子供の個性同様、先生の個性も大事!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑥】

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全国「授業実践レポート」 取材こぼれ話
子供の個性同様、先生の個性も大事!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑥】

全国での取材校数900に及ぶ「教育技術」担当記者が、取材時の学校現場で見聞きした、先生方の役に立つ、ちょっとしたネタを披露します。

担任の先生と子供たちの個性によって授業は決まる

以前、ある高名な研究者の方に、授業づくりについて取材させていただいたときのことです。学習指導要領の目標をベースにしながら、学校の教育目標や先生自身や保護者の願いを踏まえたうえで、何よりも子供たち自身の実態に沿って、単元や授業をつくっていくことが重要だという話を伺っていました。

そのとき「きちんと学習指導要領の目標を理解し、めざすべき子供の姿を明確に描けていれば、多様な授業の工夫が可能になる」という話になっていったのです。そこで私は、「学習指導要領の目標を踏まえたうえで結局、最後は担任の先生と子供たちの個性によって授業は決まるのですよね」と話し、そこからいろんな授業のあり方について、話が広がっていきました。

実は、この「授業は先生と子供たちの個性の間で生まれるもの」ということを強く実感する、ある授業を見たことがありました。

ズレを起点に対話を広げることもなく、先へと進む授業

以前、ある学校でベテランの先生の授業を拝見していたときのことです。それは中学年国語の物語文の授業で、場面ごとに主人公の心情の変化を読んでいくものでした。

すでに物語の全体を読んできている子供たちは、用意されたプリントに向かって主人公の心情を場面ごとに整理をしていきます。そのプリントを見ていると、主人公の心情について子供たちの間で読みに大きな違いが出ている場面が1箇所ありました。

近年の国語の授業では、一般的にはそういう読みの「ズレ」が生じている場面を取り上げ、どの叙述を基にそう読み取っていったのかを展開していく授業を見ることが非常に多くなりました。その過程で、「この部分からこう読める」「いや、こっちの部分からこう読めると思う」というように、どのような叙述を基にそう読み取ったのかを発表しながら対話を展開。そのような対話を通して、場面によってはより妥当な読みを求めたりもするでしょう。あるいは、いずれの読みも可能であれば、多様な意見を出した後で、全員が心情を読み取った叙述をふり返り、例えば、情景からも心情を読み取ることができるといった指導事項を押さえたりしていくでしょう。

このときも、おそらくそのような授業展開になるだろうと想像しながら見ていたのです。

このときの授業では、全体で交流する場面で、前の場面から順番にそれぞれの読み取った心情と、それを読み取った叙述について発表がなされていきました。やがて心情に関する読みの違いが顕著に表れている場面にきたのですが、「私はこう思う」「私はこう読んだ」というそれぞれの読み取りの違いを発表していきます。しかし「この叙述によると、こちらの読みのほうが妥当ではないか」といった議論には至らず、「あなたはそう読んだんだね」「そういう読み方をする人もいるんだね」と両方を受け入れ、特にズレを起点に対話を広げることもなく、先へと進んでいったのでした。

私はそのような授業展開を、なんだか物足りない気持ちで見ていたのです。

性格的に合わない授業は行わない

授業後、最近は読みの異なるポイントを取り上げ、そこを起点に対話をしていくような授業が多いということに触れたうえで、この日の授業でもそのような授業展開になるかなと思って見ていましたが、実際にはそういう展開にしなかったのはどうしてか、お尋ねしました。するとその先生は、おおむね次のようなことをおっしゃいました。

「私は、若いころから多様な研究会に参加させていただいて、いろんな先端の授業方法も勉強させていただきました。実際に、そこで学んだことを私自身も取り入れて授業をしたことがあります。もちろん、今のお話にあったような授業も知っています。しかし、私には言葉にこだわってギリギリと議論をしていくような授業は、どうしても(性格的に)合わないと感じたのです」

そうおっしゃる先生に対し、「学習指導要領が求める力を育むためには、読みのズレを捉え、叙述にこだわって対話をしていったほうが効果的だと考えられるからこそ、そのような授業の展開が増えてきているのだと思いますが?」とさらに尋ねます。

すると「多様な考え方に触れていれば、あるとき、子供はポンと階段を上がるように『ああ、あのときのあれは…』と成長する瞬間があります。私はそれを待ちながら、声かけをしたりしていきます」といったことをお話しになりました。

そのお話を聞いて、「性格的に合わない」という言葉を、私はとても重いものだと感じました。結局授業を行うのも、その授業で思考し、成長していくのも個性をもつ人です。当然、学び手である子供の個性は尊重すべきだと思っていましたが、もう一方の先生の個性も尊重されるべきなんだな、と強く感じたのです。

もちろん、学習指導要領が求めているものを実現できなければ、「それも個性」と認めることはできません。しかし、その実現を見据えたうえで、「子供たちの成長を見て、多様な考え方に触れる機会を多くつくり、地道な声かけをして待つ」のであれば、それは個性として認められるべきなのだろうと感じたのです。

写真1
グラフの余白がいらないという子供に実物を切らせる先生。学習指導要領が理解できていれば、こんなドキドキする授業も自在にデザインできる。

「学習指導要領が理解できているかどうか自信がない」とおっしゃる先生もいらっしゃいます。しかし、本当に自分なりの自由な授業や単元をつくりたいと思ったら、しっかり学習指導要領を読み込んでみることが大切だと思います。その理解に自信があれば、本当にその先生自身の個性を生かした、その先生なりの授業ができるのだと思うのです。そして、それはきっと先生の個性に合った楽な方法になるはずだし、何より子供たちにとっても楽しいものになるのだと思います。

授業中、先生の言葉だけでなく、動きも大きな意味をもつ!【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話⑦】はこちらです。

執筆/矢ノ浦勝之

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