地域・保護者の力を借りて行うコロナ下での学校運営とは

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新型コロナ対策:新しい授業と学級づくりの知恵、続々更新中!

コロナ禍で学校を広く外に開くことが難しい状況が続いていますが、社会全体で感染の拡大を抑えていくには、地域や保護者との連携も欠かせません。ウィズコロナの時代、地域・保護者と連携した学校運営はどうあるべきか……。文部科学省が発表した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜『学校の新しい生活様式』」「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちのより」を通して、コロナ下での学校運営を考えます。

撮影/金川秀人

休校措置や外出自粛で学習への家庭の役割が増大

日本では2020年2月より本格化した新型コロナウイルスの感染拡大。2020年の終わりになってもその猛威は衰えず、本稿執筆時点(12月15日)においても、第3波とされる感染者増が続いています。

このコロナ禍は学校現場にさまざまな面で影響を及ぼしていますが、その一つが地域や保護者との関係性の変化です。

たとえば、長きにわたった休校措置や外出自粛により子どもが多くの時間を家で過ごすようになったため、子どもの学習の保障という点で、家庭の果たす役割が大きくなったことがその一つです。もちろん、そこでは家庭での学習のあり方についての学校からの情報提供や、学校と家庭での意識の共有などが必要になります。顔を合わせての対話が難しくなる中で、保護者とどのようにコミュニケーションを図っていくかが問われています。

もちろん、新型コロナウイルスの感染予防そのものにおいても、家庭との連携は不可欠です。【資料1】にあるとおり、小・中学校の児童生徒の新型コロナウイルス感染状況を見ると、その6〜7割が家庭内での感染となっており、1割以下という学校内感染の数字を大きく凌いでいます。児童生徒の感染予防においては、家庭の協力が不可欠であることを示すデータであり、文部科学省も「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜『学校の新しい生活様式』〜」の中で、学校からも積極的な情報発信に努め、家庭での「新しい生活様式」の実践を呼びかけるなどの必要性を示しています【資料2】

【資料1】児童生徒の感染状況

【資料2】家庭との連携

6.家庭との連携
学校の臨時休業中においても子供の感染事例は一定数生じており、その多くは家庭内での感染と言われています。学校内での感染拡大を防ぐためには、何よりも外からウイルスを持ち込まないことが重要であり、このためには各家庭の協力が不可欠です。
毎日の児童生徒等の健康観察はもちろんのこと、例えば、家族に発熱、咳などの症状がある場合には、感染経路の不明な感染者数が増加している地域では、児童生徒等の登校を控えることも重要です。
また、感染経路の不明な感染者数が増加している地域では、休日において不要不急の外出を控える、仲の良い友人同士の家庭間の行き来を控える、家族ぐるみの交流による接触を控えるなど、学校を通じた人間関係の中で感染が広がらないよう細心の注意が必要です。
こうしたことについて、保護者の理解と協力を得て、ご家庭においても「新しい生活様式」の実践をお願いしたいと思います。また、PTA 等と連携しつつ保護者の理解が得られるよう、学校からも積極的な情報発信を心がけるとともに、家庭の協力を呼びかけることが重要です。

文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜『学校の新しい生活様式』〜(Ver.5)」より

地域との直接の交流は減少しても消毒作業などでは力を借りる

家庭だけでなく、地域との関係も変わりつつあります。各学校ではこれまで「地域に開かれた学校」をめざし、コミュニティ・スクールの導入や、学習における地域人材の活用、見守りや環境整備などでのボランティアの活用など、さまざまな形で地域との連携を深めてきました。それがこのコロナ禍により、地域住民と児童生徒が直接触れ合う活動は実施が難しくなっています。

しかしその一方で、校内の消毒作業など、コロナ対応で増えた教員の負担を軽減すべく、地域や保護者ボランティアの力を借りるといった連携の事例も各地で見られました。連携・協力のあり方に制限は出たものの、今回の災厄により、より地域や保護者との関係性が深まったというケースも多いのではないでしょうか。

新学習指導要領で「社会に開かれた教育課程」と謳われているとおり、これからの学校教育において、地域や保護者との連携・協力は欠かせません。また、中央教育審議会が2020年10月にまとめた「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現〜(中間まとめ)」においても、地域全体で子どもたちの成長を支えていく環境を整えていくことや、地域の関係機関と学校との連携・協働を進めて、多様性のあるチームによる学校とすることの必要性が述べられています。

影響が長引くと考えられるこのコロナ禍の時代において、地域・保護者と連携した学校マネジメントをどう進めていくべきか、さらに考えていかなければならないでしょう。

取材・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2021年2月号より

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