小1国語「いいこと いっぱい、 一年生」指導アイデア
教材名:「いいこと いっぱい、 一年生」(光村図書 一年下)
指導事項:〔知識及び技能〕(1)ア〔思考力、判断力、表現力等〕B(1)イ
言語活動:B(2)イ
執筆/茨城県公立小学校教諭・松下安貴子
編集委員/前・文部科学省初等中等教育局教科調査官・菊池英慈、茨城県公立小学校校長・橋本浩志
目次
単元で付けたい資質・能力
①身に付けたい資質・能力
本単元は、もうすぐ二年生になるという一年生が、1年間をふり返って自分の成長を実感できる「書くこと」の単元です。
本単元では、この1年間の国語の授業で身に付けてきた、経験したことから題材などを探す「取材する力」を基に、自分の考えが明確に相手に伝わるように内容のまとまりごとに順序を組み立てていく力を付けていきます。
同時に、友達との交流を通して書いた文章を読み合い、成長の実感や達成感を味わえるようにしましょう。
〔知識及び技能〕では、「言葉には、事物の内容を表す働きや、経験したことを伝える働きがあることに気付くこと」を、〔思考力、判断力、表現力等〕においては、「自分の思いや考えが明確になるように、事柄の順序に沿って簡単な構成を考えること」を位置付けます。
② 言語活動とその特徴
本単元では、書くことに必要な事柄を自分の経験のなかから選び、「思い出アルバム」をつくる活動を設定します。小学校に入学してからこれまでに積み重ねてきた経験のなかから、書きたい事柄を選択し、内容や時間の順序などを並べ替えながら構成を考えて書くことができるでしょう。
その際、伝えたいことを明確に伝えるためには、順序を考えて書くことが大切であることに気付くことができるようにします。
さらに、思い出アルバムをつくる活動を通して、「こんなにできるようになった」という成長を実感したり、アルバムの感想を伝え合ったりする活動を通して、自分の表現のよいところを見付け、ともに過ごしてきた友達への理解を深めていきます。
単元の展開(10時間扱い)
主な学習活動
第一次(1時)
①写真や絵を手がかりに、1年間をふり返る。
→アイデア1 主体的な学び
【学習課題】「いいこといっぱい おもい出アルバム」を つくろう。
②教科書を読み、「おもい出アルバムをつくる」という学習の見通しをもつ。
第二次(2~7時)
③グループで思い出を語り合い、書きたいことを三つ選ぶ。
④自分が選んだ出来事についてくわしく思い出し、「おもい出メモ」に書き出す。
→アイデア2 対話的な学び
⑤「おもい出メモ」を基に、どの順序で書くかを決め、文章を書く。
→アイデア3 深い学び
⑥書いた文章を自分で読み直したり、友達と読み合ったりして、必要に応じて書き直す。
⑦絵や写真も入れて、体験を報告する文章を完成させ、アルバムとしてまとめる。
第三次(8~10時)
⑧友達とアルバムを読み合い、感想を交流する。
⑨感想を読んで思ったことを伝え合い、学習のふり返りをする。
⑩1年間の学習をふり返り、「ひょうしょうじょう」を書く。
アイデア1 写真を見ながら1年間を思い出す

1年間の学校生活の記憶を想起するために、今までの活動の写真を見ながら、この1年にあったいろいろなことを思い起こせるようにします。
一人で1年をふり返るよりも、クラス全体で思い出をふり返っていくことで、そのときの様子や気持ち、聞こえてきた音など、より多くの思い出を互いに思い起こすことができるでしょう。
子供のつぶやきをよく聞きながら、「心の中がどんな感じだったの?」「ドキドキしていたのだね」などと声をかけたり、「ぼくは胸のほうからドックンと聞こえたよ」などの子供の発言に対して、「ドキドキとドックンではどう違うかな」などと返答したりし、クラス全体で話をしながら、この1年間を言葉とともに思い出すとよいでしょう。
そのやりとりを通して、子供が自覚的に新しい言葉に着目したり言葉の意味を捉えたりするようにしましょう。

みんなの1年間の生活の様子を今から映しますね!
わあ、入学式の写真だ。緊張してたのを思い出すな。
心の中がドキドキしてたよ。今でもよく覚えているよ。
アイデア2 グループで思い出を語り合い、付箋を活用して思い出メモを書く

絵日記や写真などを見ながら、少人数グループでどんなことがあったかを思い出します。思い出すための視点を次のように子供たちに示します。
- うれしかった こと
- たのしかった こと
- おどろいた こと
- がんばった こと
- できるように なった こと
- あたらしく しった こと
その後、書きたいことを整理して文章を書くことができるように、色別の付箋に思い出メモを書いていきます。
【緑色】題名
【ピンク】どんなよいことがあったか
【水色】くわしく思い出したこと
【黄色】思ったこと
▼色別の付箋に書いた思い出メモ

このように、伝えたいことを付箋に1文ずつ書くことで、文章を書くことが苦手な子供も楽しく取り組むことができるでしょう。また、伝えたいことが整理でき、全体で4〜5文程度の文章が書けるようになります。
そして、この思い出メモを基に、次時でどの順序で書くかを決めていきます。
アイデア3 友達と思い出メモを読み合い、交流し、書く順序を決める

アイディア②で付箋に書いた思い出メモを基に、友達と交流します。この交流を通して、自分がどの順序で書きたいかを決めていきます。
交流の始めに、教師がモデルとして数人の子供と交流活動をやって見せましょう。交流活動の手順は次のようになります。
①4人1組のグループをつくる。
②ペアで互いの思い出メモを交換して読み合う。
③読んだ相手に感想を伝えたり、質問したりする。
④グループ内でペアを交換し、ほかの友達と交流する。
⑤自分の思い出メモの並び順を見直す。

遠足の日の朝、わくわくが止まらなかったことは、朝のことだから、はじめに書いたらどう?
お弁当はイルカショーを見たあとに食べたよね。
そう言えば、そうだったね。やっぱり、イルカショーのことを先に書こうかな。
それはいい考えだね。そうしよう。
文章の構成を一人で考えるより、友達から感想を聞いたり質問をされたりすることで、どの順序で書いたらよいかを考えやすくなり、自分が書きたい順序を決めることができるでしょう。
交流の様子を見ながら、やりとりの上手なグループを見付けましょう。上手なやりとりを子供と確認する時間をとることで、交流のしかたを深めていくことができるでしょう。
イラスト/川野郁代 横井智美
『教育技術 小一小二』2021年3月号より