小3外国語活動「あいさつをして友達になろう」指導アイデア
執筆/沖縄県公立小学校教諭・平良優
監修/文部科学省教科調査官・直山木綿子

【活動】
あいさつをして友達になろう(『Let’s Try! 1』Unit 8)
【単元の目標】
・言い方に慣れ親しむ。
・名前を言って挨拶をし合う。
・相手に伝わるように工夫しながら、名前を言って挨拶を交わそうとする。
【教材】
『Let’s Try! 1』デジタル教材・ワークシート(文部科学省公表)
目次
授業のポイント
子供たちにとって、人生で初めての外国語活動の授業です。多くの子は、わくわくしながら授業のスタートを待っていることでしょう。一方で、不安を持っている子がいることを想定することも大切です。
授業のポイントは、その両者の子供たちが、「外国語活動の授業って楽しい!」「次も楽しみだ!」と思うような授業を行うことではないでしょうか。そのために最も大切なことは、学級の子供たちの興味に合った内容を設定し、楽しい雰囲気で行うことです。
内容については、第1時で、子供たちが日常生活で触れているごく簡単な英語を扱うことで、「知っている」という安心感や自信を持たせることにつながります。また、指導者が英語で話す際には、豊かな表情やジェスチャーを大切にすることで、子供たちにとって、英語の理解の手助けとなるだけでなく、「先生も楽しそうだな!」「外国語活動の時間って、なんだか楽しいな!」と自然と感じるようになります。
今後の授業を見通して、子供たちに伝えたいことは「推測すること」の大切さです。その第一歩として、指導者の自己紹介を全て英語で行ってみてはどうでしょうか。「英語が分からないからどうしよう」ではなく、「分からない英語もあるけど推測してみよう」のように、「分からない」という状況を楽しめる学級集団にすることが、小学校外国語教育で最も大切なことです。
単元計画(全2時間)
目標と活動
1時
○世界にはさまざまな言語があることに気付く。
- 挨拶
- Ten Steps
- 指導者の自己紹介
- 言えそうな英語はないかな?(Let’s Try! 1 表紙)
- Let’s Watch and Think「映像を見て、世界のいろいろな国の挨拶を知ろう。」(p.2)
- ふり返り
2時
○挨拶や名前の言い方に慣れ親しみ、相手に伝わるように工夫しながら名前を言って挨拶を交わそうとする。
- 挨拶
- Let’s Chant “Hello! ”(p.3)
- Let’s Listen「挨拶をして、子供と国旗を線で結ぼう。」(p.4)
- Activity「挨拶をして、名前を言い合おう。」(p.5)
- ふり返り
- 挨拶
本時の展開(第1時)

本時のポイント
第1回目の授業です。成功体験を積み重ねる45分間にするために、次の3点を挙げます。
- 授業の最初と最後の号令は、他の授業と同じように日本語で行うことです。ついつい、第1回目の授業で、英語の号令を教えてしまいがちですが、そうすると授業の導入から緊張感を与えてしまいかねません。英語の号令には、外国語活動の授業に慣れてきたUnit3あたりから、切り替えていくとよいでしょう。
- ②出合いの活動として、Ten Stepsを行うことです。子供たちに耳慣れている英語の1~10 を扱った、とても簡単かつ体の動きを入れながら楽しむことのできる活動です。
- Let’s Watch and Thinkを数回視聴させ、各々が聞こえたように真似させることです。「真似るだけでよい」ことを伝えることで、安心感を持たせるとともに、傾聴力も高まり、活動の効果が高まります。
活動1 Ten Steps 〜リズムとアクションを楽しもう〜
授業開始の挨拶後、すぐに「1」と板書し、“What’s this?”と発問します。子供たちはすぐに“One!”と反応します。そこで、“Great !”と大きなリアクションをしながら称賛します。同じように10までの数の英語の言い方を確認していきます。
その後、指導者がTen Stepsのリズムで歌います。とても簡単なので2~3回繰り返すと、次第に子供たちは一緒に歌い始めます。
次に、指導者が例えば「3」を指さし、“What’s this?”と子供たちに尋ねます。子供たちは自信満々に“Three!”と答えます。そこで、“Bye-bye number.”と言いながら、「3」を消し、そこに手のイラストを描きます。そして、指導者がTen Stepsを歌いながら、手のイラストの箇所は声を発せずに、手拍子をします。すると、子供たちは「あ~、分かった!」と楽しみながらTen Steps を行います。
Bye-bye numberを増やし、手拍子だけでなく、机をタッチしたり、ジャンプしたりするなどのアクションを入れることで、楽しみながらTen Stepsを繰り返すことができます。子供たちの様子を見とって、スピードをゆっくりしたり、速くしたりすることも大切です。
本活動で、指導者で用いる英語は、英語の1~10 や賞賛の言葉、その他は、“Bye-bye number “Clap”“Jump”の簡単なもののみです。指導者も楽しみながら英語を用いて活動を行うことができるでしょう。

