クロールで長く泳ぐためにはどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #56】

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平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

#26#27で、クロールの手のかきと手足のコンビネーションを紹介し、プールの横(10m程度)をクロールで泳ぎ切ることを目標としました。クロールが10m程度泳げるようになったら、次は長く泳ぐことを課題とします。学習指導要領解説には、5・6年生で「手や足の動きに呼吸を合わせて続けて長く泳ぐこと」と書かれています。スモールステップで進めることで、「みんなができる、みんなでできる」一斉指導の授業が可能になります。
今回はクロールで長く泳げるようにするための、指導のコツをお伝えします。

執筆/東京都公立小学校教諭・逸見淳一
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川譲

1 息つぎをマスターしよう!

長く泳ぐには息つぎが必要となります。しかし、いきなり泳ぎながら息つぎを行うと、自分の動きを認識できないまま運動を繰り返すことになり、誤った動きを体が覚えてしまいます。まずは、壁をつかんだ状態で正しい息つぎの仕方を確認します。

壁つかみ息つぎ
①プールサイドの壁をつかみ顔を水につけます。この姿勢で息を吐いてみます。息つぎのポイントは、水中で息を吐くことにあります。息を吐いて肺の中の空気を体外に出さないと、新鮮な空気を吸い込むことができないのです。
②足をプールの床から離し、体を浮かせます。
③姿勢が安定したらクロールの動きを行い、片方の手を後ろに引いたタイミングに合わせて、顔を横に向けて息つぎをします。

図説 壁つかみ息つぎ

以下のポイントに気を付けて指導しましょう。
伸ばしているほうの腕に耳をつけるように顔を横に向けること
視線は空ではなく、肩を見るようにすること
顔を上げながら、「パッ」と強く息を吐くこと
息つぎの仕方が分かってきたら、歩きながら腕をかいて息つぎをする練習(息つぎウォーキングクロール)をします。ポイントは壁つかみ息つぎと同じです。

●息つぎウォーキングクロール

図説 息つぎウォーキングクロール

2 泳ぎながら確認!!!

正しい息つぎの仕方が理解できたら、ペアでの手タッチクロールに進みます。手タッチクロールで息つぎの動きに慣れてきたら、手タッチの代わりにビート板を使います。このように、少しずつ1人でできるように、ステップを上げていきましょう。
行うステップは以下の通りで、息つぎの方法は壁つかみ息つぎと同様です。
①手タッチクロール
②ビート板片手クロール
③ビート板クロール

図説 手タッチクロール
図説 ビート板片手クロール
図説 ビート板クロール

息つぎで頭を上げすぎてしまうと、上げた分だけ脚が沈んで、良い姿勢を維持できなくなります。良い姿勢の維持が、楽に長く泳ぐことに繋がります。姿勢が崩れてきたら、一度泳ぐのをやめて、もう一度床を蹴って泳ぎ始めます。このくり返しで、良い姿勢を維持したまま泳ぐことができるようになっていきます。

3 少しずつ距離を伸ばそう!

今までに学習してきたばた足・手のかき・息つぎを組み合わせて、クロールで25mを泳ぎきれるようにしていきましょう。ただし、#26#27でもお伝えしたように、いきなり25mを泳がせるのではなく、少しずつ距離を伸ばしていきましょう。

クロールの泳ぎ方

①まずは、プールの横(10m程度)を、息つぎをしながら泳ぎ切ることを目標とします。はじめはこのくらいの距離で、良い姿勢で泳ぐことを意識させます。その際、右側で息つぎをする子には、苦しくなくても右手を水から抜いた時に息つぎをするように指示しておきます。こうすることで、息つぎを行う回数が増え、経験値が高まっていきます。
②多くの子が10m泳ぎ切ったら、今度は10mを往復させて20m程度を泳がせましょう。この時も、良い姿勢で泳ぐこと、毎回息つぎすることを忘れずに伝えます。
③最後はプールの縦(25m)を泳がせます。ここでも、意識させるのは良い姿勢で泳ぐことです。距離を伸ばすと、途中で姿勢が崩れてしまうことがあります。
そのような場合は、
1回立たせて、もう一度泳ぎ始めさせる。
ビート板を足に挟んで脚が沈まないようにする。
ビート板クロールで25m泳がせる。
などの手立てを講じます。それでも難しい時には、教師や仲間との手タッチクロールで、息つぎする際の姿勢の維持を補助するのもよいでしょう。
④多くの子が25mを良い姿勢で泳ぎ切ることができてきたら、往復の50mに挑戦させてもよいでしょう。

いかかでしょうか。スモールステップを踏むことで、泳力別ではなく一斉指導でみんなの力を伸ばす水泳授業をイメージできたのではないでしょうか。今回は「息つぎ」のスモールステップを紹介しました。まずは10m程度、そこから20m、そして25mを泳げるようにし、みんなが「もっともっと長く泳ぎたい」という気持ちになってきたら、50mにチャレンジさせるくらいの心持ちでよいと思います。
この夏は、ぜひ一斉指導で、「みんなができる、みんなでできる」長く泳ぐクロールにチャレンジしてみてください!

【参考文献】
平川譲、清水由、眞榮里耕太、齋藤直人(2016)『子どもたちがみるみる上達する 水泳指導のコツと授業アイデア』ナツメ社
文部科学省(2017)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編』東洋館出版社

イラスト/佐藤雅枝

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逸見淳一教諭

執筆
逸見淳一
東京都公立小学校 教諭
1980年 東京都中野区生まれ。「みんなができる、みんなでできる」体育授業を目指し、日々研鑽中。子供たちにとっても教師にとってもよりよい体育授業が広まるように、オンラインで研修会を行っている。『「資質・能力」を育成する体育科授業モデル』(共著)(学事出版)


平川譲教諭

監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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