ページの本文です

【高橋純教授が解説】子どもの思考はどこまで深まっているか? 思考力を見取る「思考深度フレームワーク」[前編]

連載
「デジタル×深い学び」の授業デザインReport

子どもが自分で学びを進める授業では、子どもの思考力・判断力・表現力等がどこまで深まっているのかを教師が見取り、次の指導につなげるのは簡単ではありません。東京学芸大学の高橋純教授が提唱する「思考深度フレームワーク」は、思考の深まりを「3つの形態」というシンプルな枠組みで捉えるものです。その考え方と、各形態の具体像を解説します。

この記事は、「デジタルを活用したこれからの学び」の授業づくりを支える理論を、識者がわかりやすく解説するシリーズ第5回目です。記事一覧はこちら

東京学芸大学教授
高橋 純

東京学芸大学教育学部教授、日本教育工学協会会長、東京都教育委員。教育工学、教育方法学、教育の情報化などが専門。著書に『学び続ける力と問題解決―シンキング・レンズ,シンキング・サイクル,そして探究へ』(東洋館出版社)などがある。

思考の深まりを「形態の転換」として捉える

1人1台端末を活用した授業が広がり、子どもの書く文章やレポートは充実してきました。生成AIを使えば、見た目に立派な文章はあっという間にできあがります。しかし、重要なのは完成した成果物だけではありません。文章やレポートを作成するその途中経過からも、子どもが実際にどこまで深く考えているのかを見取り、その質がさらに向上するように指導していく必要があります。これは多くの先生方にとって悩ましい課題だと思います。

思考力等の評価には、一般にルーブリックが使われます。ただ、単元ごとに作らなければならず、作成に関わっていない人には理解されにくいという課題があります。紙のテストなら、「60点」といえば先生も保護者も子ども自身も、どのくらいできているのかがわかります。思考力等についても、小学生でも簡単に共有して使える、そのような指標が必要だと考えました。

そこで、文章やレポート、プレゼンテーションなどの学習成果物やその途中経過に表れた思考の深さを、教科や単元を問わず捉える枠組みとして整理したのが「思考深度フレームワーク」です。理論・実践の両面にわたる先行研究の成果から最小限の共通要素を抽出し、実践への適用を通じて構築しました。思考深度の判断に不慣れな先生や小学生でも活用しやすく、日常的に子どもの思考深度を共有するための共通指標として機能することを意図して、あえて簡潔に設計しています。

基本的な考え方は、「思考形態の質的転換を捉える」ことです。横軸に低学年・中学年・高学年(中学校以上)、縦軸に第1形態・第2形態・第3形態を置いています。後述しますが、「レベル」や「段階」ではなく、あえて「形態」と呼んでいるのにも理由があります。

思考深度フレームワークの全体像。第1形態「事実の抽出・説明」、第2形態「見方・考え方を働かせて知識を接続」、第3形態「複数の見方・考え方を働かせて構造化・抽象化・概念化」の質的転換を捉える。

第1形態:事実をしっかり説明しているか

第1形態は、教科書や資料から学習課題に正対した事実を抽出し、説明することが該当します。小学校低学年から取り組むことのできる形態で、個別の知識を理解する基礎として重要です。

例えば、教科書や資料の必要な箇所を正確に抜き出してノートに書いたり、ワークシートの空欄に適切な事実を記入したりできている成果は、第1形態と捉えられます。ここで見取るのは、「線を引く」「書き出す」といった活動そのものではなく、その活動を通して成果や途中経過にどのような事実が抽出・説明されているかです。その土台として、用語や語彙の習得、表・図・グラフの読み取り、事実と意見の区別などの基礎的な指導も大切です。

注意したいのは、第1形態が低学年だけのものではないということです。事実を正確に抜き出し、意味を理解することは、高学年でも中学校でも変わらず重要です。図で第1形態の矢印が右端まで伸びているのは、そのためです。

第1形態の土台として、用語や語彙の習得といった基礎的な指導も重要となる。

  第2形態:知識をつないでいるか

この記事をシェアしよう!

フッターです。