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「膝掛け後ろ回り」(後方片膝掛け回転)の授業はどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #81】

連載
使える知恵満載! ブラッシュアップ体育授業
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筑波大学附属小学校教諭

平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

「膝掛け後ろ回り」は、膝裏を回転軸として後ろに回る運動です。「だるま後ろ回り」の後に扱うことがおすすめです。後ろへの回転感覚を高めておくことで、大きく回転するために必要な、頭や上半身を後ろに勢いよく落とし込む動きに取り組みやすくなります。共通課題の授業の中で、「わかった!」「できた!」につなげていきましょう。

執筆/新潟県公立小学校教頭・酒井慎一郎
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川譲

1 だるま後ろ回りとの共通点

① 回転軸を固定する
膝掛け後ろ回りは、曲げた膝関節を鉄棒に引っ掛けることで回転軸を固定します。だるま後ろ回り(股関節と肘で固定)と固定させる体の部位は異なりますが、だるま後ろ回りと同様、回転軸を固定させることが大切です。

② 回転半径を大きくしたり、小さくしたりして回る
膝掛け後ろ回りは「肘の曲げ伸ばし」、だるま回りは「膝の曲げ伸ばし」と、曲げ伸ばしの部位は違いますが、回転半径を大きくしたり、小さくしたりして回転することは、「だるま回り」と共通しています。他の回転運動にも共通するポイントでもあります。

③ 連続回転や技のアレンジを楽しめる
膝掛け後ろ回りは、連続回転で楽しむことができます。だるま回り同様、連続回転は子どもたちの動機付けを高めます。左右の足を替えて回転する、両膝を掛けて後ろに回転するなどの、アレンジや発展技を楽しむこともできます。

2 膝掛け後ろ回りの運動ポイント

膝掛け後ろ回りの開始時に、鉄棒の上に片足を乗せてバランスをとることを難しく感じる子どもがいます。この局面を排除して、片膝を鉄棒に掛けて、反対の足は地面に着けた姿勢からスタートすることをおすすめします。

図表1

以下、授業の進め方を紹介します。授業は、1時間2教材の構成で進めます。だるま後ろ回りを経験していない場合は、次の予備的な運動を取り入れるとよいでしょう。

3 膝を掛けて振ってみよう

身長順の学習班で行います。鉄棒は臍(へそ)(へそ)より少し高い位置にしましょう。地面に足を着けた状態で始めます。勢いよく5回程度振ったら交替します。肘の曲げ伸ばしに合わせて、「曲げて~伸ばして~」と班で声を掛けるようにしましょう。
後方に足を振る時に、鉄棒から離れすぎて勢いがつかない場合は、鉄棒に足の付け根がつくように、伸ばした足の腿を持って補助します。肘を曲げたまま振り、回転が小さくなっている場合は、背中を支えて軽く振りながら「伸ばして~」と声を掛け、肘を伸ばす感覚がつかめるようにします。あごが大きく開いてしまう場合は、「鉄棒を見ながら振るよ」と声を掛けましょう。 授業の導入時に、基礎感覚を高める運動と合わせて繰り返し取り組むことで、徐々に大きく振ることができるようになってきます。

図表2

4 膝掛け後ろ回りに挑戦しよう

⑴ はじめの姿勢を確認しよう

頭や上半身を後ろに勢いよく落とし込む動きを怖く感じて、イラストAのような構えになる子が出てくる場合があります。この構えからでは、回転半径が小さくなり、スピードも上がりません。
教師がAとBのお手本を示し、「AとB、どちらが勢いよく回れるかな?」と発問し、肘や背中が伸びていることに気付かせたり(観察時の集合については、#55<だるま回り!連続で回転するにはどうすればいいの?>参照)、「肘OK?」「背中OK?」「膝OK?」と子ども同士で確認し合うようにしたりしましょう。

