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9月の「荒れない」学級づくり ~ケース別対応策~

2019/8/30

夏休み明けは、生活リズムや学習習慣が崩れ、クラスが荒れやすいと言われます。ここでクラスをしっかり整えておくために、この時期にありがちな不安について、ケース別に対応策を紹介します。

監修/神奈川県逗子市立小学校教諭 小西範明
(NPO日本教育再興連盟教員理事・徹底反復研究会関東支部所属)

荒れない学級づくり 対応策
写真/浅原孝子

FUAN【不安】からFUN【楽しみ】へ
集団の荒れに効くヒント

秋に見られる集団の荒れは、基本的には春にすべきだった学習規律の確立の甘さ、蓄積された指導の癖やブレが影響しています。同じ指導者が一時の気合いや根性で劇的に集団を変えるのは難しいことです。中長期的な目標を定めて、荒れを食い止め、戦略的に不安を解消し、楽しみながら集団を変えていくヒントを紹介します。

★まずは、三間(サンマ)チェック

三間とは教育業界で使われる「時間」「空間」「仲間」を総称する造語です。新学期が始まる前に、この三間で荒れの要素をチェックします。

【時間】 子どもたちが暇になる時間があるか。学習課題はできそうでできない、時間設定をする。

【空間】 子どもたちが騒ぎたくなる環境になっていないか。教室や廊下にある余計なものは全て撤去し、落ち着いて歩けるように掲示物等を工夫する。

【仲間】 仲のよさが偏っている場合は席を離す。ペア・グループ活動もクラスの総意を得て意図的に席を決め、問題行動が頻繁に見られる児童を同じにしない。

ケース1.学級経営に自信がない

目標と教師エネルギーのバランスを確認

一学期のふり返り、当初の学級経営の目標と現実の乖離を認識しましょう。想定よりも集団の育ちが低い場合は目標を修正します。

ここで必要なのは、広い視野と自分のエネルギーです。短期間でなんとかしようと意気込むのではなく、少しでもよくしようと粘り強く工夫をしていくことです。

目標達成イメージ

目標と同様に、自分のエネルギー量も考慮し、修正した目標に対して、どの程度、エネルギーが必要か、イメージしながら日々を過ごしていきます。全てのことに全てのエネルギーを費やすのではなく、どこにどうエネルギーを費やすかを考えることで、メリハリのある指導ができるようになります。目指すべきはAゾーンであり、Cゾーンに入ってきたら注意必要。改めて指導を見直しましょう。

ケース2.授業に集中しないのではないか

学習の環境づくりにエネルギーを使う

新学期当初は、子どもたちが集中できる環境づくりにエネルギーを使うことを優先しましょう。集団の力が弱くなる原因は様々ですが、クラスが荒れているときに決まって教師が多用する言葉があります。それは「静かにしましょう」です。この注意が全く必要ではない姿をイメージしてください。

話が聞けるようになれば、指導が効き、児童同士の仲もよくなるという姿を思い浮かべるのです。さらに、この集中できる環境づくりを徹底させることで、学力面でも児童の学習する姿を認めてほめる、児童は自信がつく、学力が上がる、という好循環が始まります。

では、最も集中している学習とは何か、それは学習の中身ではなく、学習形態に着目します。

集中しやすい学習形態の例

  • 大テスト(単元テスト)
  • 小テスト(漢字・計算など)
  • 読み聞かせ(絵本・紙芝居)
  • 読み聞かせ(本)
  • 自由読書
  • 動画学習(DVD・ビデオ)
  • 大人の塗り絵
  • ドリル学習
  • 視写
  • 教科書+ワークシートでの学習

これらの学習形態は「無言で」(一人で)学習することが可能です。学習規律が安定するまで、これらの学習形態を少し多めに活用することで、集中する時間を多くしていきます

学習規律が安定しない多くの場合、高度な授業展開をしようとしても、問題行動に対する注意が多すぎて、きちんとできている児童をしっかりとほめることが難しくなります。注意自体の声が騒がしくて雰囲気もよくなりません。

しかし、これらの学習形態では、一人ひとりの学びが保障されやすく、また誰でもできる指導です。子どもたちが学習する間、余裕をもって子どものよさをしっかりと見とりほめることができます

また、これらは教師のエネルギーはそれほど大きくないので、残りのエネルギーを教材研究に費やすなど、専門的な教育に取り組んでいくことができます。

◆紙芝居のススメ

前述の集中してできる学習形態の中でも、低学年では「紙芝居」がお薦めです。紙芝居はどの学校でも多くの種類を取りそろえていてビジュアルがたっぷりなので、物語に引き込まれます。国語科・生活科・道徳のメイン教材として、また教科書単元の導入としても使用できるので、汎用性が高い学習形態なのです。

