失敗しない保護者面談~保護者の心をつかみ、問題の早期解決をはかるためのキーフレーズ~

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

不登校や登校しぶり、発達障害の相談、生徒指導上の問題などで、保護者さんと面談することがあります。単発または短期間のケースや、長期にわたって対応や対策をしていくケースもあるでしょう。
ただ、どのようなケースにおいても、保護者さんは皆、深刻な心持ちであることに違いはありません。「学校側から何を言われるのか」と、不安に思っておられる方も多いでしょう。このような状況で学校側が対応を間違うと、関係性が悪くなる可能性が高いです。そこで今回は、保護者面談の際に、相手の心をつかみ、信頼関係を構築しやすくするフレーズ例を紹介したいと思います。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 基本姿勢は「学校と保護者のチーム」


例えば対象の児童が問題行動を起こしたり、何らかの事案の加害者になったりした場合など、つい、その問題を前面に出し、叱責するような対応をしがちです。しかしこれは、保護者からの反発を受けたり、あるいは保護者の心に壁を作らせたりするなど、良いことはありません。まず学校を信頼してもらえるような姿勢をもつこと…つまり、学校と保護者のチームで児童を育てる、という共同スタンスの構築が重要です。

2 学校に来ていただくためのアプローチ

保護者に学校に来てもらうときは、

保護者の都合に合わせて日時を調整する
面談の目的や、方向性をはっきり伝え、事前に心構えしてもらう
面談の必要性、重要性、緊急度を理解してもらう

ということが大切です。
面談を依頼する電話口での言葉は、ケースによって異なりますので、以下の例を参考にしてみてください。

① 不登校傾向のある児童について

「○○さんのことをとても心配しています」
「○○さんが学校に足が向かなくなっていることで、お母さんも心配なさっておられると思います」
「○○さんの今の状態を教えていただき、一緒にこれからのことを考えたいです」
「○○さんが学校に来てほしいと願っています。どうすればいいか話し合いをしたいです」

不登校傾向のある児童の場合、保護者さんは不安やあせりを感じています。その心に寄り添うような言葉がけが必要です。

② 発達障がいの児童について 

「○○さんが困っていることを教えてほしいです」
「いつも○○さんの子育てをがんばっていらっしゃいますね。○○さんの学習や生活で困難なことを抱えないように、どんな支援ができるか、学校と家庭での役割などを考えたいです」
「○○さんの今の行動について解決するために、ご両親と一緒に考えていきたいです」

発達障がいの児童に関しては、保護者は子育てを批判されるのではないかという不安をもっているものです。決してそんなことではないということを示し、ねぎらいの言葉をかけることが必要です。

③ いじめや暴力などの問題行動を起こした児童について

「○○さんの行動を、とても心配しています」
「○○さんの行動の理由について知りたいので、お話を伺いたいです」
「○○さんを良い方向に育てるにはどうすればいいか、お父さんお母さんと一緒に考えたいです」

問題行動の事実を咎めるような口調になることを抑え、保護者の話をじっくり聴き、児童理解を深めた上で解決策を共に考えよう、というスタンスで来校を促していくことが必要です。

3 心の垣根を取り払うこと

よく、「か・感謝」「き・共感」「ね・労い」の気持ちで、相手の心の垣根を取り払おう、なんてことを言います。
問題の早期解決には、保護者の緊張を解きほぐし、心理的な障壁を取り払うことが効果的です。
業務的に必要な内容の発言だけではなく、相手の人間的な感情に訴えかけるような、心を解きほぐすアイスブレイクの言葉をたくさん盛り込んでいきましょう。

①「親近感」を抱きやすくする

「今日は天気が良くて、気持ちのいい一日でしたね」
「わたしも同じ小学生の子がいて毎日たいへんなんです。ご苦労されていること、よく分かります」
「○○でお仕事をされているそうですね。よくその前を通ります」

まず、天気の話題のような雑談から入ってみたり、自分のプライベートな姿を少し見せたりすることで、話のしやすい、親近感のある相手だと思ってもらうことができます。

②「敬意」と「感謝」を示す

「今日はお忙しい中、ご足労いただいて本当に感謝しています」
「わざわざお呼びだてして恐縮です」
「お時間をさいていただき、ありがとうございます。今日は○○さんのことについて、じっくりお話を伺わせてください」

どのシーンでもそうですが、相手をリスペクトするということが大切です。心からの感謝の気持ちを言葉に表していきたいです。

③「ねぎらい」の気持ちを表す

「今まで子育てをがんばってこられましたね。頭が下がります」
「そうなんですか。子育てについて勉強になります。ありがとうございます」
「仕事との両立はむずかしいのに、努力されてきたのですね」

保護者への「ねぎらい」の気持ちを出していきます。すべての保護者は、それぞれのやり方で子育てを頑張っている、という思いをもって向き合いましょう。

④ 保護者の話を遮らず、機会をとらえて「問いかけ」をする

「ああ、そうなんですか。よく分かります」
「そういった関わりをしてくださっているのですね」
「それで、□□のときはどうなさるんですか?」

学校側から強く指導するということではなく、当該児童をどういう方向で指導していくか、保護者さんから意見を伺うようにしていきたいです。

⑤ 「共感」を示し、方向性を揃えていく提案をする

「それでは、学校では◇◇◇ということをやってみます。ご家庭では◆◆◆ということをやっていただくということではどうでしょうか」
「そうなんですか。おっしゃるとおりですね。それは心配です。では、□□□ということをやってみましょうよ」
「○○さんの健やかな成長をこれからも一緒に願っていきましょう」

「共感」を基本的スタンスにして、学校と保護者さんと同じ方向であることを示していきたいです。

⑥ 最後にもう一度「感謝」を示して「あたたかい雰囲気」で終わる

「今日はお話できて、本当によかったです」
「○○さんのことがよく分かりました。一緒に応援していきましょう」
「お母さんの子育てへの考え方やご苦労がよく分かる貴重な時間でした。今後ともお話ししていきましょう」

感謝の気持ちを最後に示すことによって、信頼関係の維持に繋がります。

4 立場の違いを乗り越えよう

以上のような対応をしていくと、

このせんせいは信頼できる。子どものことを理解している
提案してもらったことをやってみたい
このせんせいは味方だ
このせんせいと一緒にやっていきたい

といった意識をもってもらうことに繋がります。

ある新任のせんせいが、保護者と面談をしました。そのとき、
「せんせいは若いし結婚もしていないし、子どももいないから、わたしの気持ちが分からないんですよ!」
というような言葉をぶつけられ、かなり落ち込んでいました。
わたしは、
「開き直りなさいよ。『おっしゃるとおりです。ですから、後々のために子育ての難しさを教えてください。そのことを参考にして、学校ではどんなことができるか考えて全力で取り組みます』と答えてみたら」
とアドバイスしました。
そして、その後このアドバイスどおりに実行し、保護者と親しくなることができたと喜んでいました。

保護者の立場、教職者の立場と、立っているところは違えども、児童の健やかな成長を目指していることに違いはありません。その本質を見失わずに保護者と向き合っていきましょう。

☆次の記事もぜひご覧ください

【参考図書】
不登校予備軍の子どもによりそう対応・支援ガイド 宮内英里子/学事出版

イラスト/フジコ


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。



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