な指導方法の確立が求められており、本専門家会議においては多様な指導方法の実践的な取組についてヒアリングを行った。そこで出された道徳科の質の高い多様な指導方法は「別紙1」に示すとおりであり、それぞれの特長は以下のとおりである。

①読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習
教材の登場人物の判断や心情を自分との関わりにおいて多面的・ 多角的に考えることを通し、道徳的諸価値の理解を深めることについて効果的な指導方法であり、登場人物に自分を投影して、その判断や心情を考えることにより、道徳的価値の理解を深めることができる。

②問題解決的な学習
児童生徒一人一人が生きる上で出会う様々な道徳的諸価値に関わる問題や課題を主体的に解決するために必要な資質・能力を養うことができる。問題場面について児童生徒自身の考えの根拠を問う発問や、問題場面を実際の自分に当てはめて考えてみることを促す発問、問題場面における道徳的価値の意味を考えさせる発問などによって、道徳的価値を実現するための資質・能力を養うことができる。

③道徳的行為に関する体験的な学習
役割演技などの体験的な学習を通して、実際の問題場面を実感を伴って理解することを通して、様々な問題や課題を主体的に解決するために必要な資質・能力を養うことができる。問題場面を実際に体験してみること、また、それに対して自分ならどういう行動をとるかという問題解決のための役割演技を通して、道徳的価値を実現するための資質・能力を養うことができる。

○このような質の高い多様な指導を展開するに当たっては、道徳科の授業としての「質」の確保・向上の観点から、道徳科の特質を踏まえるとともに、発達の段階を考慮することが重要である。

※文部科学省「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」(2016 年 7 月)より

教科化にあたって検定教科書が導入されることにはなりましたが、教科化のねらいが「『考え、議論する道徳』への転換」である以上、教科書に書かれている内容をそのまま教えればよい、というものではないことは明白です。教科としての道徳の授業づくりでは、教科書にある読み物・資料等を素材に、いかに子どもたちの主体的な思考や発言、交流を生み出していくかが問われることになります。そして、その学習を通じて子どもがどのような気づきを得たのか、どう変容していったのかを見取り、適切に評価することも求められます。

構成・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2019年11月号より

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