◆学級通信を生かした学習

学級通信を発行する目的は様々ですが、集中して学習することを目的とすると、学級通信も工夫できます。表面にはスケジュールや持ち物、学級の様子や担任の思いを記載し、裏面には復習コーナーと題して学習プリントの意味合いをもたせます。学級通信なので保護者が見ます。授業中に取り組むことでより緊張感が生まれます。テスト前などに実施するとよいでしょう。また問題も、できれば児童が作成した問題集にしたほうが、問題を見る側にとっては見応えがあるものになります。

学級通信を生かした学習イラスト

ケース3.教師の指導が効かないのではないか

◆BTとBPを心がける

BTとはベスト・タイム、BPとはベスト・プレイスの意味です。子どもが最も集中する時間や集中する場所があり、重要事項を指導するときには、この2点を意識することで、子どもの心の中にしっかりと刻み込むことができます。

全体指導BT

・PTAによる朝の読み聞かせ後

教室に保護者が何人かいる状況であり、また読み聞かせをして静かになっている状況なので、教師の話も伝わりやすくなります。

・テスト前・テスト後

テスト前は緊張感や集中度が高い状況になっているので、静かです。テスト後も静かです。これらの時間を有効に使いたいものです。

全体指導のベストタイム

個別指導BT

・給食準備中

午前中のトラブルの解決等はこの時間を使います。お腹が適度に減っている、またゆったりと時間が流れているので、落ち着いて話ができます。

・金曜の放課後

翌日が休みという開放感があるので、できていない課題や話したいことがある場合はこの時間をじっくり使います。通常以上に頑張る児童もいますし、教師自身もこの時間はより頑張りやすいので、短時間でもこの時間を上手に使えるとよいと思います。

全体指導・個別指導BP

全体指導BPは図書館やパソコン室。特別な個別指導のBPは、その学校のルールや児童のタイプにもよりますが、「職員室」を挙げます。職員室は通常、子どもたちは入りません。個人情報があるということも理由ですが、提出物を出す児童や用事がある子どもは入室します。

そこで個別指導をしたい児童を何かの用事の時に職員室に来てもらい、そこで「短く」「小さい声」で指導をします。周囲に大人の目があるという特性があり、暴れたり騒いだりすることはまれです。ポイントは日常の言動をしっかりほめた上で、注意すべきことを伝えることです。頻繁に呼んだり、話が長かったりすると「呼び出された」と受け取られ、ネガティブになり、また他の職員にも迷惑となるので気を付けたいところです。

個人指導のベストタイム

◆ゲーム感覚で指示を聞かせる

指示が全体に通る楽しさを子どもたちと共有します。「サイモンセズ」というゲームを応用し、楽しく実践します。教師が、「サイモンセズ」と言った時のみ、その指示を聞くルールで、間違った人が脱落していくゲームです。

「サイモンセズ 起立!」「正解!」「教科書を出して」「間違い!」

この「サイモンセズ」というセリフを先生が言います、また指示の内容も「〇〇の教科書を出します」等、実際に学習指導で使うフレーズを使うことで、「指示を聞かないと」という意識が自然と働きます。指示を聞くスピードも無理のない程度で少しずつ速くしたり、児童を指示役にしたりするなどの応用もできます。

ケース4.ルールの不徹底に対する不安

◆時刻通りに授業を始めるコツ

授業の開始時刻ちょうどに授業を始めることは難しいことです。最初は教師の指導を入れ、段々と自分たちでできるように見守ります。コツとしては、授業開始前の1~2分間で教師が「座って」「静かに」するという指導を入れることです。大概その指導通り、時刻ちょうどに授業を始めることができますが、この時に時刻通りに始まったことをほめます。実際は教師が指示をしてその通りになったのですが、授業の最初からほめられると嬉しくなりますし、次は自分たちでできるようにしようと意欲が上がります。1分早く始まったら1分早く授業を終えてもよいでしょう。このように肯定的な事実を教師主導でつくりだし、その事実を皆で認め合い、向上し合う雰囲気につなげていきます。

◆宿題忘れの防止策

まず宿題の種類を見直しましょう。宿題の種類が多いと、支援が必要な児童にとっては混乱を招き、宿題をする習慣がなかなか身につきません。例えば、音読・国語プリント・計算ドリル・教科書問題など、一つ一つの学習量が少なかったとしても、このように種類が多いと取りかかりの準備に時間がかかります。学習量は保障した上で、宿題の種類を3つ以下に減らす、そして可能なら毎日同じような宿題にし、児童が取りかかりやすい工夫をしましょう。

