子供の学びを見とる力は、どのように身に付けていけばよいか?【田村学流 単元づくり・授業づくり#19】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
子供の学びを見とる力は、どのように身に付けていけばよいか?【田村学流 単元づくり・授業づくり#19】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

子供の学びを見とる力の育て方

前回、子供の学びを見とるための3つの軸についてお話をしましたが、今回は、そのような軸に沿って、子供の学びを見とる力をどのように身に付けていけばよいか、について考えていきます。

子供の学びをおもしろがり、ていねいに事実を書き取っていく

前回、「時間軸」や「空間軸」そして「規準の軸」によって、子供の学びをより的確に見とることができるとお話ししました。しかし、若い先生が、すぐに子供の多様な言動を「空間軸」で見とったり、それらを継続的に「時間軸」で見とったりしていけるかというと、それは難しいだろうと思います。ですから、授業研究などの機会を通して意図的に見とる力を付けるような取り組みをしたり、日々の自分自身の授業を通して、見とる目を磨いたりしていくことが必要でしょう。

そのような見とりを始めるときの心がけとして参考になるのが、私の先輩で、生活科・総合的な学習の時間を専門とされている、ある先生のお言葉です。その先生は、よく「おもしろがることが大事だ」とおっしゃっていました。子供の姿を、「できた」「できない」と◯×で判断するのではなく、「ああ、この子はこんなふうに取り組むのか」とか、「あの意見でこんなふうに変わるのか」とおもしろがって子供の姿を捉えることが大事だというわけです。

子供の表現や振る舞いは、本当に多様にあります。言葉の選び方はもちろんのこと、ちょっとした手の動きや指の動かし方も子供によって異なりますし、場面によっても変わってくるでしょう。しかし、「できた」「できない」、「到達した」「到達しない」という◯×目線で見ていたのでは、その細やかな違いや変化に気付けないかもしれません。そうではなく、子供の小さな変化を楽しみながら見とるというわけですね。

特に若い先生であれば、研究授業などに臨むとき、そのような「おもしろがる」姿勢で、誰が何を言って何をしたかという事実をていねいに書き取っていくことが大事だと思います。そこから、1時間の中の言葉や行動をつなげて、「~」と言っていたAさんは、そのときこんな表情で、その後、Bさんの異なる意見を聞いているときには大きくうなずいてメモをとっていたと、「空間軸」で見とることもできます。あるいは、Aさんは最初、隣のCさんと話すとき「~」と言っていて、その後、Bさんの意見を聞きながらうなずいてノートに「~」とメモし、最後にまとめで「~」と書いていた、と「時間軸」で見とることもできます。そして、それらを「基準の軸」で精査することによって、見とる目が磨かれていくのです。

そうした、細かなものが見え始めると、若い先生方にとっても、授業をすること、評価をすることがとても楽しくなるだろうと思います。これまで見えていたものは、もしかしたら限定的で一面的なものだったのではないでしょうか。それに気付く機会ができるかもしれません。もちろん、そのような新たな見とり方ができるようになるためには、「時間軸」「空間軸」「規準の軸」で見ていくことが大切なわけです。

子供の学びが細やかに見えてきはじめると、授業し、評価することも楽しくなる。
子供の学びが細やかに見えてき始めると、授業し、評価することも楽しくなる。

短時間のふり返りを続けて行うことで、自分の見とりの偏りが見えてくる

そのような授業研究を通して見とる目を磨く機会は、残念ながらそう頻繁にはないでしょう。そこで私は、自分の授業を録画して、動画を見直しながら記録し、ふり返るようなこともしていました。

しかし、それにも一定の時間が必要ですから、常にできるわけではありません。そこで、私が若手の頃にやっていたのは、放課後に、その日の子供たちの言動を書き出すことでした。例えば、放課後の3時45分から4時までの15分間といったわずかの間、少しだけ空くことがあると思います。そんな時間に、座席表を準備して教卓の所に座り、担任する学級の子供たちを思い出しながら、「ああ、Aさんはこんなことを言っていたな」とか、「Bさんは、こんなことをやっていたぞ」と1日をふり返りつつ書き出していくのです。

単位時間の子供の姿を継続的に見るようなことはたまにしかできませんが、これなら毎日できます。実際にこれをやってみると、きっと偏りがあることに気付くはずです。30人なり、35人なりを対象に書き出していくと、たくさん書ける子とほとんど書けない子が出てくるものです。そこに、自分の見とり方のアンバランスさが如実に表れてくるわけです。

あるいは、書き出したものをていねいに見直してみると、子供のつぶやきがほとんど拾えてないということが見えてくるかもしれませんし、動きや表情が的確に捉えられていないことに気付くかもしれません。それが分かると、「もっとこんな子に、もっとこんな点に注目しながら見てみることが必要だぞ」と考えられるようになるでしょう。

そのように、3つの軸を意識しながら、子供の言動を見とる練習をしていくことで、どの先生でも少しずつ子供の学びを見とる目が育っていくのだと思います。

ここまで、評価規準の設定の仕方や見とりの方法についてお話をしてきました。次回はそのような「学習評価」を行ううえで、気を付けておきたい、間違えやすい点について触れていきます。

「学習評価」の際に起こりやすい混乱とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#20】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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