小1道徳「これならできる」指導アイデア

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執筆/北海道公立小学校教諭・根岸良久
監修/北海道公立小学校校長・荒井亮子、文部科学省教科調査官・浅見哲也

授業を展開するにあたり

使用教材:「これならできる」(光村図書)

一年生の子供たちも、新型コロナウイルスによる「新しい学校生活様式」のなかで、自分たちなりの学校生活のリズムをつくり上げることができてきました。そのなかで家族の支えに対して感謝の気持ちをもったり、自分のできることを考えたりする姿も見られるようになってきています。

今回の授業は、そんな子供たちの思いを踏まえて、家族のために自分ができることは何か、そのときに家族はどう思うかについて考えを深めていけるように授業を構成しました。

展開の概略

「まさえ」の行動や考えと自分の経験とを結び付けて考えられるようにする

「これならできる」は、まさえが母のために祖母と夕食を準備する場面を通して、自分自身のできる範囲で家族のために役立つことは何かを考える教材です。全部一人でできれば問題ありませんが、まだまだ一年生にできることは限られています。それでも、「何かをやってあげたい」「自分にできることを増やしたい」と考えているのが現状です。

導入では、「お手伝いをしたことがあるか」を問います。そしてお手伝いをしたことがある子供に「どんなことをしたのか」を尋ねます。一年生の子供たちは嬉しそうに、そして自慢げにたくさんの経験を話すでしょう。そのときの家族の反応や、他の友達の話を聞くことで「自分もやりたい」「できることを増やしたい」と、お手伝いに対する自分の考えを見つめながら、家族のために何かをしたいという気持ちを高めることができるのです。

このように家族への思いや考えを想起させたうえで教材文を読み聞かせることで、主人公・まさえの行動の理由や気持ち、思いを自分の経験と結び付けながら考えていくことができるようにしました。

まさえの気持ちの高まりに共感することで、家族のためにできることの考えを深める

まさえと自分を十分に結び付けて考えることができると、まさえに対する母の言葉は、自分たちへの言葉のように感じられます。母の表情やお礼、賞賛の言葉から、家族のために何かをやり遂げることのよさを実感し、考えることができるのです。

「他にも自分でできることを増やしたい」と考えたまさえに大いに共感し、「自分だったら」という視点をもち、ふり返る子供たちの姿を引き出すことができるようにしました。

▼アンケート

アンケート

▼ワークシート

ワークシート

アンケートやワークシートのPDFはこちらよりダウンロードできます

実際の授業展開

主題名
これならできる

ねらい
家庭のなかで自分にできることを探して取り組むまさえの姿を通して、家族のために何かできたときの気持ちについて考えさせ、進んで家の手伝いなどをして家族の役に立とうとする実践意欲と態度を育てる。

内容項目
C 家族愛、家庭生活の充実

指導の概略(板書計画例)

指導の概略

導入

①実態を確認する。

  • お手伝いの経験を問い、具体的な内容を聞き合う。

展開1

②自分を見つめる。

  • お手伝いをしたことがないと答えた子も「それならやっている」と思えるような、全員に経験があることを引き出す。

展開2

③教材を読み聞かせる。

  • 登場人物のお手伝いについてどう思うかという視点で聞く。

展開3

④まさえがどんな心情であったかを考える。

  • 「母のため」など、家族を思うような経験があるかどうかを問い返していく。母の気持ちについて考える子も取り上げたい。取り上げたうえで、「その気持ちがまさえにどうつながるのか」を引き出していく。

展開4

⑤まさえの「ほかにもじぶんでできることをふやしたい」という思いについて考え、ワークシートに記述する。

  • 「例えば、まさえはどんなことを増やすのか」と投げかけ、「自分がまさえなら……」と、具体的にお手伝いを考えていく。記述を紹介しながら、「どうしてそのお手伝いなのか」と、全体に問い返していく。

終末

⑥ふり返り。

  • 自分の家族のことを考えながら、今後の自分の姿を思い浮かべる。

ここがアクティブ!授業展開の補足説明

①子供の言葉を生かして

一年生はたくさんの言葉をもっています。大人には分からなくても、一年生同士では共感し合うことができるのです。ある子の「お母さんが喜ぶと、ぴかぴかってなるの」という発言に、「分かるよ」「同じだな」という声が出てきました。

教師が教師の言葉で勝手に置き換えることをせず、一年生の子供たちにどういうことかを問うのです。そうすることで、さらに新しい言葉で説明し始めます。ほかの子供が「私のときは……」と、自分の経験や考えを次々と表出する姿を見ることができました。

教師がなんでも解説してしまうと、子供たちは常に教師に正解を求めてしまいます。一緒に考え、一緒に悩み、子供たちの考えを引き出すことで、子供たち同士の主体的な学びへとつながると考えています。

②子供の考えを位置付け、価値付ける

子供たち一人ひとりの考えが明確になるように、ネームプレートを活用しました。発表したキーワードにネームプレートを貼ります。なかなか声に出して自分の考えを表出できない子には、「同じ」や「似ている」を見付けてもらい、そこにネームプレートを貼りました。

だれかが発表しているときの表情も見逃さないようにし、「うなずき」「笑顔」「首を傾げる」の理由を一言でも言えるようにして関わることで、子供自身も、自分の考えが明確になっていくようにします。

授業後の考えを聞くことで、さらなる自分の考えの見つめ直しを

授業で感じたことのふり返りを家庭に持ち帰り、家族に見てもらうようにしています。コメントをもらったり、家族の考えを聞いたりすることで、今一度、自分自身の考え方を見つめ直す機会を設けるのです。自分の考え、学級の友達の考え、家族の考え、教材の登場人物の考えに触れることで、さらなる自分の考えの構築につながっていきます。

そのことで、他者意識が芽生えてきたり、責任感が増したりと、多面的・多角的に考えることを継続する姿が見られるようになっていきました。後日、参観授業や懇談会などで保護者の方とお会いしたときに、「お手伝い」をするしないだけではなく、家族の役割や子供の思いについて交流することができ、家庭との連携も深めることにつながりました。

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

道徳科の授業の目標は、道徳性の諸様相である道徳的な判断力・心情・実践意欲と態度を育てることであり、これらはいずれも内面的資質です。道徳的態度と言えども、それは行為そのものを求めるものではありません。あくまでも行為への身構えと説明されています。

しかし、一年生の実践意欲と態度を育てる授業であれば、根岸先生のように、教材のよさを生かしながら、具体的にお手伝いできることを考えたほうが分かりやすいと言えます。また、お手伝いをすることを決意表明させているわけでもなく、自分が家庭生活のなかでできる具体的なお手伝いをイメージして増やしていく、ここに、道徳的態度を育てることをねらいとした道徳科の授業の意図があるわけです。

一人ひとりの子供が積極的に参加して考える、そんな授業をめざしながら、低学年のうちから表現力を鍛えています。子供の発言を教師がすべて汲み取ってあげようとするだけでなく、子供とともに考えようとする姿勢はとても大切なことです。

『教育技術 小一小二』2020年11月号より

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