小2算数「かけ算(2)」指導アイデア(12/17時)《3倍した長さを比べる方法》
執筆/富山県公立小学校教諭・山本真裕
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、前・富山県公立小学校校長・中川愼一

目次
本時のねらいと評価規準
(本時12/17時 九九の構成の後のかけ算の意味の拡張)
ねらい
同じ倍数をかけても、もとの数の大きさが異なれば、かけ算の答えが異なることを考える。
評価規準
もとの大きさの違いに着目し、同じ倍数をかけても、もとの大きさの大小によって、かけ算の答えも大小することについて考えている。(思考・判断・表現)
問題場面(じゅんび)
ミニカーが1台あります。 2ばいの台数に色をぬりましょう。3ばいの台数に色をぬりましょう。

問題
ミニカーの長さは4cmです。 ミニトラックの長さは6cmです。 それぞれ、3ばいの数をたてになら べると、どちらが長いですか。

はじめに「2つ分が2倍、3つ分が3倍」ということを算数用語として指導します。ミニカーは、一つ一つの大きさの誤差も少なく、同じ大きさのものが複数ある場面も違和感のない素材です。準備の問題として、色塗りをさせると取り組みやすく、理解を促せます。「倍」の意味をみんなが理解した後で、問題場面を提示します。
ミニカーとミニトラックの数をどちらも3倍にします。どちらが長くなると思いますか。
どちらも同じ3倍だから、長さは同じになると思います。
もとの長さが違うから、同じ長さにはならないと思います。
もとの長さが長いミニトラックのほうが、長いはずです。
かけ算が使えそうです。
ミニカーとミニトラックのどちらが長くなるのかを予想させ、 自力解決の時間を取りましょう。
学習のねらい
ミニカーとミニトラックを3倍した長さを比べる方法を考えよう。
見通し
どちらも、3つ分の長さを調べればよさそう。
自力解決の様子
A つまずいている子
同じ3倍だから、同じ長さになる。(3倍を操作の回数として捉えている)
B 素朴に解いている子
ミニカー 4×3=12
ミニトラック 6×3=18
12cmのミニカーより、18cmのミニトラックのほうが長い。(3倍した長さを比較している)
C ねらい通りに解いている子
同じ3倍するのなら、もとの数が大きいほうが長くなる。(もとにする1つ分の長さに着目している)
学び合いの計画
話合いの早い段階で、ミニトラックのほうが長いという結論を全体で共有しましょう。ミニトラックのほうが長いという結論に向かって話合いが進むことで、子供たちは自分の考えに自信をもって話合いに参加できます。そのうえで、ミニカーとミニトラックをどうやって比べて、ミニトラックが長いという結論を導き出したのかについて、話合いを深めていきましょう。
ミニカーとミニトラックの長さを比較する方法として、①具体物・半具体物、②図(テープ図)、③式などの方法が考えられます。子供たちは、かけ算九九の習熟に時間をかけてきているため、式だけで考えようとする子もいると考えられます。
式と図を結び付けて考えることができるよう、根拠を尋ねるなどして、図(テープ図)と結び付けて話合いを深めていくことが大切です。視覚的な提示によって「倍」の感覚を養うことや、「倍」についての見方・考え方を育んでいくことも重要です。
ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
車よりもトラックのほうが大きいという生活経験からの知識を数や算数用語に置き換えて説明できるように支援することが必要です。
子供は3台のミニカーとミニトラックが並べば、ミニトラックのほうが長くなることを感覚的に察することができるでしょう。しかし、子供たちの捉え方は一様ではありません。例えば、「かけ算の答えの大きさが大きいほうが長い」「3台目の頭の位置を比べて、より前に出ているほうが長い」「そもそも1台目の長さが違うのだから、トラックのほうが長い」などです。これらの違いを式や図を用いて話し合うことが大切です。
ミニカーは四 ・三12で12cm、ミニトラックは六・三18で18cmだから、ミニトラックのほうが長いです。
かけ算九九を使って考えたのですね。
かけ算を使わなくても比べられると思います。
1台目のときに4cmと6cmで、もうトラックのほうが長いから、3台目まで計算しなくてもいいと思います。
本時のまとめ
- 〇倍した大きさは、かけ算を使って求めることができる。
- 同じ倍をするなら、もとにする大きさが大きいほうが答えも大きくなる。
評価問題(ワークシート)
①赤テープの 4倍の長さのテープはどれですか。
②黄テープは、白テープの何倍ですか。

解答 ①青テープ ②4 倍
本時の評価規準を達成した子供の具体の姿
もとの長さに着目して、4倍した長さを考えている。
感想例
同じ3倍(3つ分)でも、もとにする長さが違えば全体の長さが違うのは、かけ算だからと分かりました。
イラスト/松島りつこ・横井智美
『教育技術 小一小二』2020年11月号より