「講義法」と「集団決定法」それぞれの特質を生かす指導法とは?【先行研究から学ぶ 学級経営の極意Ⅳ②】

子供が多様な他者と関わりながら、必要な資質・能力を身に付けるために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、先行研究を例に挙げながら、子供のよりよい成長を促す学級経営の方法について解説します。第2回は、「講義法」と「集団決定法」について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子体育大学非常勤講師・稲垣孝章
「講義法」と「集団決定法」は、学習指導の中で日常的に活用される効果的な指導方法です。教師の説話を含め、指導事項の解説や説明などを行ういわゆる「講義法」は、授業場面で不可欠です。また、子供たちが小グループや学級全体で集団思考し、集団決定する場面も学習や生活の様々な場面で取り入れられています。
そこで、「講義法」と「集団決定法」を効果的に取り入れるに当たって、次の3つのキーワード「講義法と集団決定法に関する先行研究」「講義法と集団決定法の特質」「講義法と集団決定法の特質を生かす指導の方法」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 「講義法」と「集団決定法」に関する先行研究
「講義法」と「集団決定法」に関する先行研究として、「牛の内臓使用に関する食習慣の変化」について、ドイツの心理学者クルト・レヴィン(Kurt Lewin)が発表した研究を取り上げます。レヴィンは、「グループ・ダイナミックス」(集団力学)を提唱し、集団の規範や圧力、メンバーの相互作用が個人の行動に影響を与えるとしています。特に、集団内での合意形成によって決定したことは、自発的な行動変容を促すことを示しています。
【実験例】 13~17人の赤十字集団6集団の女性を用いて、牛の内臓に関する食習慣の変化について、「講義法」と「集団決定法」の比較を行いました。
3集団には、牛の内臓の栄養的な価値、経済性、および料理法について詳細に「講義」をしました。 もう1つの3集団には、一般的な問題から入って牛の内臓使用に関する食生活の変化について集団討議が行われ、「集団決定」がなされました。
1週間後に調査をしたところ、「講義」を受けた人の中で、牛の内臓を使用したのはわずかであったのに対して、「集団決定」では比較的多くの人が牛の内臓を使用したという変化が見られたと報告しています。
実験の結論として導かれたことを確認します
この実験で「講義グループ」には、栄養士が新しい食肉(牛のモツなど)の優れた栄養価について講義を行い、「集団決定グループ」では、新しい食肉を食生活に取り入れることについてグループ討議を行い、最終的に自分たちで決定しました。「講義」を受けたグループでは食生活を変えた人はわずか「3%」で、グループ討議で集団決定したグループでは「32%」の人が食生活を改善したという結果です。このような結果から集団決定法の効果として次のことが取り上げられます。
- 「講義法」は、受動的になるのに対して、「集団決定法」は、自我関与が強くなる。
- 「講義法」は、決定への動機付けが弱いのに対して、「集団決定法」では、討議への参加により決定に強く動機付けられる。
- 「講義法」では、心理的な孤独状態に置かれるのに対して、「集団決定法」では、集団内で個人の目標決定がなされる。
たとえ、集団が組織化されてなくても、集団決定から生じる変化への力が大きくなるとされます。議論をするだけでなく、具体的な行動を決定する過程で実行への動機付けが強化されることが分かります。
CHECK② 「講義法」と「集団決定法」の特質
「講義法」は、教師が中心となり、様々な知識や情報を子供たちに伝える伝統的な教育方法です。多くの子供に対して、限られた時間に効率よく学習内容を伝達することができ、教師が学習内容を整理して指導することにより子供は理解しやすくなります。
「集団決定法」は、複数の子供が協働して話し合い、意思決定を行う学習方法です。個人の考えだけでは得にくい多様なアイデアや考え方を出し合い、活用することができます。
「講義法」と「集団決定法」の両者の特質を踏まえて学習方法を検討し、よりよい学級経営を展開していきましょう。
「講義法」と「集団決定法」のデメリットを踏まえて指導します
「講義法」には、子供の学習に関して次のようなデメリットがあります。
- 子供が学習に対して受動的になりがち。
- 教師の話が中心になることから、記憶に残りにくい。
- 個人の関心や能力に即した対応が難しい状況になりがち。
- 子供の行動の変容や技能を習得する学習には適さない面がある。
- 教師の指導力の差が子供の学習に影響する。
- 聞く場が多いため、子供自身に自己管理する力が求められる。
「集団決定法」には、子供の学習に関して次のようなデメリットがあります。
- 立場の弱い子供が意見を言いにくく、少数意見が埋もれることがある。
- 集団内での個々の責任が希薄になる傾向にある。
- 意見の集約に時間がかかり、緊急性のある場合にはそぐわない面がある。
- 凝集性の高い集団では、集団の意見に同調する圧力が生じることもある。
