「単元づくり・授業づくり」をふり返る【田村学流 単元づくり・授業づくり#最終回】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
「単元づくり・授業づくり」をふり返る【田村学流 単元づくり・授業づくり#最終回】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

もう一度、先生方に考えてほしいこと

今春からの連載では、「単元づくり・授業づくり」をテーマに今、求められる学習活動を単元単位でどのようにデザインしていくか、から、その実施後にどのように評価を行い、指導改善を図っていくかについてまでを話してきました。今回はその連載の最後として、改めて全体をふり返るとともに、先生方にぜひ考えていただきたいことを話したいと思います。

単元とは、問題解決のユニット

単元というものは、一連の問題解決のまとまり(=ユニット)であり、そこには一連のプロセスがあり、プロセスにはスタートからゴールまでがあります。当然、そのゴールがどこだか分からず、あいまいなままで明確に定まっていないと、スタートからゴールまでのプロセスが描けないことになります。ですから、ゴールを明確に定めないと、学習活動が這い回り、学びが高まっていかないわけです。

そのゴールを明確にするためには、精度の高い評価規準が必要ですし、その設定方法について具体的に示してきました。さらに、評価の方法、指導と評価を一体に進めていくことの意味についても話してきました。連載を通してここまで示してきた「単元づくり・授業づくり」に、一人でも多くの先生が取り組んでくだされば嬉しい限りです。

子供中心に「単元づくり・授業づくり」を創造

「単元づくり・授業づくり」の前に、それを実現するための前提条件の問題があるかもしれません。例えば、学級における子供の状況について、先生や友達の話を落ち着いて聞くことができるようになっているかといったことです。学習集団として学習の基盤となる状況が整っていること、教師としての基礎的な技量が獲得されていることなどが前提として必要かもしれません。

こうした安定的な学習集団の傾向性や教師の確実な指導力の獲得は、いずれも子供の学びを中心に考えることが大切です。無理矢理教え込むなかで、見た目ばかりが整ったように見える学習集団であったとしても、そこに大きな成果は期待できそうにありません。一人ひとりが興味・関心を高め、目を輝かせながら集中して学びに向かうことを繰り返すなかで、一体となって、真剣に学習活動に向かう学級が育っていくのしょう。また、そうした子供の姿を実現することのできる教師力が欠かせないのでしょう。

その点から考えるならば、教師が「いかに教師が教えたか」に意識を向けるのではなく、「いかに子供が学んだか」へと意識を転換することが欠かせません。子供の学びを中心に考えるのです。

「いかに教師が教えたか」から「いかに子供が学んだか」への意識転換が重要。
「いかに教師が教えたか」から「いかに子供が学んだか」への意識転換が重要。

これまでと同様に教師の指導力は欠かせないものです。しかし、それは子供の学びを前提として、子供の実態や子供の特徴に応じた指導力であることが求められます。そうした指導力こそが、確かな子供の学びを実現し、一人ひとりの子供の資質・能力を着実に育成していくのではないでしょうか。そのためにも、子供が学び続ける単元や授業を構想するとともに、目の前の子供の学びの様相を確実に見とり、把握することのできる教師の力が欠かせないのです。

子供の学びを中心にした「単元づくり・授業づくり」では、きっと子供のにこやかな笑顔や真剣な眼差しがたくさん生まれると思います。「もっと、もっと」「またやろうよ」「おもしろいね」「すごいなあ」と子供の声が響き合うことと思います。「単元づくり・授業づくり」といった教師の行う日々の営みは、とても創造的で魅力的な行為なのです。

【田村学流「単元づくり・授業づくり」】は今回をもって最終回となります。長い間ご愛読ありがとうございました。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之


本連載に加筆した単行本『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』が、12月1日に発売になります。

「学習指導要領がめざす」子を育む!
『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』
田村 学 著
ISBN 978-4-09-840226-7


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