ゴール型ゲームって何から始めればいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #37】

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使える知恵満載! ブラッシュアップ体育授業
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小学校教諭

平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

サッカーやバスケットボール、ハンドボールなどゴールを決めて得点を競うゴール型ゲーム。いきなり、サッカーやバスケットボールのようなゲームを行うのは難しいものです。
ゴール型ゲームで陥りがちなのが、得意な子が活躍し、苦手な子がプレーから離れていくことです。この大きな原因は「どう動いたらいいのかわからない」ことだと考えています。
そこで、今回は、動き方がわかりやすく、みんながゲームに参加し、その楽しさを実感できるゴール型ゲームの入門期の教材としてピッタリな「コーンボール」を紹介します。

執筆/筑波大学附属小学校教諭・齋藤直人
監修/
筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川 譲

1 コート・学習の場

スタートラインは決めますが、サイドラインは設定しません(ボールがサイドラインを出た後の試合再開が複雑になってしまうため)。
ポートボール台の上にカラーコーンを置いていますが、ない場合はカラーコーンを置くだけでも大丈夫です。コーンの置き方や個数に決まりはありません。

※ライン引きの方法は、ブラッシュアップ体育授業#5「短時間で多くのラインを引くにはどうしたらいいの?」を参照

2 グループ

3年生で取り組むのであれば、体育班の4人組
4年生以上で取り組む場合は、男女混合の4人チームでもよいと思います。この場合は、投げる技能を測って、(一定時間内の壁ぶつけの回数など)チームの力が均等になるようにしましょう。また、試合を行う中で偏りがあった場合には、チームを変更することを伝えておくとよいでしょう。

3 ルール

1チーム4人で行います(攻撃が4人、守備は1人 or 2人)。最初は守備の人数を1人にします。攻撃が上手になり、次々に得点が入り始めたら、守備の人数を増やしてもよいでしょう。
ドリブルはなしで、パスをつないでシュートを目指します。
ボールを持ったまま移動しません。
コーンにボールをぶつけたら得点です。
守備はボールを持っている人から直接ボールを奪うことはできません。
得点を入れるか、守備にボールを取られたら、スタートからやり直します。
サークルの中には攻撃も守備も入りません。
ボールが遠くへ転がっても、拾いに行って続けます。

4 進め方

 守備をつける前に、【スタートラインから4人でパスをつないでシュートをする】までの流れを確認するために、「守備なしパスパスシュートゲーム」として取り組ませるとよいでしょう。守備のいない状態で、一定時間内(3分程度)にパスをつないでコーンに当てた回数を競います。

 パスをつないでシュートするまでの流れがつかめたところで、守備をつけてゲームを開始します。最初の守備の人数は1人にして、できるだけ攻撃が有利になるようにし、「パスをつないでシュートを決める楽しさ」を味わえる場面が多くなるようにします。

 攻守は時間制(3分程度)で交代します。時間内であれば何度も攻撃をすることができます。

 攻守を1回ずつ行い、試合終了です。得点の多いチームの勝ちとします。同点の場合は,じゃんけんで勝敗を決めます。グループでの入れ替え戦を行い、対戦相手を変えて次の試合を行います。

5 指導のポイント

⑴「ボールをどこに運ぶのか」
まずはボールをゴールに近づけることを意識させましょう。パスのみでゴールに近づけるので、得意な子だけが頑張っても得点することは難しいゲームです。時間内であれば何度でも攻撃をやり直すことができるので、ボールを持っている仲間よりも前でパスをもらい、少しでもゴールに近づけることができるように声をかけましょう。ゲーム中は「ボールはどこに運ぶの?」という声を繰り返しかけながら、ボールをゴールに近づけることを意識させます。

⑵「どこでパスをもらうのか」
ボールを持っていない子がどこに動くのかが大切です。そこで、「どこでパスをもらったらいいのか?」を考えさせます。どこでもらうかは大きく分けて2つです。1つは、「守備のいないところ(自分とパスを出す人の間に守備がいないところ)」、もう1つは、「シュートが打ちやすいところ(コーンの近くで守備がいないところなど)」です。下のイラストでは、○印の子がベストポジションとなるのがおわかりいただけると思います。言葉での説明ではイメージがわかず伝わりにくいので、子どもたちにモデルになってもらいながら、全員で具体的な場所を確認するようにしましょう。

⑶「パスをもらえなかったらどうするか?」
パスをもらおうとして動いても、必ずパスをもらえるとは限りません。パスをもらえなかったときに、その場所にとどまるのではなく、次にもらえそうな場所に動き直すことも大切です。教師は、「パスをもらえなかったら、どうしたらいい?」と声をかけて、子どもたちの次の動きを意識させましょう。

⑷「パスを出した後は?」
慣れてきたらパスを出した後の動きも意識させましょう。パスを出した後には、ボールよりも前、シュートが打てそうなところに動けるように声をかけましょう。

時間で攻守が区切られているので、「どうすれば点数が入るのか?」が考えやすい教材です。このような教材を扱うことで、全員がボールと仲間にかかわりながら学習を進めることができます。
また、失敗しても何度もやり直せるので、繰り返しの中で「どこでパスをもらえばいいのか?」「パスを出した後、どうするのか?」など、ゲームの中で「どう動けばいいのか」をたくさん経験することができます。ゴール型ゲームの基礎となる教材でその楽しさを子どもたちに実感させてみてください。

【参考文献】
筑波大学附属小学校体育研究部(2017)『1時間に2教材を扱う「組み合わせ単元」でつくる 筑波の体育授業』明治図書出版
齋藤直人(2021)『対話でつなぐ体育授業51』東洋館出版社

イラスト/佐藤道子

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執筆
齋藤 直人
筑波大学附属小学校 教諭
筑波学校体育研究会 理事
1985年 山形県庄内町生まれ。「体の基本的な動きを身に付け、高めること」を目指した対話(声かけ、お手伝い)でつなぐ体育授業を研究。全国の子どもたちや先生方が、今よりほんの少しでも体育授業を好きになってもらえる方法を模索中。著書に『対話でつなぐ体育授業51』(東洋館出版社)等。


平川譲先生

監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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