「知識・技能」の評価規準のフォーマットと言語サンプルとは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#17】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
「知識・技能」の評価規準のフォーマットと言語サンプルとは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#17】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

「知識・技能」の評価規準のフォーマットと言語サンプル

前回までに、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」のフォーマットと言語サンプルについてご説明をしてきました。そこで、今回は、「知識・技能」の評価規準についてお話をしていきたいと思います。

「知識」のフォーマットと言語サンプルとはどのようなものか

前回までのお話で、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準は、それぞれ「思考力、判断力、表現力等」と「学びに向かう力、人間性等」という資質・能力が、どのように知識が構造化されたものかということと、深く結びついていることがお分かりいただけたのではないかと思います。そこで、「知識・技能」の評価規準については、「知識及び技能」は、知識がどのように構造化されたものかということから、どのようなフォーマットや言語サンプルになるかについて、お話を進めていきたいと思います。

この連載の、第8回でご説明をいたしましたが、「知識及び技能」の「知識」とは、事実に関する知識が結び付いて構造化されたもの、あるいは中核となる知識(中心概念)に事実に関する知識が結び付いて、さらに構造化されたものだとご説明をしました(知識のネットワーク化)。ですから、評価規準は、事実に関する知識が結び付いて、構造化された知識(概念的知識)を獲得したり、構造化された知識と事実に関する知識を結び付けて構造化していく子供の姿を言語化することが必要になります。

そのため、評価規準のフォーマットも、「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準とは少し異なり、次のようなイメージになります。

「〇〇は△△であることに気付いている(分かっている、知っている、理解している)」
「〇〇は◇◇であり、△△であることに気付いている(分かっている、知っている、理解している)」

このフォーマットにおける〇〇は学習対象であり、△△は概念化された知識、◇◇は事実に関する知識を表しています。

ここのフォーマットに沿って評価規準を設定する場合、学習対象や事実に関する知識について説明の必要はないだろうと思いますが、問題になるのが構造化された知識(概念的知識)の言語サンプルだろうと思います。これについては、ESDの構成概念を参考にすると良いと思います。

国立教育政策研究所は、「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究」をまとめており、その中で、「持続可能な社会づくりの構成概念」として、「多様性」「相互性」「有限性」「公平性」「連続性」「責任性」の6つの視点を示しています。

例えば、総合的な学習の時間で、身近な環境問題について学習したとしましょう。その場合、例えば、「生物は色、形、大きさなどに違いがあり、生育の環境が異なること(多様性)」「身近な自然において、生物はその周辺の環境と関わりながら生きていること(相互性)」「自然環境は、様々な要因で常に変化する可能性があり、一定ではないこと(有限性)」などの、概念的知識の獲得が期待されます。

そこで、例えば、「地元~の海の(海産物)漁は、近年の海水温の上昇や海流の変化によって、漁獲量が大きく減少したことを理解している」というような評価規準が考えられたりするでしょう。もちろん、先の6つの視点については、他の資質・能力の場合と同様、あくまで参考であり、先生が学習対象に合わせ、必要だと考えられる視点を入れていけば良いと思います。

「技能」の評価規準のフォーマットと言語サンプルとはどのようなものか

写真1

次に、「技能」ですが、こちらは方法に関する知識の集合体だとご説明をしました。しかも、それらが連続し、パターン化した一連の知識構造になるとともに、それらが体の動きと一体になって、自動的に行えるようになったものです。

ですから、「技能」に関する評価規準のフォーマットは、次のようになるとよいでしょう。

「〇〇において(について)、△△しながら(して)、□□している」

このフォーマットの、〇〇は活動や場面、状況で、△△には方法に関する知識の質的な違いを、□□は方法に関する知識による行為を入れていくとよいでしょう。例えば、リコーダーの学習で、「(曲名)のAパートを演奏するとき、いつも変わらず滑らかにタンギングを使って演奏している」というような評価規準が考えられるのかもしれません。

評価規準によって指導の仕方が明確になる

このようにして、3つの観点の評価規準が設定できると、日々の指導の仕方も、より明確になっていくのがお分かりになるのではないでしょうか。

例えば、子供の学習態度について、「友達と一生懸命対話している」と評価規準を設定していたときには評価のポイントが曖昧でしたが、「友達の意見を認めて受け入れ、参考にしながら対話している」と言語化できれば、ポイントが明確になります。

そうなると、当然、授業にそのような対話の場面を設定することになるはずですし、授業中も、子供たちのそのような態度を意識して見取り、評価し、価値付けするはずでしょう。つまり、評価規準を明確にすることによって、具体的な授業デザインや手立てが明確になり、これまで漠としていた態度形成が、より実現可能性の高いものになっていくと思います。それは、「知識・技能」や「思考・判断・表現」でも同様ですよね。

このような意味があるからこそ、「学習評価」に関するお話の最初に、設定することが、より授業を豊かなものにしていくはずだとお話をしたのです。

さて、ここまで評価規準の設定の仕方についてご説明をしてきました。そこで、設定した評価規準を実際の授業の中で、どのように見取っていくかということについて、お話をしていきたいと思います。

【田村学流「単元づくり・授業づくり」】次回は8月12日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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