指導と評価を行った後の指導改善について【田村学流 単元づくり・授業づくり#26】

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田村学流「単元づくり・授業づくり」
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評価と見とり方特集

國學院大學人間開発学部教授

田村学
指導と評価を行った後の指導改善について【田村学流 単元づくり・授業づくり#26】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

評価後の指導改善について

ここまで、指導と評価の一体化を図るための方法についてお話をしてきました。そこで今回は、指導計画・評価計画に基づいて、実際に単元をつくって授業を実施し、評価を行った後の指導改善について話していきたいと思います。

改善に向けた事中の的確な評価が大切

これまで説明をしてきた、指導計画・評価計画に基づいて授業を実際に行った後には、それを指導改善に生かしていくことが必要です。

計画はあくまで計画ですから、実際に実施をしてみると、事前に思ったようには子供たちの思考が深まっていかない場合もあります。当然、そのときには授業中にも多様に調整を行うわけですが、授業中の改善は瞬時に行わなければならないために手段も限定されてきます。例えば、新たな発問や指示、言葉がけの工夫とか、活動の設定変更などといったことが必要になったとしても、事前に予測されていたものでなければ、その場で先生が実施できる範囲は限られるわけです。

しかし、このときに重要なことは、自らが設定した評価規準が適正に機能しているかどうか、評価規準に照らして目の前の子供の姿はどうかということを、授業中に見とっておくことです。それができていれば、次の授業までには数日間から1週間程度の猶予がありますから、リカバリーの戦略を練ることが可能になります。

例えば、評価規準の求めるものが子供の実態に合わず、高すぎるものだったと考えられるならば修正することが必要かもしれません。あるいは、思考を深めるための材料が足りなかったなと考えられるならば、新たな資料を探し出すといったようなことが必要になるかもしれません。そのように授業中の判断を基に、次時(あるいは次単元)に向けたリカバリーを行っていくわけです。

以前にも触れましたが、このような指導の改善を考えるのは当該授業の後だけではありません。事前に指導計画に評価計画をはめ込んだときに、評価規準に照らして、学習材との出合いや学習課題の設定、学習活動は本当に適切なのかと考え、ブラッシュアップすることも必要です。もちろん、評価規準が本当に妥当かどうかを考えて、修正を図る必要があるかもしれません。

適正な評価規準と学習活動は子供自身の自覚も促す

このように、精度の高い評価規準を基にした指導と評価の一体化は、先生にとっては、よりよい「単元づくり・授業づくり」に機能するわけですが、それと同時に子供たちにとっても重要なことが期待できます。それは、子供たちが身に付けるべき資質・能力を自覚したり、それが身に付いていることを実感したりする機会が生じやすくなるということです。

生活科の授業中に自分自身の成長と達成感を得た子供が、自然と笑みを漏らしている。
生活科の授業中に自分自身の成長と達成感を得た子供が、自然と笑みを漏らしている。

期待する学習活動が行われ、期待する姿が生じたとき、子供自身がそのことを望ましいことだと自覚し、手応えとして実感することが大事です。「今日は、こんなことができたぞ」「それはとっても大事だな」「またやれるようにしよう」と自覚し、手応えを伴った認識にならないと、再現しようとは考えないからです。この際限の繰り返しによって、安定的で持続的な態度が形成されていくわけです。

精度の高い評価規準を設定し、指導と評価の一体化をしていくならば、望む子供の姿が実現できる可能性が高まります。また、それが実現できたら、「今のはとてもいいね」「大事なことだよ」と、それが望ましい姿だと適切に価値付けをすることができるでしょう。それによって、子供たちは自分自身の成長を自覚し、手応えが生まれてくるわけです。

もちろん、評価規準がなかったとしても、先生方は日々、子供の姿に価値付けをしていることでしょう。例えば日頃、積極的に話をしない子が進んで発言したらほめるといったことなどはよくあることだと思います。しかし、育成をめざす資質・能力に沿って設定された精度の高い評価規準を基に、意図的に評価に関する行為を行うことが重要なのです。例えば、評価規準が「根拠となる叙述を明確にして、登場人物の心情を…」とあれば、「今の『~という文章から~だと…』という発言は、根拠になる文章を説明していてすばらしいですね」と具体的に価値付けをすることができるわけです。

「主体的に学習に取り組む態度」に関しては、評価規準があいまいであるがゆえに、挙手の回数や忘れ物の回数などに置き換えられる、好ましくない評価が行われることもありました。しかし、評価規準が具体的かつシャープに言語化できたうえで、指導と評価の一体化がなされれば、一人ひとりの子供に育成をめざす資質・能力が確かに育成される可能性が高まるのです。

大学入試改革からも求められる指導と評価の一体化【田村学流 単元づくり・授業づくり#27】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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