椅子を後ろに倒して座る子供に対して行う3つの効果的な指導法

東京都公立小学校教諭

松原夢人

授業中、椅子を後ろに倒してグラグラさせながら、悪い姿勢で座っている子供を見かけることがあります。教員としては、そのまま後ろに倒れて後頭部を打ってしまうことも予見できるので、直ちにやめさせたいところですよね。しかし、子供に「やめなさい」といくら指導しても改善が見られず、困ってしまうことも多いのではないでしょうか。この記事では、東京都公立小学校の松原夢人先生に、ご自身の経験から4つの指導法を紹介していただきました。

学校の椅子
イラストAC

執筆/東京都公立小学校教諭・松原夢人

「注意する」以外のアプローチを知ろう!

学級には必ずと言っていいほど、椅子を後ろに倒してグラグラさせながら悪い姿勢で座っている子供が見られるものです。「やめなさい」「ちゃんと座りなさい」と言うと一時的には直しますが、すぐに元に戻ってしまいます。

私も若手の時は、子供を指導しても言うことを聞いてくれなくて苦労しました。しかし、今は様々な指導法を身に付けることができたので、椅子を後ろに倒して座る行為を確実にやめさせることができます。

ぜひお読みいただいて、指導の参考にしていただきたいと思います。

1 ケガのリスクを伝える

椅子を後ろに倒して座ってしまうと、そのまま倒れ込んでしまい、床に後頭部を強打するリスクが極めて高くなります。後頭部を強打すれば、頭痛、吐き気、めまい、ろれつが回らない、手足が痺れる、痙攣が起こるなど症状が起きる可能性があります。外傷がなくても、脳内で出血がある場合があるので、すぐに病院に行かなければならない案件です。最悪には、後遺症や死に直結します。だから、椅子を後ろに倒して座ることは、絶対にやってはいけません。

このことを学級開きの際、あるいは適宜伝えて、「授業中における座り方・姿勢」について指導するとよいでしょう。

事故が起きた事例を含めるとさらに効果的です。
以下は、私が中学3年生の時、実際に体験した話です。

授業中、クラスの友達が椅子に座った状態で後ろに転倒し、後頭部を強く打って、痙攣したまま起き上がらなくなりました。
そして、救急車で病院に運ばれたのです。
頭蓋骨にひびが入る大ケガでしたが、後遺症はなかったのが不幸中の幸いです。
打ちどころが悪ければ、どうなっていたか分かりません。
後頭部を強打した友達は、普段から椅子を後ろに倒してグラグラした姿勢をとることが多い傾向がありました。
担任の先生からも何度か注意を受けていましたが、「大丈夫だろう」と高を括っていたのでしょう。
事故が起きてから数十年経っていますが、その状況を鮮明に覚えているくらいショックな出来事でした。

この話を「どこかの学校で実際に起きた事故です」と子供たちに説明すれば、説得力が増すでしょう。

2 床を傷つける要因になると伝える

教室は来年も再来年も、この先ずっと使用します。つまり、教室はみんなのモノです。そのことを認識させた上で、床を傷つけないようにするためには机や椅子の運び方だけでなく、座り方にも気をつけようと注意喚起します。

椅子の足には床が傷つかないように、クッション性の素材がつけられている場合があります。

もし、後ろに倒して座って、クッション性の素材ではなく、椅子の足の金属部分が床に接触してしまうと、間違いなく傷がつきます。何年も使用している教室なら、相当な傷が床についていることでしょう。新しい教室なら床の傷が目立つはずです。

これ以上傷を増やさないために、椅子の座り方・扱い方について指導する必要があります。

3 保護者との協力体制を組む

学校だけでなく家庭でも、同様の座り方をしている場合があります。

椅子を後ろに倒しながら宿題や自主学習などの勉強をやっているのであれば、その姿勢をそのまま、授業でも無意識に行ってしまうでしょう。

そうならないためにも、家庭学習の時はどのような座り方をしているのか、個人面談や保護者会、学校公開などで情報を収集し、保護者と協力体制で指導していくことが求められます。

もし、家庭でも後ろに倒して座っていることが分かれば、教員と保護者が相互に指導に当たることで改善が期待できるでしょう。

椅子の座り方が悪いと背骨の歪みや首・肩・腰の痛みを引き起こし、その不快感から集中力が学力に悪影響を及ぼすことを、保護者に伝えましょう。また、後頭部を強打するリスクがあることも話しておく必要があります。

きっと保護者は納得して、家庭でも指導してくれるはずです。


教員は「安全配慮義務」を負っています。安全配慮義務とは、「子供の生命あるいは心身の安全を確保し、予測できる事件や事故を防ぐ義務」という意味です。

子供が椅子を後ろに倒して座ることによって、転倒して後頭部を強打することが予測できます。それを事前に防止し、子供の命を守るために指導する必要があります。そのことを子供たちや保護者に十分に理解してもらえるよう、丁寧な指導と説明を心がけましょう。

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