田村学著『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』刊行のお知らせ 第3回

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
田村学著『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』刊行のお知らせ 第3回

今回は、國學院大学・田村学教授の著書『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』(小学館)と「みんなの教育技術」での連載との最大の違いである、多様な実践事例について紹介をしていきたいと思います。

「学習指導要領がめざす」子を育む!
『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』
田村 学 著
ISBN 978-4-09-840226-7

単元づくりの解説を、より具体的にイメージするための事例多数

この紹介記事の中で最初に触れてきましたが、今回の書籍は、もともと「みんなの教育技術」で田村先生が連載をしてこられた「田村学流『単元づくり・授業づくり』」を整理し直し、加筆・修正を行って作成したものです。もし簡単な整理をし直しただけの書籍であれば、「わざわざ書籍を手に入れて読まなくても連載を読み直せばいいでしょ」と思われてしまうかもしれません。しかし、この書籍化に当たっては、現場の先生方が実際に日々の「単元づくり・授業づくり」のなかで、より具体的にイメージしやすくすることを第一に考えました。

そのため、この書籍では中堅〜ベテランの7名の小学校の先生方による、具体的実践例を追加取材のうえ、田村先生の解説に沿って紹介をしているのが大きな特徴となっています。しかも、7名の先生方がそれぞれ異なる教科等を専門とされる方々であり、多様な教科等における「単元づくり・授業づくり」を具体的に学ぶことができるのです。

この実践例については、最も多くのページを割いているのが、第3章における「ゴールの設定」「導入の工夫」「展開の構成」の仕方などについてです。ここでは、田村教授の解説の後、それぞれ2名の先生が具体的な実践事例紹介を行っています。

まず「ゴールの設定」は、めざす資質・能力を子供たちに育んでいくために、ゴールとなる子供の姿をどのように設定していくかという内容です。この内容に沿って、実践事例を紹介してくださるのは、新潟県の二瓶亮教諭と千葉県の平山靖教諭です。

二瓶教諭は専門とする算数の「小数」の単元で、どのようにゴールを設定して授業を進めていくのかを説明しています。その学習過程で、見方・考え方を働かせることの大切さや、その具体、さらには板書写真などの資料もあり、算数の「単元づくり・授業づくり」での「ゴールの設定」の仕方と、それによる授業の質の高まりが見えてくることでしょう。

平山教諭は専門とする外国語活動・外国語でどのようにゴールを設定して授業を進めていくのかを説明しています。特に外国語等では「目的意識」「相手意識」のあるコミュニケーションを行えるようになることが大切で、その「目的」などに沿って、「知識・技能」を身に付けていくような単元について、実践事例を紹介しており、外国語が苦手な先生でもすぐに参考にして取り組めるのではないでしょうか。

次に、めざすゴールに向かって子供たちが主体的に追究をしていけるような「導入の工夫」です。この内容に沿って、実践事例を紹介してくださるのは、千葉県の杉本一生教諭と兵庫県の小湊拓也教諭です。

杉本教諭は専門とする社会の「地域の安全を守る働き」の単元で、どのように導入を工夫することで子供たちの思考の深まりを構成していったかを説明しています。ここでは、実際に身近な交通事故の状況や、安全を守るための関連機関の働きを学習しつつ、子供たちから生じた新たな問いを第二の導入として、単元後半の学習で一段と学習を深めていく過程をていねいに説明しています。

小湊教諭は専門とする理科の「太陽と地面の様子」「身の回りの生物」「流れる水の働きと土地の変化」などの複数の単元で、どのように導入を工夫して単元を進めていくのかを説明しています。子供たちがどんなふうに、身近な生活の中にある自然事象と出合うことで、自ら探究をしていくのか、具体的な学習過程の写真も多数交えながら説明をしています。

単元構成の最後は、めざすゴールに到達できるようにするための「展開の工夫」です。この内容に沿って、実践事例を紹介してくださるのは、東京都の安藤康太教諭と千葉県の平松正裕教諭です。

安藤教諭は専門とする国語の「おおきなかぶ」や「まいごのかぎ」などの単元で、どのように展開を構成していけば、めざす資質・能力を育むことができるのかを説明します。例えば、低学年であれば「劇遊び」という活動を行うことで、自然に登場人物や会話の話者を確認して読み込んでいくようにするなど、学齢に応じた展開の仕方を資料と共に分かりやすく説明をしています。

平松教諭は、専門とする総合的な学習の時間で、地元の文化財について学習していく単元を説明。先進校の資料も参考にしながら、単元構成を考えていった実際の計画案や、単元の展開の各場面での板書や掲示資料なども示しながら、どのように子供たちの思考を深めていったかを説明しています。

精度の高い学習評価によって単元や授業の質が上がっていく事例

田村教授の説明も含め、最も多くのページを割いているのが、先の「単元づくり・授業づくり」についての第3章です。しかし、それに次いで多くのページを割いているのが、第5章の学びの見とり方と、それをどう授業改善に生かすかという第5章の内容です。

「学習評価」というと、どうしても評価したらそこで終わりというのが、古い評価のイメージではないでしょうか。しかし、的確に子供の学習状況を見とって評価を行うことは、子供たち自身が自ら成長をしていくうえで必須なだけでなく、先生が単元や授業をより質の高いものにしていくうえでもとても重要なものです。そのような、(評価規準に沿った)学習の見とり方や、それをどう生かすかという田村教授の説明の後にも、具体的な実践事例が入ってきます。

ここで実践事例を紹介しているのが、もともとは家庭科を専門とし、近年は指導教諭として総合的な学習の時間や多様な教科における「学習評価」についての研究にも取り組んでいる、大分県の武田文子教諭です。

武田教諭はまず、1年生の国語「見つけたよ、いきもののひみつ」の単元で、どのように評価規準を設定し、それによってより的確な評価ができるようになるか、単元計画(評価計画)を示しながら説明。続けて実践後に、子供の実態に沿って、どのように単元構成などを修正していったか、単元計画の中に分かりやすく修正点を加えていった資料を基に説明しています。

また家庭科では、5年生の単元「寒い季節を快適に」の過去の指導案を基に、現行学習指導要領に沿って、指導計画と評価計画を作成した資料も示しています。

さらに生活科では、単元計画と評価計画を作成する過程で、同学年の先生方とどのように共有していくことで、より質の高い計画にすることができるか、具体的な資料も交えながら説明をしています。

こうした資料を示しながらの武田教諭の説明を読んでいくことで、田村教授が解説する、評価の精度を上げることによって、事前、事中、事後における単元・授業精度の向上がどのように行われていくのかが、より具体的にイメージできることだろうと思います。

もともとの田村教授の連載のなかでも、具体的な事例に触れながら説明をされている部分が少なからずあります。しかし、このように新たに7名の先生方の実践事例を入れたことで、どんな立場の先生にも、より分かりやすく、イメージしやすいものとなっているだろうと思います。今よりも、一歩でも二歩でも質の高い「単元づくり・授業づくり」に向かって進みたいと思っておられる先生方には、ぜひ一度、読んでいただきたいと思っています。

執筆/矢ノ浦勝之

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