指導の精度を上げる、指導計画と評価計画の一体化の方法とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#23】

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田村学流「単元づくり・授業づくり」
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評価と見とり方特集

國學院大學人間開発学部教授

田村学
指導の精度を上げる、指導計画と評価計画の一体化の方法とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#23】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

指導計画と評価計画をどのように一体に進めていけばよいのか

前々回までに、評価規準をより具体的に言語化し、指導計画と評価計画を一体のものとしてデザインしていくことが、指導の精度向上につながるというお話をしました。それに続いて今回は、より具体的に、指導計画と評価計画をどのように一体に進めていくかについてお話をしていきたいと思います。

評価計画をバランスよく行うための四つの視点

指導計画に当たる「単元づくり」に関しては、♯5~♯7でご説明をした通りです。ある単元の計画をするときには、当然、その単元を通して育む、三つの資質・能力(と、それに対応する評価規準)を明確にしたうえで、単元の中のどのような学習活動を通して、その力を育むのかを考えているはずです。

そこで、どの場面(時間)にその資質・能力が大きく成長するのか、あるいは、どの場面とどの場面を比べればその資質・能力の成長を見とることができるのかを考えて、単元の中で評価する場面を設定します。つまり、評価計画を作成していくわけです。そのときに注意すべきなのは、(これは以前にも触れましたが)評価に不公平さが生じないよう、同じ時間に一斉に行えるということと、子供の書いたものや製作物など、的確に評価できるものを対象に評価を行うということです。

そのように指導計画に評価計画をはめ込んでいくときに配慮しなければならないことは、評価の観点をバランスよく位置付けていくことです。一つの単元の中で、特定の観点に偏って評価することになってはいけません。評価が偏るということは、そこで育まれる資質・能力にも偏りがあることを意味するからです。

例えば、総合的な学習の時間で小単元が三つあるとして、総括的な評価のバランスを考えてみましょう。それぞれの単元で、どの観点を評価するかを表組みにして一例としましょう。このように、評価計画をバランスよく行っていくための視点は、次の4点になります。

評価規準のバランス
評価規準のバランス

まず、1点目は、評価規準の数的なバランスです。観点別のバランスや小単元別のバランス、時間数とのバランスなどをとりながら配置をしていきます。

2点目は、評価規準の単元展開における変化です。これは一つの観点について、時間経過による視点(表組みの縦の視点)で見ていくということです。

3点目は、評価規準の小単元における関係性です。これは一つの活動において、どのような観点を評価するかという視点(表組みの横の視点)で見ていくということです。

4点目は、学習活動と評価規準との整合性です。これは個別の学習活動でどんな力が育まれているかという、表組みの各枠と観点の整合性を見るということです。

評価計画に必要な「誰が、いつ、何を、どのように」

なお、このような評価計画は主に総括的評価を行っていくために作成していくわけで、すべての授業のすべての活動に配置していく必要はありません。ただ、言うまでもありませんが、その学習活動を通してどのような資質・能力が育まれるのかということや、すべての子供の学びの状況を確実に見とることができる場面であることを考慮して配置していくことが重要です。

このような評価の配置については、「誰が、いつ、何を、どのように」ということを考えることも必要です。まず、誰がというのは担任の先生がということになりますよね。次に、いつというのは、その観点に対応する資質・能力が育まれ、変容が見とりやすい場面でということになります。さらに、何をというのは、評価規準ということになります。そして、どのようにというのは、その評価規準を見とるための方法で、すべての子供の状況を公平に見とることのできる方法であることが大切ですから、書いた文章などの表現作品や成果物が中心になると思います。

ただし評価方法については、GIGAスクール構想の実施によって多様なデジタル機器も充実してきましたので、今後、多様な方法が生まれてくる可能性が考えられます。例えば動画を撮影し、それを評価をするといったことなどもあるだろうと思います。あるいは、子供の学習過程のログを評価するような方法もあるかもしれません。

もちろん、先生方の負担増にならないことを前提としなければいけません。ですから、現場で今すぐに多様なツールを用いて新たに評価に活用することは難しいかもしれません。しかし、評価規準の精度が高く設定できるようにしておけば、将来的にはそこにAIなどを入れ、今まで以上に多様なツールを使って、より効果的・効率的な評価を行うことができるようになる可能性はあるでしょう。

指導と評価の一体化を図るうえでの課題と効果とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#24】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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