「係活動」の指導とは【やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本】⑥

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やき先生の学級活動のとっておき基礎・基本
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宮川八岐

宮川八岐・元文部科学省視学官による「やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本」の連載6回目。今回は、「係活動」の指導について紹介します。日本型学校教育の象徴としての児童による自発的、自治的な実践活動である係活動の指導の基礎・基本が正しく理解されていない場合があります。そうした実態を踏まえて、「望ましい集団活動」としての係活動の指導の基本的な考え方などを一緒に考えてみましょう。

執筆/元文部科学省視学官・宮川八岐

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「係活動の指導」に関する学習指導要領上の記述

係活動に関する学習指導要領上での記述は、〔学級活動〕2内容(1)イ「学級内の組織づくりや役割の自覚」に「学級生活の充実や向上のため、児童が主体的に組織をつくり、役割を自覚しながら仕事を分担して、協力し合い実践すること。」とあり、この規定により、児童全員が何らかの係に所属して活動します。

昭和33年改訂で学級会活動が必修になる前は、一部の児童の活動でしたが、必修になってからは、全員が自ら希望する係に所属し、係の仕事(活動)を分担して学級生活の充実と向上に貢献するようになりました。係の友達と創意工夫し、役割を果たすことを通して自己有用感を育てることになります。

「係活動の特質」を踏まえた組織編成の基本

学習指導要領上の「組織づくり」とあるのは、平成10年改訂で記述した文言です。それまでは、「仕事の分担処理」となっていましたが、自主的な係の組織は学級会で児童が話し合って編成することを明確にするための措置でした。日直の仕事をはじめ、当番の仕事や生活指導における仕事の組織は教師が設定するようにし、混同しないようにしなければなりません。

「係活動」と「当番」のそれぞれの特質と指導のあり方に関する比較の一覧を表1にまとめました。児童へのオリエンテーションをする際の基本的な考え方として押さえておくことが大切です。

表1

(1)「係活動」と「当番」の領域的違い

一覧表の比較でお分かりのように、「係活動」は、学級活動の指導内容として指導される集団活動の領域です。一方「当番」は、生活指導における集団指導の学級経営領域の指導です。ここで、あえて係活動と当番とを表記上、異なる書きぶりにしているのは、係活動は集団活動であり、当番は教育課程としての集団活動ではなく、生活指導における集団指導として捉え、用語上峻別しているためです。「当番活動」という言い方をよく耳にしますが、やき先生は、領域的特質を明確にする観点から、「当番」に「活動」を付けずに単に「当番」と表現しています。

(2)「指導のねらい」の比較

一覧表では、指導のねらいとして2つを取り上げています。1つ目は、共通するねらいとして「協力」です。係活動も当番も、指導のねらいは「協力」です。厳密に言えば、両者の協力には集団の質的な面から見ると若干の違いがあるようにも思います。興味や得意とするものが同じ者同士協力し合って活動する係活動の協力と、例えば生活班(形式集団)として与えられた当番の仕事をするための協力との違いということです。

もう1つの指導のねらいとして取り上げているのは、係活動は、計画も活動の内容も児童による「創意工夫」の実践活動で、当番は、学校(教師)によって決められている仕事を手順通りに責任をもってやり遂げることです。従って、係の編成に当たっては、創意工夫の余地のない仕事は除かれるということになります。

(3)「組織の編成方法等」の比較

学級活動の内容の(1)は「学級や学校における生活づくりへの参画」となっています。そのイが「学級内の組織づくりや役割の自覚」です。前述したように、この組織づくりというのは、「係活動の組織」のことであり、当番の組織ではありません。先の表1の一覧表(比較表)の係活動の「指導④編成」は、「学級会」としてあります。自発的、自治的活動である係の組織編成は、学級会で決めることになります。

それに対して当番の組織は、学校が必要とする組織ですから、学級担任が決めます。基本的な指導の特質に応じた編成でなければ育つものも育ちません。

「指導③形態」の項目の係活動には、「継続(希望)」としてあります。当番以外の仕事(活動)を児童が見いだして、児童個々が興味・関心を追求し、協力し合って創意工夫に取り組み、児童自ら個性を伸長することをねらいとします。そのため、所属した係の活動を継続することが大切になります。

それに対し、当番は、学級生活の維持のためになくてはならない仕事を、学級の全員が一定期間で交替(輪番)して、決められている仕事内容、仕事の時間、やり方などを同じように責任をもって行うのが原則になります。

「係を決めよう」の学級会の指導

自発的、自治的な実践活動を特質とする係の編成は、学級会で当番以外の仕事を児童自身が見いだし、どんな係を設置するかを学級会で話し合って適切な係を決めることになります。当然ながら教師によるオリエンテーションは欠かせません。

(1)「1年生入学当初の指導」の工夫

1年生の入学当初は、特別な指導が必要になります。入学式直後から教師が何かの仕事を誰かにお願いしたり、誰かが何かの仕事を自ら気付いてやってくれたりしたときに、

ありがとうね、○○君、しばらくこの仕事を係としてやってくれますか?

