3月の学級通信:子供たちと1年間紡いできた日記型通信

連載
学級通信でつむぐ教室の物語|中学年

愛知県公立小学校教諭

佐橋慶彦

3月を迎え、学級の子供たちと過ごす時間も残りわずかになりました。1年間続けてきたこの連載も今月で最終回となります。

執筆/愛知県公立小学校教諭・佐橋慶彦

写真AC

書き続けたことで気付いた「言葉の価値」

学級の終わりが近づくにつれ、子供たちの日記にも学級の解散や、日記の終了を悲しむ声が多くみられるようになりました。こうして、自分の内心やクラスの雰囲気をみつめて、言葉にすることができるようになったのも、1年間、日記を掲載していく通信を続けてきた成果なのかなと思いました。

▼学級通信「つながりNo.187」

「気持ちのタイムカプセル」

【子供の日記】
今日は「つながり」が、のこり5号と聞いてびっくりしました。最後の5号なので学校であったでき事や思い出をつづりたいです。特に最後のつながりを書くときが悲しいです。だけど、楽しいことを書きたいです。【Aくん】

さいきんゲームをよくやります。いつもちがう色々なゲームをするので、とても楽しいです。とくにみんなが「えがお」というところが3-2のすてきなところだと思うし、けんかがなくなったのがいいなと思います。なので、ほかにも色々なゲームをしたいです。【Bさん】


【教師のコメント】
毎日毎日書き続けて、気が付けば186枚。みんな本当によくがんばりました。クラスが、つながりが終わっていく「今」しか感じることができない気持ちがあります。それを、つながりの中にのこしておけるといいですね。

3月13日 学級通信「つながり」No.187

その時々に感じていた気持ちは、日に日に薄れていき、やがて消えてしまいます。しかし、言葉に変えて綴っておけば、読み返した時にその時の心境を思い起こすことができるでしょう。ここにもまた言葉にすることの価値があります。

「気持ちのタイムカプセル」という当時の自分が付けたタイトルには少し恥ずかしさを覚えますが、確かに学級通信を読み返していくと、当時の光景や風景がよみがえってきます。また、中学生や高校生、成人してからも読み返してくれる教え子たちもいるようで、大変ありがたく思っています。

気持ちを残して置けること、その時々の自分の気持ちを仲間に広げることができること、仲間の気持ちを知ることができること……日記を掲載する通信を続けていると「言葉の価値」に気が付きます。

しかし、自分の気持ちと言葉はなかなか結びつきません。相手に自分の気持ちが伝わるように「言葉にする」ことは、簡単なことではありません。書きながら「言葉が出てこない」と、子供たちもよく口にしていました。

また、「言葉を読み取る」ことも大変難しいことです。言葉をただ読み取るのではなく、その言葉がどんな背景から出てきたのか、どういった意味で使われたのかを想像しなければなりません。その想像力が欠如してしまったことによって起こるトラブルもたくさんあります。

言葉にする力、そして言葉を読みとる力は、どちらも他者とつながるためには欠かせない力です。そんな力を学級の仲間との温かな触れ合いの中で身に付けて、今後出会う他者ともつながりを築いていくことができれば――そんな願いを胸に、これからも学級通信を続けていきたいと思います。

子供たちと紡いだ通信を見直す機会に恵まれ大変うれしく思っています。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

佐橋慶彦先生プロフィール画像
佐橋慶彦先生

佐橋慶彦(さはしよしひこ)●1989年、愛知県生まれ。『第57回 実践!わたしの教育記録』特別賞受賞。教育実践研究サークル「群青」主宰。日本学級経営学会所属。子どもがつながる学級を目指して日々実践に取り組んでいる。

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