図表3

⑵ お手伝いで回ってみよう

① 勢いよく回転するためのポイント
後ろに大きく、勢いよく回転を始められれば、お手伝いで回ることができます。勢いよく回転するためには次の2つのポイントが大切です(前述の「2 膝掛け後ろ回りの運動ポイント」のイラストを参照)。
両肘と背中を伸ばして、あごを開き、肩から大きく回転すること(イラスト③)
鉄棒に掛けていない足を鉄棒につけて回転の勢いを増すこと(イラスト④)
この2つのポイントは教師が示し、子ども同士で確認しながら練習を進めるように指示しておきます。  
観察の視点と助言・補助の仕方は以下の通りです。

<回転が始まった直後に肘が曲がり、腰が落ちる>
勢いよく回転するためには、膝を軸にした後ろへの倒れ込みが重要です。「回るときは肘と背中を伸ばす」「あごを開いて天井を見る」ことを意識付けましょう。「トン・トン・天井」(「トン・トン」はその場で軽くジャンプする予備動作のこと)といった合い言葉が効果的です。

図表4

<振り足が鉄棒から離れたまま回る>
振り足が鉄棒から離れていると、肩が回りにくくなり、回転が止まってしまいます。足を鉄棒につけるように振ることで回転の勢いがつきます。足の付け根を鉄棒につけるようにして足を振り上げるように助言しましょう。

図表5

<強く鉄棒を握りすぎて手首を返せない>
鉄棒を強く握りすぎると途中で回転が止まってしまうことがあります。手首が固定されるため回転後半で手首が返せず、鉄棒を押して起き上がれなくなります。このような場合は、次のお手伝いで回転する中で、手首の返しの感覚をつかめるようにしましょう。

② お手伝いの仕方
肩を持って上半身を上げます。回転が始まったらすぐに肩を支えて、回転に合わせて持ち上げることで、お手伝いがしやすくなります。2人でのお手伝いから始めて、軽くなってきたら1人に減らします。1人のお手伝いで回れたら、お手伝いで3回成功させることを目標にし、回転感覚を徐々に高めていきましょう。

図表6

③運動観察場面・思考場面の設定
お手伝いで回ることに慣れ、1人で回れそうな子が何人か出てきたら、運動観察場面を設定することがおすすめです(観察時の集合については<だるま回り!連続で回転するにはどうすればいいの?>参照)。
「回りはじめに伸ばしていた肘がどうなるか見ていてね」と観察の視点を定めると、肘を曲げる動きに気付きやすくなります。その後、「いつ肘を曲げているかな?」と発問し、「回転の後半」「頭が上がってくるとき」などと、肘を曲げるタイミングを確認するとよいでしょう。
だるま回りの既習を生かした思考場面を設定することもできます。「だるま回りと似ているところは何かな?」と発問し、「肘を曲げるタイミングが、だるま回りの膝を曲げるタイミングと同じであること」「頭が上がってくるタイミングで肘を曲げて回転を小さくしていること」「肘を曲げて大きな回転を小さくして頭を上げていること」などの気付きを促したり、解説をしたりするのもよいでしょう。

「回りたい」という思いをもった子どもたちに運動観察場面や思考場面を設定することで、活動がより活性化し、1人で回れる子が増えてきます。教師は、「もっと勢いつけてみよう」「胸をくっつけて」「今だよ」などと動きやタイミングを積極的に助言したり、喜び・励まし合っている子どもたちを承認・称賛したりしましょう。1人で回れるようになった子の発表の機会を設けることもおすすめです。クラスみんなで声を掛け合い、喜び合うことで、クラスの一体感も生まれます。

【参考文献】
木下光正(2008)『写真でわかる 運動と指導のポイント 鉄棒』大修館書店
平川譲(2012)『体育授業が得意になる9つの方法』東洋館出版社

イラスト/佐藤雅枝

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酒井慎一郎先生

執筆
酒井慎一郎
新潟県公立小学校 教頭
1979年 新潟県見附市生まれ。小学校や特別支援学校において、運動に苦手意識や抵抗感のある子どもの指導・支援に重点を置いて研鑽中。新潟学校体育研究会幹事。『「資質・能力」を育成する体育科授業モデル』(共著)(学事出版)等、共著・雑誌原稿等執筆多数。


平川譲教諭

監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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