と言うわけです。何人かに広げた頃を見計らって、

みなさん、○○君は、窓係をやってくれることになりました。△△さんは、ロッカー係をしてくれるそうです。今日から○○君たちのように何か1つ仕事を見付けてください。1人1つの係をしてくれたら素晴らしいクラスになりますね。

と言うのです。

この時点の日直の仕事は「朝の会の司会」など1~2つにしておき、多くの仕事を与えないようにしておきます。

各自いろいろなことを見付けます。教室内から廊下、玄関の靴箱の整頓まで必死で探すわけです。しかし、問題に気付き始めます。

先生、窓係を忘れてしまっています。

先生、私も山田さんと一緒に、健康観察カードを保健室に持って行く仕事をしたいです。

そこで、教師は

そうか、係の仕事は1人でするのではなく、誰かと一緒に協力しながらするようにしたらいいんだね。学級会で話し合って決めましょうか。

と導くようにします。

ここから本来の係活動が始まるのです。4月中・下旬には実施することです。

(2)「学級会で係を決める指導」のポイント

2年生以上は、1年生の経験から4月の学級生活をスタートして間もなく学級会で係を決めて活動を開始するようにします。その際の学級会の1単位時間の展開の基本パターンとして、次の事例を紹介します。千葉県八千代市立大和田小学校5年生(授業者は神田真依教諭)の事例です。研究校などに広がっています。

<事前の準備の工夫が学級会成功のコツ>
学級会の前日に計画委員会は、集めておいた係案を短冊に書いておきます。決定する数を6個ぐらいにするようであれば、あらかじめ8~10個ぐらいに整理しておくことがポイントです。そして、当日の朝に背面黒板などに掲示し、「朝の会」で説明し、質疑応答を行っておくと学級会が効率的に進められます。

①「提案理由の説明」

学級会①
写真①

学級会が始まって、計画委員の紹介があった後、提案者の2人が模造紙に書いてある提案理由を説明している写真です。事前に説明してあるので確認の意味になります。話合いの見通しによっては省略することもあります。

②話し合うこと1「どんな係にするか」の話合い

学級会②
写真②

① の写真でも分かりますが、学級会が開会した時点で、すでに柱1の案(短冊)が黒板に貼ってあります。②の写真は、「提案理由」「決まっていること」「先生の話」の後に続いて〈話し合うこと1〉「どんな係にするか」について、すでに出し合っている案に対する賛成反対などを話し合う段階です。短冊の上には決定マークが貼られ、短冊の下には賛成マグネットが付いています。

③「役割分担」

学級会③
写真③

決定した係ごとに、一人一人が所属したい係の下にネームカードを貼っていく段階です。極端な人数の偏りがある場合は、「どうするか」を司会から問いかけられ、特に所属が1人もいない係が出たり、ある係には8人も所属していたり、ある係は2人といった状況について、自主的に所属を移動するよう呼びかけます。そのような調整の後、司会が「これでいいですか?」と言い、全員が了解したところで「決定」となります。

④「係ごとの当面の活動」についての話合い

学級会写真4
写真④

〈話し合うこと1〉「どんな係が必要か」に多くの時間をかけないようにし、係ごとの所属が決まったら、係ごとに当面の活動について話し合う時間を確保することが効率的な話合いのポイントです。とりあえずの係長を決め、当面の活動を決めた後、それぞれの係ごとの決定事項を発表し合って、本時の学級会を終了するのです。

⑤「本時の振り返り」

振り返り
写真⑤

学級会の活動計画に「振り返り」まで入れておき、④の話合いで時間切れになった場合は、「帰りの会」で「学級会ノート」に振り返りを書くようにします。時間内に⑤までできるようにするためには、事前の教師のオリエンテーション、準備段階での調整整理、質疑などがどれだけできているかによります。当然ながら、1年生からの積み重ねが欠かせないことは言うまでもありません。

まとめ

今月号では、「係活動と当番の特質上の違い」や「学級会で係編成をする指導のあり方」について述べましたが、「係活動を生かす学級経営」については次号の特集の中で述べようと思います。

学習指導要領の昭和33年改訂で、特別教育活動が必修化され、児童自身が当番以外の仕事(係活動)を見いだし、創意工夫して学級生活を豊かにしようとする態度を育てる意義は極めて大きいものと考えます。自発的、自治的活動で実践的な態度を育てる係活動の指導充実への取組が、読者のみなさんの学校で今後一層重視されることを祈念します。

宮川八岐(ミヤカワ・ヤキ)

宮川先生イラスト

埼玉県公立学校教員、教頭、草加市教育委員会、草加市立氷川小学校長を経て、平成6年から文部省初等中等教育局小学校課教科調査官(主に特別活動、生徒指導、学校図書館等)に。平成12年から同局視学官。平成16年度国立妙高少年自然の家所長、平成17~20年度まで日本体育大学教授、平成21~27年度まで國學院大學人間開発学部教授を務める。

構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ

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