◆連絡帳とプリントの折り方を工夫する

連絡帳をさっと見ることができれば、宿題にすぐに取りかかれたり、持ち物をすぐに確認でき、忘れたりするのを防ぐことができます。

最後に連絡帳を書いたページが外側になるように折り、クリップで留めます。すると、取り出してすぐに書いたページが見えます。配付プリントも同様に表が見えるように折ります。

ケース5.子どもとの信頼関係が不安

◆トリガーで脱マンネリ

トリガーとは、「きっかけ・はずみ」という意味です。秋にもなると教師―児童の関係においてはお互いのことがだいたいわかり、気も緩みがちです。そこでトリガーを仕掛けることで、新たな関係性、深める関係性の構築を図ることができます。例えば、

  • 普段スーツを仕事で着ないがスーツで行く。
  • 普段外で遊ばないが、外で遊んでみる。
  • 普段行かない図書室に、昼休みに行ってみる。

このように普段しないことをやってみます。このことで児童が質問に来ます。大人しく静かな児童も質問に来ます。話題を広げ、豊かなコミュニケーションができる一つの機会になります。ただ注意したいのは、ボケやイメチェンで奇をてらうのではなく、目的意識を持って普段のイメージを一時的に覆すところです。

トリガーで脱マンネリ

◆ほめの反復

成長している児童はほめますが、その箇所をほめるということを何回していますか? 私は一つのことであっても、そのことを5回はほめてよいのではないか、と考えています。

例えば、漢字練習をして満点をとった児童に対しては、①その瞬間 ②翌日 ③他の人(保護者等)の前で ④次回のテスト前日 ⑤次回のテスト当日、というように繰り返しほめます。くどいという子もいるかもしれません。しかし、いつまでも覚えてくれている、期待してくれている、という気持ちになる子も多いのではないでしょうか。子どもは小さな成功体験の繰り返しで自信をつけていきますが、成功体験を忘れないためにも、ほめの反復を心掛けたいものです。

ケース6.子どもたちの人間関係が不安

◆ケンカはフローで解決

ケンカの解決において、どの程度介入するのかは難しい判断ですが、低学年でも自分たちで解決できることが一番です。

ケンカの解決の仕方については、教師同士がその指導について話し合うことはあまりありません。つまり、ルールは指導者自身になっています。系統的な指導を考えても、やはり解決の仕方は共通したものがあればよいと考えます。

トラブルが起きた際は基本的には、

  1. 当事者同士で解決する(問題の事実は把握する)
  2. 友達が入って解決する(難易度は高い)
  3. 先生が入って解決する(ほとんどここに該当)
  4. 当事者同士の保護者にも介入してもらい解決する
  5. 管理職も4に加わって介入する

このフローはどこも変わらないので、フロー自体を子どもに提示・可視化し、1・2までで解決できることは素晴らしいとほめることで、早期に納得して解決しようという意識が働きます。

事実に基づいて話すので、ポイントはルール=指導者ではないというところです。こういった当たり前のことこそ校内で共有できたらよいと思います。

◆言葉づくりで絆づくり

一人3枚、白紙のカードを配ります。そこに好きな既習漢字かひらがなを一つずつ書きます。そしてグループの中で見せ合い、その漢字を組み合わせて言葉をつくります。例えば「日中」「月み(見)」とできるだけ多くつくります。

児童は言葉を考え、熟語に興味をもつと共に、友達との絆をつくることもできます。配るカードをひらがなだけにしたり、できるだけ長い言葉をグループでつくったりする、といったルールのアレンジも可能です。

言葉カードを組み合わせて単語を作る子ども

◆いじめ撲滅の詩をつくる

道徳でいじめの授業をした際、クラスとして「~しよう」という、いじめ撲滅の詩や呼びかけをつくって提示し読むことで、いじめに対する意識を向上させることができます。心を変えることも大切ですが、言葉から意識を変えることも大切です。

完成したものは帰りの会などで、皆で音読し、時々ふり返ることで、いじめが起きにくい集団を目指していきます。

最後に

担任している子どもたちのことを一番よく知っているのは、担任です。トラブルが増えると、いろいろなことを言われたり、悩んだりします。それらを前向きにとらえ、子どもたち一人ひとりのよさを、成長を信じることはとても大切です。経験が少ないと不安になりますが、だからこそ、楽しく戦略を思考しアイディアを出します。その時うまくいかなくても、その人自身にとって、その後ろ姿を見ている子どもたちにとって大きなものが残ると信じています。

最後に、私が初任で二年生を担当し、学級経営で悩んでいたときに先輩にいただいた言葉を紹介します。

「子どもたちの成長を信じて実践し、裏切られてもまた信じ、裏切られてそれでも信じて可能性に挑戦するのがあなたの仕事です」


取材・構成/出浦文絵  イラスト/宇和島太郎

『小二教育技術』2017年9月号より

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