クロールってどうやって教えたらいいの? その2 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #27】
前回のばた足に続いて、クロールの手のかき、手足のコンビネーションに入っていきます。プールの横(10m程度)をクロールで泳ぎ切ることを目標に、中学年の水泳授業を進めていきましょう。
執筆/東京都公立小学校教諭・逸見淳一
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川 譲
目次
ステップその3 手のかきを覚えよう!
※ステップの番号は、前回からの続きです。
ばた足と並行して手のかきの練習も始めます。まずは、陸上で腕の動かし方を確認します。いきなり水の中で行うと、自分の動きを認識できないまま運動を繰り返すことになり、誤った動きを体が覚えてしまうからです。 腕の動かし方は以下の通りです。
親指から水に入れ、体の真ん中を通しながら最後は親指で腿を触ります。腕を水から出した後は、肘を曲げて手のひらを外側に向けながら前方に動かし、再び親指から入水します。
陸上で手のかきを練習した後は、水の中で行います。ここでもいきなり泳がせるのではなく、まずはその場で前述の腕の動きを練習します。
水の中の腕の動かし方が分かってきたら、歩きながら手のかきの練習(ウォーキング・クロール)をします。
以上のステップで行うことで、手のかきがうまくできなかった時に、自分でステップを戻しながら学習することができます。
ウォーキング・クロール
ステップその4 少しずつ組み合わせよう!
ばた足と手のかきができるようになったら、2つを組み合わせていきます。下のイラストのように、初めは2人組でお手伝いしてもらいながら手タッチクロールで泳ぎ、クロールの動きに慣れてきたら、ビート板を支えにして泳ぎます。
この時もスモールステップを意識し、まずは片手だけで泳ぎ、その後両手にしていきます。こうすることで、多くの子が無理なく学習を進めることができます。
手タッチクロール
ビート板片手クロール
ビート板クロール
いずれの練習でも、ばた足や、手のかきだけではなく、頭を耳まで水の中に入れた良い姿勢の維持が、長く泳ぐことに繋がっていきます。姿勢が崩れてきたら、一度泳ぐのをやめて、もう一度床を蹴って泳ぎ始めます。このくり返しで、良い姿勢を維持することが容易になっていきます。
ステップその5 10mにチャレンジ!
いよいよプールの横(10m程度)を、立たずに泳ぎ切ることを目標に泳ぎます。とはいっても、まだ息継ぎの学習を本格的に行っていません。ですから、苦しくなったら息継ぎをするのではなく、一度立って呼吸を整えてからもう一度泳ぎ始めるようにします。 教師が子どもの技能の高まりを見取ったら、10mを息継ぎなしで泳ぐ「ノーブレッシング・クロール」に取り組ませます。息継ぎをしない(頭を上げない)ことで、姿勢の崩れを防げます。よい姿勢で泳ぐことを身体に覚えさせるにはもってこいの教材と言えます。ポイントは、慌てずに大きくゆったり泳ぐこと。筋肉に余計な力が入ると、酸素消費量が増えてどんどん苦しくなってしまいます。
ノーブレッシング・クロール
10mを泳ぎ切ることができるようになって余裕が出てきたならば、ビート板を使用して「のびのびクロール」にチャレンジするとよいでしょう。
のびのびクロール
いかがでしょうか。スモールステップを踏むことで、泳力別ではなく一斉指導でみんなの力を伸ばす水泳授業をイメージできたのではないでしょうか。今回「息継ぎ」には触れていませんが、まずは10m程度を泳げるようにし、その後「もっと長く泳ぎたい」という気持ちにしてから、本格的に息継ぎを指導するとよいでしょう(これについては、来シーズンご紹介する予定)。 この夏は、ぜひ一斉指導で、「みんなができる、みんなでできる」クロールにチャレンジしてみてください!
【参考文献】
平川譲、清水由、眞榮里耕太、齋藤直人(2016)『子どもたちがみるみる上達する 水泳指導のコツと授業アイデア』ナツメ社
文部科学省(2017)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編』東洋館出版社
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執筆
逸見 淳一
東京都公立小学校 教諭
1980年 東京都中野区生まれ。「みんなができる、みんなでできる」体育授業を目指し、日々研鑽中。子供たちにとっても教師にとってもより良い体育授業が広まるように、オンラインで研修会を行っている。『「資質・能力」を育成する体育科授業モデル』(共著)(学事出版)
監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。
イラスト/佐藤道子