新学習指導要領の3観点をベースに通知表作成5つのポイント

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通知表関連記事まとめ:所見の書き方から「出さない」選択まで

新学習指導要領で示された目標や内容をベースにしながら、「保護者の望む通知表」作成のポイントについて考えていきます。

監修・執筆/神奈川県公立小学校校長・副島江理子

通知表作成

①新学習指導要領を踏まえて

通知表を考えるに当たって、その根本として学習評価についての基本的な考え方を捉えておくことが大切です。学習評価は、子供にどのような力が身に付いたのか、個々の学習の成果を的確に捉えて、まずは教師が日々の指導の改善を図り、子供自身も自らの学習をふり返って、次の学習への見通しをもつことができるようにするものです。

このような日々の積み重ねによって、子供に「身に付けたい力」が少しずつ定着していきます。

特に新しい学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を図ったうえで、各教科等における資質・能力を育成することが求められています。

通知表は、一定期間の子供の学習状況をふり返り、まとめて分かりやすく子供自身や保護者に示し、さらに次の学習への意欲を高め、めあてを明確にするためのものです。

新しい学習指導要領の目標や内容が資質・能力の三つの柱で示されたことを踏まえて、各教科等における観点別学習状況の評価の観点については「知識・技能「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で示されています。

②三、四年生の通知表の特徴

三、四年生は、中学年になったことで、子供がさらに意欲的になり、学校生活もますます活発になる時期です。係活動や当番活動などでも、自分たちでいろいろな活動を工夫するようになり、その中で人間関係も広がっていきます。

また学習面では、生活科から、社会科・理科という新しい教科学習が始まることが、最も大きな特徴です。また学習内容も、ほとんどの教科で「三、四年生の内容」へと発展します。低学年の学習から中学年の学習となり、新しいことを次々と学び、できることがどんどん増えていきます。

通知表特徴

三年生の最初の通知表は、そのような学校生活の充実や子供の成長の様子を、子供や保護者に分かりやすく伝えることが大切です。

子供が達成感を感じ、さらにこれからどんなことをがんばっていくのか、子供と保護者でめあてを明確にもてるような工夫ができるとよいでしょう。

四年生は新しくクラブ活動も始まります。通知表でもクラブ活動の様子にも触れると保護者も安心するでしょう。また四年生では、「三、四年生の内容」としてまとまっている教科学習の中で、三年生のときに比べて、どのように力が伸びてきたかを分かりやすく示すことが大切です。

③日々の評価の積み重ねを通知表に

そのような通知表を作成するためには、まず日々の評価がしっかりと行われていなくてはいけません。

評価とは信頼性、妥当性、客観性が重要です。所見は、それらに基づいた評価について、さらに子供の具体的な姿を伝えるものです。

まず、各教科で内容のまとまりごとの評価規準を基に、単元の評価計画を立てることが必要となります。評価計画に沿って、毎時間、「指導と評価の一体化」を積み上げていくことで、教師も子供も学習の実現状況を具体的につかむことができます。

単元の中でポイントとなる時間に、子供の様子を記録しておくと、評価資料として所見につながります。観点を意識して評価規準に基づいて評価し、記録することが大切です。

例 算数 「たし算とひき算の筆算」

【知識・技能】
3位数や4位数の加法、減法の計算が2位数などについての計算を基にしていることを理解し、計算が確実にできている。

【思考・判断・表現】
既習の計算を基に、3位数や4位数の加法や減法の筆算のしかたを考え、説明している。

【主体的に学習に取り組む態度】
3位数や4位数の加法や減法の計算のしかたを進んで考えたり、計算を活用したりしようとしている。

メモ例
○ A児 ○時間目 3けたのたし算のやり方を、2けたのたし算を基にして考えて発表することができた。
○ B児 ○時間目 3けたのひき算で、繰り下がりにつまずいたので、2けたのひき算を確認して繰り下がりのやり方を確認したところ、正しく計算できた。

メモは箇条書きでも構いません。こちらが支援したことも簡単に書き留めておきましょう。毎時間、全員は無理な話です。一人につき、一単元で評価の観点ごとに一つでもあれば、何よりも次時の指導につながりますし、所見を書く際に役立てることができます。

座席表や付箋、教科ごとの記録カードなど、学習によって使いやすいものを見付けましょう。また、教科や学習の内容によっては、学習過程を画像で残すことも大変有効です。作品などの成果物、ノートやワークシート、カード類も大切な評価資料となります。

④文章表現で気を付けたいこと

日頃からの記録を蓄積しておき、所見を書く際に役立てましょう。いくつかのメモをまとめて新しく書き直しても構いませんし、一つのメモをそのまま使ってもよいでしょう。

ただし、どちらにしても、子供や保護者にとって分かりやすく納得できる文章でなければいけません。

●具体例を挙げる

「学習に大変意欲的に取り組みました。」だけでも、学習への取り組み姿勢は分かりますが、「毎時間、学習の準備を確実に行い…」「友達の意見をしっかりと聞いて、それに対して質問や感想を進んで言うなど…」など、具体的な姿を書くことで、その子ならではの姿勢がよく伝わります。

●多様な評価語彙を使う

「豊かな」「独創的な」「きらりと光る」「味わいのある」「説得力のある」「目を引く」などなど。多様な表現を用いることで、その子らしさが際立ち、教師の子供を見つめる目の温かさが伝わります。

●どのような指導をしたかを書く

達成できていないことに関して、「○○が苦手なようです。」「○○を復習しておきましょう。」「○○ができるようになるとよいです。」という書きぶりでは、どのような指導をしてきたのか伝わりません。

文章題の意味を捉えることが苦手な様子だったので、一緒に文章を読み、絵や図で表しながら、題意を捉えて立式できるように指導を続けました。」など、具体的な手立てを書きましょう。そのことで、保護者も納得し、家庭での復習にもつながります。

文末に、「夏休みに復習をするとさらに身に付くと思います。」と書き加えてもよいでしょう。

●NGワードに気を付ける

「○○ができていません。」「○○が課題です。」と否定的な表現や、人権的に問題のある表現は使いません。課題は、前述のように指導の手立てを書き添えます。

また、教師だけが使うような身内の専門用語、備品や道具の商品名なども使わないように気を付けます。話し言葉と書き言葉の違いや正確な漢字を使うことにも気を付けましょう。

⑤通知表+αが大切

いくら気を配って書いても、書式の決まった通知表では伝えきれないことがたくさんあります。面談や子供に手渡すときに直接、言葉でも伝えることが大きな励みとなります。

通知表+αが大切

イラスト/畠山きょうこ

『教育技術 小三小四』2020年7/8月号より

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