活動2 指導者の自己紹介 〜ジェスチャーやイラストを工夫して〜
活動1の終了後、「これから先生が英語だけで自己紹介をします」と伝えます。
指導者の自己紹介では、好きなものや嫌いなものを紹介します。食べ物やスポーツ、アニメを扱うと、子供たちは、興味津々に聞きます。好きなものを伝える際は、黒板にハートマークを描き、その近くに好きなものの絵カードを掲示するとよいでしょう。嫌いなものを伝える際には、ハートマークの上に大きな×マークを描き、その近くに嫌いなものの絵カードを掲示するとよいでしょう。
指導者の自己紹介が終わり、「分かった?」と子供たちに尋ねると、「分かった~!」と自信満々に答えます。すぐに、「どうして分かったの?」と尋ねます。すると「なんとなく分かった~!」と答えてきます。そこで、「それって、とても大切なことだよね。初めて聞く英語って分からないけど、先生がどんなことを伝えようとしているのかを、みなさんはしっかりと考えながら聞いてくれたんだね。それを『推測』って言うよ。外国語活動の時間に一番大切なことは、相手がどんなことを伝えようとしているのか『推測』しながら聞くことだよ」と伝えます。「推測」という言葉は、この時期の子供たちには難しいように思えますが、推測を実際に体験した場で意味を伝えることで、容易に理解することができます。
伝える側の先生の行った工夫についても考えさせ、気付かせることも大切です。

活動3 言えそうな英語はないかな? 〜子供たちから「英語」を引き出そう!〜

テキストの表紙を開かせて、「英語で言えそうなものはない? 例えば、色でもいいよ!」と尋ねます。すると、子供たちは次々に知っている英語を伝えてきます。この場面の指導者の大きな役割は、英語の正しい発音を指導することではなく、称賛することです。
続けて、児童用テキストの付録にある児童用絵カードのページを開かせます。すると、子供たちは、ページをめくりながら知っている英語を意欲的に発します。
本活動を通して、どんどん子供たちから英語を引き出し、知っている英語がたくさんあるという自信を持たせることが大切です。


活動4 Let’s Watch and Think 〜世界にはどんな挨拶があるのかな?〜

Let’s Try!1デジタル教材p.2のLet’s Watch and Thinkには、9か国の「国名の音声」「動画」「挨拶の音声」のコンテンツがあります。「どの国の国旗かな?」と子供たちに尋ねると、「アメリカ」「日本」「中国」のように知っている国旗について答えてくれます。
また、「ケニアかな?」「インドかも?」のように不確かなものや予想についての発言もあります。そこで、「では、どの国か確かめてみようか」と問いかけると、子供は意欲的に国名を聞こうとします。このような流れで扱うことで、「国名の音声」を聞かせる必然性が高まります。
次に、「日本にはどんな挨拶があるかな?」と尋ねます。「おはよう」「こんにちは」「さようなら」等のように次々と答えが返ってきます。そこで、「外国の挨拶で知っているのはない?」と尋ねると、「ハロー」「ニーハオ」と知っている外国の挨拶を全体で共有することができます。
このような過程を通して、「他にも世界にはいろいろな挨拶がありそうだ!」という期待感が膨らむことをねらっています。この後に、子供たちとともに「世界にはどんな挨拶があるのかな?」というめあてを立てるとよいでしょう。
「動画」のコンテンツには、各国の風景とともに、同年代の子の挨拶の映像が収められています。まずは、アメリカの動画を扱います。視聴の前に、「どんな挨拶だと思う?」と尋ねると、「ハロー」と元気よく答えてくれます。その後に視聴させると、「やっぱり~!」と満足げな表情を浮かべます。次にオーストラリアを扱います。同じように「どんな挨拶だと思う?」と問いかけると、「ハローかな?」「えっ、同じなの?」「違うよ~」というように思い思いに答えてくれます。その後に視聴させると「同じだった~!」という反応があります。
次に、フィンランドについて扱います。また同じように「どんな挨拶だと思う?」と聞くと、「ハローだ!」「違うよ~」という反応があります。そして、視聴させると「初めて聞いた~!」「もう1回聞きたい!」と言ってきます。
このように、視聴させる国の順序を工夫することで、思わず「見たい! 聞きたい! 確かめたい!」という意欲を高めることができます。
全ての動画視聴後に、9か国の中から1つの挨拶を選ばせ、ペアや全体で挨拶を交わす活動を行うとよいでしょう。
構成/浅原孝子
イラスト/荻野琴美(オーデザインチャンネルズ)
『教育技術 小三小四』2019年4月号より