小4理科「自然の中の水」指導アイデア
執筆/福岡県公立小学校教諭・入尾康太
編集委員/文部科学省教科調査官・鳴川哲也、福岡県公立小学校校長・田村嘉浩
目次
単元のねらい
湿った地面が乾くなどの水の行方に着目して、それらと気温とを関係付けて、自然界の水の様子を調べる。これらの活動を通して、自然界の水の行方について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元の流れ(総時数5時間)
一次 運動場の水たまりの行方(4時間)
① 運動場の水たまりの行方について話し合う。
② 水面からの水の蒸発を調べる。
③ 地面にしみ込んだ水の蒸発を調べる。
④ 空気中の水蒸気を調べる。
二次 自然界の水の行方(まとめ) (1時間)
① 自然界の水の行方(雲、雨、雪)や、洗濯物が乾く理由を、気温と関係付けながらまとめる。
単元デザインのポイント
根拠のある仮説を立てよう!
既習の内容や、窓ガラスの結露などの生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を立て、主体的に追究します。
見方 主として「実体的な見方」
空気中の「見えない水蒸気を見る」ために、実験方法を工夫し、結果を分かりやすく表現する。
考え方
気温や水の行方と、天気の様子や水の状態変化とを「関係付けて」考える。
導入のポイント
雨天時と数日後の晴天時の、2 枚の校庭の写真を比較します。

2つの写真を見比べて、気付いたことを出し合いましょう。
あんなに大きな水たまりがあったのに、全部なくなっているよ。 雨の日は、大きな池みたいだったのに・・・。
土だから、畑に水やりをしたときみたいに、どんどんしみ込むんじゃない?
晴れた日の写真に川みたいな跡があるでしょ。だから、どこかに流れていったと思います。
広い地面から、水蒸気になって、空気中に出ていったんじゃないかな?
えっ、水は100℃くらいで『ふっとう』して水蒸気になるんじゃなかった?
運動場は、絶対100℃にはならないよ。
学習問題
校庭の水は、どこへ行ったのだろうか。

あれ、朝礼台の上にあった水もなくなっています。
しみ込まない場所でも水がなくなったよ。もしかして、空気中に出ていったのかな?
下に流れて、地面にしみ込んだんじゃないかな。
→ 地面にしみ込んでいった(四年新単元)
→ 川のように流れた(五年生で学習)
→ 空気中に出ていった(本単元)
活動アイディア
第4学年「A(2)金属、水、空気と温度」の学習内容や、生活経験(水槽の水の量が時間の経過とともに減ることや窓ガラスの内側の曇りなど)を基に、根拠のある予想や仮説を発想することが大切です。
さらに、自分たちの予想を交流しながら実験の方法を考えていくと、より主体的・対話的で深い学びにつながります。
授業の展開例 (一次 第2時)
【前時のふり返り】
朝礼台の水がなくなったということは、水が空気中に出ていったということなのかな?
【問題】
水は、熱しなくても空気中に出ていくのだろうか。
【予想】
予想A
洗濯物が乾くように、空気中に出ていく。
予想B
熱しなければ、水は空気中に出ていかない。
【解決方法の立案】
ふたをした入れものと、していない入れものに同じ量の水を入れて、水の量を比較してみよう。
【観察、実験】

【結果】
ふたをしたほうは、ほとんど水が減らず、入れものの内側には水滴がたくさん付いていた。ふたをしなかったほうは、どんどん水が減った。
【考察】
ラップの内側に付いた水は、出ようとした水蒸気が、水に戻ったものだと思う。2つの容器の水の量の違いから、予想と同じで(違って)普通の温度でも、水は表面から空気中に出ていっていると考えられる。
【まとめ】
水は、熱しなくても、自然に空気中に出ていっている。
科学の言葉
水面などから水が水蒸気に変わって出ていくことを水の「蒸発」と言います。
指導のポイント
単元導入時の子供たちの気付きや、前単元「すがたをかえる水」の学習を掲示するなどして、根拠のある予想を発想できるようにしましょう。
予想A 空気中に出ていく。
根拠
・水槽の水が、時間が経つと減っている。
・水は、目に見えない水蒸気になると学習したから、今回もそうなると思う。
予想B 空気中には出ていかない。
根拠
・ 水は100℃ぐらいで水蒸気に変わると学習した。日光の熱で100℃にはならない。
※注意点
・ 天気のよい日に実験をする(湿度が高いと蒸発しにくい)。
・ 口の広いカップを使う(蒸発しやすい)。
【定量的な見方】
水の量が減ったことを捉える方法として、以下の2つが考えられます。
① 水面に印を入れ、体積の変化を見る。

② はかりで、重さの変化を見る。

※ ①の実験後に、②の実験を行うことで、ふたに付いた水滴が、蒸発して付いた水であることを捉えることができます。
ここが最大のポイント! !
「すがたをかえる水」で学習した「ふっとう」と、今回の実験で学習する「蒸発」の違いについて、区別できるようにします。そのために、温度との関係について理解を促すとともに、学習後に生活のなかで見られる「蒸発」をたくさん体験させたいですね。
一年間のふり返りをしよう!
四年生ふり返り ビンゴカード
四年生で学習した科学用語を使ってビンゴカードを作ることで、楽しみながら復習できます(科学用語辞典もお勧め)。

言葉の整理

イラスト/たなかあさこ、横井智美
『教育技術 小三小四』2020年3月号より