「学習評価」の際に起こりやすい混乱とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#20】

連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
「学習評価」の際に起こりやすい混乱とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#20】

この企画では、元文部科学省視学官であり、現行学習指導要領の策定にも尽力された、國學院大學・田村学教授に、「単元づくり・授業づくり」をテーマとした連載をしていただきます。

「学習評価」について先生方が間違えやすいこと

前回までに、子供たちの学びを見とるための軸や、見とり方を身に付けていくための方法についてお話をしました。今回は、それを受けて「学習評価」に関して、気を付けておきたい、間違えやすい点について考えていきましょう。

形成的評価と総括的評価の取り違え

子供の学習を見とったら、それを基に評価をしていくわけですが、「学習評価」に関する先生方の議論や、先生方から出てくる疑問点を聞いていると、ときどき「錯綜しているな」「混乱しているな」と感じることがあります。その原因は、形成的評価と総括的評価とが渾然一体となって議論されるために起こることが大半だと思います。

子供の学びを見とることが大切だということは、誰しも納得し、異論のないところでしょう。しかし、「そのような見とりはどのように評定につながるのですか?」とか、「その見とりを毎時間、全員に行うことができるのですか?」という疑問が生じ、そこで意見が混乱していることがよくあるのです。それはまさに、形成的評価と総括的評価を混同して捉えているために起こる疑問だと思います。

その混乱を起こさないためには、形成的評価や総括的評価とは何なのかを知ることが必要です。

形成的評価と総括的評価とはどのようなもので、どのように行っていくものなのか

まず、形成的評価についてご説明をしますが、これは指導改善のための評価と捉えればよいと思います。「目の前の子供たちがこうなっている」ということを捉える評価であり、「では、こう指導改善をしよう」と考えていくためのものです。それは端的に言えば全ての時間の、全ての場面で生じ得る評価ですし、意識的か無意識なのかは別にして、現実に先生方は常に行っている評価だと思います。

例えば、子供たちが独力で課題の解決に取り組んでいるとき、一人の子供がどうしても独力では考えが進まずに「う~ん…」と考え込んでいたとしましょう。すると、先生が「以前、似たようなことを勉強しなかったかな?」と言って、ノートを見返すように促すとか、「これを参考にして考えてみようか」と参考資料を与える、というようなことは常に行っていることだと思います。このとき先生は、子供の学習状態を見とり、評価して、どのような支援をすべきかを決定しているわけです。そのように日常、常に行っているのが形成的評価です。

形成的評価は常に行っている指導改善のための評価。
形成的評価は常に行っている指導改善のための評価。

それに対し、総括的評価は評定にするための評価と考えればよいでしょう。

評定にするための評価なのですから、総括的評価は例えば、15時間の単元があったとして、毎時間、全観点で行う必要はありません。最終的には評定に向かうために、その単元で求められる資質・能力を顕著に見とることができる場面で行えばよいのです。

加えて、すべての子供たちをそこで評価できる状況であることが必須になります。例えば、この授業では全体の半分の子供たちを評価し、その他は評価しないというようなことがあると、アンフェアになってしまいます。ですから、「この時間なら、子供たちの記述を全員から集められる」というような場面で行うことが考えられます。

ですから、単元の中のいくつかの場面が限定的に選ばれることになり、「15時間の単元だけれど、この資質・能力はこの時間で、この資質・能力はこことここの時間で…」となっていくわけです。それは、その資質・能力を大きく働かせる時間であったり、単元の中での成長が見とりやすい複数の時間であることはお分かりいただけることだろうと思います。

そこで集めたすべての子供の学習の成果物(ノートやワークシート、製作物やテストなど)を基に、学校(学年)で決定した評価規準を根拠に評価していきます。その評価結果を基にして例えば、複数の単元がある場合、ABBならどう評価するのかという自治体や学校のルールに基づいて集約していき、その結果として評定を出していくのが総括的評価です。

この性質の異なる形成的評価と総括的評価が、渾然一体となって議論されることがあるため、「毎時間評価するのは無理ではないですか?(総括的評価を形成的評価と同様に毎時行うべきだと勘違いをしている)」という疑問が生じたり、逆に「毎時間評価しなくてもいいんですか?(毎時行っているはずの形成的評価を総括的評価と混同して限定的に行うべきだと勘違いしている)」という声が出てきたりするわけです。

このように、形成的評価と総括的評価の違いが分かると、学校や学級における評価活動がすっきりと整理されるのではないでしょうか。

さて、では次号以降、「学習評価」をどのように進めていけばよいかといった、評価計画などについてお話を進めていきたいと思います。

「指導と評価の一体化を図る」とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#21】はこちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

【関連記事】
田村学流「単元づくり・授業づくり」シリーズはこちら!
・指導と評価の一体化を図るうえでの課題と効果とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#24】
・指導の精度を上げる、指導計画と評価計画の一体化の方法とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#23】
・編著書『探究モードへの挑戦』刊行特別インタビュー【田村学流 単元づくり・授業づくり#00】
・指導と評価の一体化を図る手順は?【田村学流 単元づくり・授業づくり#22】
・「指導と評価の一体化を図る」とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#21】
・「学習評価」の際に起こりやすい混乱とは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#20】
・子供の学びを見とる力は、どのように身に付けていけばよいか?【田村学流 単元づくり・授業づくり#19】
・評価規準に沿った学習状況の見とり方はどうすればよい?【田村学流 単元づくり・授業づくり#18】
・「知識・技能」の評価規準のフォーマットと言語サンプルとは?【田村学流 単元づくり・授業づくり#17】
・「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準の言語サンプルは何を参考にすればよい?【田村学流 単元づくり・授業づくり#16】
>>もっと見る

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
田村学流「単元づくり・授業づくり」

國學院大學人間開発学部教授

田村学

授業改善の記事一覧

雑誌最新号