小3理科「しぜんのかんさつをしよう」指導アイデア
執筆/福岡県公立小学校教諭・坂本修一
編集委員/文部科学省教科調査官・鳴川哲也、福岡県公立小学校校長・藤井創一
目次
単元のねらい
身の回りの生物について、探したり育てたりするなかで、それらの様子や周辺の環境、成長の過程や体のつくりに着目して、それらを比較しながら、生物と環境とのかかわり、昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりを調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や生物を愛護する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成する。

単元の流れ
(一次 総時数 5時間)
一次 生物の観察(5時間)
※生物には動物だけでなく植物も含む。昆虫も動物。
- 校庭にいる生物の観察(1時間)
- 生物の特徴の観察(3時間)
- まとめ(1時間)
〈準備物〉
・虫めがね ・図鑑 ・観察カード
★必要な観察技能の指導を確実に行う
虫めがねの使い方
- 絶対に太陽を見ない。
- 見たいものを動かす。
- 動かせない場合は、虫めがねを目に近付けたまま、見たいものに近付いたり遠ざかったりする。
観察カードのかき方

色・形・大きさ・見付けた場所を書く。
※上記に加えて、図鑑の調べ方も指導する。
単元デザインのポイント
身の回りにはどのような生物がいるのか観察を行うことで、自然への興味・関心を高めます。その後、見付けた生物の特徴を色・形・大きさ・見付けた場所などで比較する場を設定します。
見方 主として「共通性・多様性」
「共通性・多様性」というメガネで見てみよう!
共通性・多様性
… 形・色・大きさ・生息している場所の共通点や差異点。
考え方 生物の様子や周辺の環境、生物どうしの特徴を「比較して」考える。
これでばっちり!!
単元の導入はこうしよう!
ネイチャービンゴを用いた観察

【ネイチャービンゴのしかた】
ネイチャービンゴカードの枠の中に書かれている生物や、その特徴をもつ生物を探し、見付けたら丸を付けていく。
【事前準備】
ビンゴカードを準備しておく。事前に、校庭にいる生物や特徴を確認し、その生物名や特徴を記入しておく。
この導入で・・・
- 楽しく生物を観察し、意欲を高めることができる。
- 生物の特徴に着目した学習へと展開することができる。
活動アイディア
資質・能力の育成をめざして!!
身の回りに見られる生物の色、形、大きさなどを比べながら、特徴を調べましょう。さまざまな動植物を観察し比較する展開が一般的ですが、今回は1種類の生物に絞って観察します。2種類のアリの特徴を追究することで、主に共通点や差異点を基に、問題を見いだす力の育成につながります。
授業の展開例
アリの観察
【自然事象へのかかわり】
アリの特徴について想起させ、細かい部分は不確かなことが多いことに気付く。
生物の特徴について曖昧なことが多くあることに気付かせ、より詳しく観察したいという意欲を高めます。
【教師と子供の対話例】
ネイチャービンゴでは、どんな生き物を見付けましたか。
タンポポ、クローバー、カエル、ダンゴムシ、アリ。たくさん見付けました。
では、アリはどんな色をしていましたか。
黒色です。
いや、茶色のアリもいたよ。
茶色のアリなんているのかな。
では、あしの数は何本でしたか。
4本いや6本・・・。どちらかだと思います。
もう1回探して確かめよう!
【問題】
アリはどのようなすがたをしているのだろうか。
【予想】
- 色は黒
- 大きさは米粒ぐらい
- 形は頭と体がある
- あしは何本かな?
【解決方法の立案】
アリをプリンカップ(蓋付き)に入れて観察をする。小さいアリは虫眼鏡を使って観察する。
【観察、実験】
生物の色、形、大きさなどに着目して観察を行う(実物を観察後、名前や特徴を図鑑で調べてもよい)。
【結果】
- 色は黒
- 大きさは14mm
- 体にはくびれがある
- あしは6本
- 色は茶色
- 大きさは7mm
- 体にはくびれがある
- あしは6本

- スケッチでは、実線(1本の線)で大きくかく。
- 定規などを使って、大きさを具体的に示す。
- 見たり触れたりにおいを感じたりして、諸感覚をフルに働かせて観察するようアドバイスする。
【考察】
- 同じアリでも色や大きさが違うものがいる。
- 大きさは違っても同じような形をしている。
結果を見比べて、共通点や差異点について考えたり、話し合ったりします。また、【問題】や【予想】に立ち返り、問題解決ができたかを確認してから【結論】につなぐ学習過程を丁寧に指導しましょう。
【結論】
- 同じアリでも色や大きさが違うものがいる。
- 大きさが違うアリは親子ではなく、別の種類だった。
- アリは種類が違っても、体の形は似ている。
アリはハチ(スズメバチ)の仲間で、世界で1万種以上、日本には約280種類います。集団生活を営む進化した社会性昆虫です。
ここが最大のポイント! !
生活科では自分自身と生物などの自然に対する気付きを重視した学びを進めてきましたが、本単元では、理科の入り口として、視点を明確にして観察を行うことが大切です。ある昆虫(アリ)を取りあげて、色・大きさ・形の共通点や差異点を考えることで、観察をより充実させることができます。
また、本単元で子供が生物に関するさまざまな気付きや疑問をもつことで、今後の「生命」を柱とする領域の学習へとつながります。ふり返りができるように観察カードや子供の疑問などの記録を残しておくとよいでしょう。
次単元の準備は大丈夫?
次単元:植物をそだてよう1
- 根・茎・葉など植物の体のつくりがはっきりしていて、観察しやすい植物の種子を2種類選んで注文する。教科書を参考に。
(例):ヒマワリとホウセンカ
- 学級園で土づくりをしておく。土の量を確認し、不足する場合は「野菜の土」などを注文しておくとよいでしょう。
イラスト/横井智美、たなかあさこ
『教育技術小三小四』2019年4月号より