授業名人が話す、よくない研究授業の見方とは?【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話③】

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全国「授業実践レポート」 取材こぼれ話
タイトル 全国「授業実践レポート」 取材こぼれ話③

全国での取材校数900に及ぶ「教育技術」担当記者が、取材時の学校現場で見聞きした、先生方の役に立つ、ちょっとしたネタを披露します。

研究授業を見る際、指導案通りかどうかを確認するだけでは無意味

前回、授業の見方についてお話をしてきたので、今回もそれに続けて、研究授業の見方から話を進めてみましょう。

以前、授業名人として名を知られたある先生に、授業づくりの考え方についての取材でお目にかかったときのことです。記事の中心となるお話を伺い終えて、自然と教育雑談になっていきました(実は私自身にとっては、取材の本筋以上に、この雑談の部分が一番おもしろく、大好きな時間なのです)。その話の中で先生が、どういう経緯だったか、研究授業の見方についてお話をされ始めたのです。

その先生は「研究授業を見るときに指導案が配られるけれど、その指導案をずっと手に持って見ながら授業を見ているタイプの人と、ほとんど指導案を見ずに授業を見ているタイプの人がいる」とおっしゃるのです。

私は「そうですか。私自身は指導案を見ながら授業を見る習慣がありません。子供や先生を見ることばかりで、あまり周囲の先生に気を配っていなかったので、気が付きませんでした」とお話ししたのです。実際、私たちの取材では、指導案のない日常の授業を拝見することが少なくないのです。

もちろん先生によっては、「記事になるのなら指導案を作りましょうか?」と言われたりしますし、何も言わずに用意をしてくださっている先生もいらっしゃいます。しかし、本務にご負担をかけるのがとても申しわけないので、「無理に作成していただく必要はありません」とお答えしています。そのため、指導案のない状況で授業を拝見することが少なくないわけです。

加えて、子供や先生の写真を撮ることに注力しつつ授業を見ているため、指導案があっても、それを見ながら授業を見るということが、現実に難しいところもあります。

ただしそのおかげで、子供たちと同じ気持ちで、「先生は私をどこへ連れていきたいのだろう?」というような、ワクワク感をもちながら、(とは言っても、取材が仕事ですから、先生のねらいや場面ごとの意図も推察しつつ)授業を見る習慣が付いているのです。

そんな話をすると、その授業名人の先生は「指導案をずっと見ながら見ている先生は、指導案に書かれたことが実際に起こるのを確認するために見ているのです」とおっしゃったのです。「そんな事実確認をするだけのような見方に、なんの意味があるのですか?」と尋ねると、意味はない、それでは得るものがないという意味のご返答をしてくださったように記憶しています。

やはり、指導案に書かれたことを確認するのではなく、目の前で起こっている子供の言動や学習過程での変化を見ながら、先生の言動の意義を考えていくことのほうが大切だというわけです。

研究授業でしっかり子供の様子を見とろうとする先生方

学習者である子供の視点へと転換が図られた、現行学習指導要領

実は、現行の学習指導要領が出された後、今回の改訂について中心的な立場で議論に加わった、ある研究者の先生にお話を伺ったとき、「これからの先生には子供たちの実態を的確に見とる目が求められる」という意味のお話をしてくださいました。

前回でも触れましたが、現行学習指導要領は学習者である子供の視点へと、大きな転換が図られました。だからこそ、この専門家の先生も、先の授業名人の先生も、子供の実態や変化を言動から読み取りながら授業を見ていくことが大切だと言うわけです。

加えて私見を述べるならば、授業者の言動を見つつ、「私なら、子供たちを相手にどうするだろうか?」と考えていくことが大切なのではないかと思います。私の場合は当然、担任する子供たちがいるわけではありませんから、先生の言動からその意図を推察しつつ、「ああ、おそらくこんな意図なのだな。それをこんな方法で行うとはすごいな!」と感動したり、「その意図ならば、こうしたほうがもっと子供たちが深く思考してくれるのではないかな」などと、別案を考えたりしながら授業を見るようにしています。

正直言って、研究授業を見るとき、どれくらいの割合の先生が、指導案を見ながら、その通りのことが行われるかどうかを確認するだけという見方をしているのかは分かりません。ただし、それでは意味がないと研究者も卓越した授業者も、加えて余計ではありますが、私も考えているということです。

ちなみに現行学習指導要領は、「主体的・対話的で深い学び」を通して、子供たちに資質・能力を育んでいくことを求めています。それと同時に、先生自身も「主体的・対話的で深い学び」を行っていくことを求めると、文部科学省はアナウンスをしています。

せっかく、大事な子供を教室に残して研究授業を見に行くのであれば、事実確認などに時間を費やすのではなく、「自分ならどうするかな?」と主体的に思考しつつ見てみてはいかがでしょうか。それであれば、きっと自分の担任する子供たちにも還元できる部分が多くなるのではないかと思います。

指導案はあくまで案! 捨てる勇気も必要【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話④】はこちらです。

執筆/矢ノ浦勝之

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