評価規準に沿った学習状況の見とり方はどうすればよい?【田村学流 単元づくり・授業づくり#18】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
評価規準に沿った学習状況の見取り方はどうすればよい?【田村学流 単元づくり・授業づくり#18】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

子供の学習状況の見とり方のポイント

前回まで、評価規準の設定の方法についてお話をしてきましたので、今回は、設定した評価規準に沿って、子供達の学習状況を見とるためのポイントについて、ご説明をしていきたいと思います。

学習を見とる方法は経験則で身に付けられ、これまでポイントが整理されてこなかった

前回までの評価規準の設定方法についてのご説明で、評価規準をシャープに言語化することによって、より評価がしやすくなるとお話をしてきました。とはいえ、子供たちの学習活動の過程で、「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」を、的確に見とることは簡単ではないと感じられることはないでしょうか。特に、現行の学習指導要領は、その見とりにくい資質・能力の育成を大事にしたいというところもあるだけに、それをいかに見とれるかという先生の力が問われています。しかし、そのような子供の学びを見とる力には、個人個人で大きな差があるのが現実だろうと思います。

先生方の学校で行われる研究授業を思い浮かべてみてください。同じ授業を見ていても、子供の学びを豊かに見とることができる先生と、そうでない先生がいるはずです。研究授業後の協議会で、「あの子は、あの場面で~というような発言をし、その後の対話を経て、~ということを理解し、~と学習をまとめていた」と、授業中の具体的な子供の姿を語り、その姿を通して丁寧に授業の解釈をしておられる先生がいらっしゃいます。そういう先生は、見えにくいものが見とれている先生です。そういう見とりの力が高い先生がいる一方で、そういう子供の変容には気付かず、表面的なことしか語れない先生もいることでしょう。

では、読者である先生方に、「前者と後者のどちらになりたいですか?」と聞けば、やはり前者のような見えにくいものが見とれる先生になりたいと思われるはずです。もちろん、そんな力のある先生はこれまでも全国中にたくさんいたし、読者の身近にも必ずいたはずです。ただし、その見とり方を若い先生方に説明してくれたかと言えば、そうではなかったのではないでしょうか。それは、経験則で身に付けた方が多かったからだと思います。

しかし、そのような見えにくい資質・能力を見とるためのテクニックについて、ポイントを押さえて、意識しながら見とる訓練をしていけば、どの先生でも、一定程度、そこに近づけるチャンスがあると私は考えています。

3つの軸で見とることで的確な見とりが可能になる

では、どのようなポイントがあるかと言えば、私は大きく3つあると考えています。それは、「時間軸」で継続的に見とるということと、「空間軸」で多面的に見とるということと、「規準の軸」を基に見とるということです。

まず、1つめの「時間軸」というのは、子供の姿をある程度の時間を通して、継続的につながりのあるものとして見とっていくことによって、見えにくいものが見えてくるということです。例えば、「あの子は昨日の授業の最後には~と言っていたが、今日の授業の冒頭で~と語り、中盤では友達と~と話していて、最後には~と変わった」ということがあると思います。このように時間を追って見ていくことによって、「あの子は、最初、こんなことを考えていたが、今日の授業の中の対話で、こう変わったようだぞ」ということが見えてくる可能性が高まると思います。それが、「時間軸」で継続的に見とるということです。

2つめの「空間軸」というのは、ひとつの授業の中でひとりの子供が表出する多様な言動をつなげて見とっていくということです。子供の言動には、手を挙げて発言したこともあれば、つぶやきもありますし、ノートに書いたまとめや振り返りもあれば、ちょっとしたメモもあります。さらに、何らかの振る舞いもありますし、表情もあれば、手足の動きもあるでしょう。そのように、ひとりの子供が表出するものは多様にあります。

写真1

それらの多様な表出を関連づけ、「授業中、最初に挙手して~と発言した子供が、その後に友達と真剣な表情で~と話していて、その後~とノートに書いていた」というようにつなげて見とることで、「あの子は最初は~という理解だったが、友達との対話を通し、あんなことを考えたようだ」とか、「こんなふうに取り組む態度が育ってきているぞ」と、見とることができる可能性が高まります。そのように、「空間軸」で多様な表出を関連付けることで、見えにくいものが見えやすくなってくるでしょう。

ちなみに、その多様な表出は、より細かく見ていくことも大切です。例えば、1枚の学習カードであっても、それは何枚目なのかとか、タイトルはどう付けているかとか、イラストや図はどんなものが付けられているかと見ていくことで、より詳細に子供の思考や態度を見とることができることでしょう。

3つめの、「規準の軸」というのは、先にご説明をした評価規準の視点です。これがあることで、目の前の子供の姿を、「ああいいぞ」とか、「少し気になるぞ」という判断ができるということです。「時間軸」や「空間軸」による見とりも、この「規準の軸」があることによって、的確なものになっていくわけです。

このような3つの軸をもっているかどうかで、子供たちの見とりが大きく変わってくると思います。先に少し触れましたが、ご自身は見取りがお上手だけれど、何も教えてくれなかった先生方は、そのような見とりの軸を、経験則によって暗黙の内に身に付けておられたのではないでしょうか。しかし、こうした3つの軸を意識しながら日々、授業を見ていくことで、どの先生でも、子供の姿から見えない資質・能力を見とっていく力を身に付ける可能性が高まっていくだろうと思います。

またそのような見とりを行う上では、より的確な評価規準を設定することが重要であることも、お分かりいただけるのではないかと思います。

今回は、子供の資質・能力を見とるための3つの軸についてご説明をしましたので、次回は、そのような見とりの目を育むための方法について触れてみたいと思います。

【田村学流「単元づくり・授業づくり」】次回は8月19日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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