「毎日席替え」で学び合う集団を育てよう

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東京都公立小学校主幹教諭

丹野裕基

子供同士の関係性が硬直化しがちな2学期末、学び合う風土を高められる「毎日席替え」を提案します。子供の自尊感情や学級の集団力を高める実践に定評のある、東京都公立小学校主幹教諭の丹野裕基先生が解説します。

執筆/東京都公立小学校主幹教諭・丹野裕基

「毎日席替え」で学び合う風土を高めよう

⼤きな⾏事をやり切った2学期末の今、教室にはどのような⾵⼟や雰囲気があるでしょうか。子供同⼠の関係性や、学級での学び⽅が習慣化しているこの時期だからこそ、学び合う集団としての育ちをさらに加速させたいものです。

今回は、学び合う⾵⼟を⾼められる「毎⽇席替え」を紹介します。

「誰とでも」「男⼥関係なく」「学び合う集団」「協⼒」「協働」「学級の絆」「学級の団結」「全員参加」「一人も⾒捨てない」といったことも、子供同⼠の関係性に⼤きく左右されるものです。

席替えをきっかけに、子供同⼠が豊かにつながるきっかけをつくり、豊かな価値への気づきが⽣まれるような学級集団へと成⻑を加速させましょう。

◎次の問いについて、かで答え、そう考える理由をお考えください。

①全ての子供が、学級の友達全員と4⽉から12⽉までの間に、ある程度まとまった時間、話したり活動したりした経験がある。
 関わりの機会が量的に確保されているか

②全ての子供が、学級の友達全員のことを他⼰紹介できる。
 お互いに関⼼を向け合えているか

③全ての子供が、学級の友達一⼈一人のよさを⾒つけられる。
 肯定的な⽬や⼼で関われているか

④全ての子供が、教室を安⼼できる場所だと感じている。
 ⾃分は受け⼊れられている、認められていると実感できているか

いかがでしょうか。

席替えは何のためにするのか?

席替えの⽅法や頻度、⽬的については、様々な考えがあります。「席替え」を学年団や校内で話題にしてみても、それぞれの指導観が垣間⾒えて、⾯⽩いかもしれません。

私は今年度担任している5年⽣38名の学級で、4⽉から「毎⽇席替え」に取り組んでいます。毎朝、朝の会で今⽇のお隣さんと出会います。

私は、子供一人一人の学びやすさを育てるという目的をもって、席替えを行なっています。

そして、「子供の学びやすさ」とは、次の3つの自信をもてる環境が教室にあることだと考えています。

①他の⼈と違っても、間違えても、今できなくても否定されないという⾃信
②この教室で努⼒したり、練習したりすればできるようになるという⾃信
③⾃分の存在(発⾔や考え)が仲間や先⽣から受け⼊れられている・認めてもらえるという⾃信

こうした自信をもてる教室環境を育むためには、「うるさくならないように」「話し合いが行われるように」といった意図で教師が座席を決め続けるのではなく、座席の決め方、その頻度、子供と目的を共有すること、などの工夫が必要です。

なぜ「毎日席替え」なのか?

「毎⽇席替え」を⾏おうと考えたきっかけは、次のような子供たちの⾔葉です。

このクラスの友達は、AとBとCです。3人とは昔からの友達で、いつも遊ぶ仲間なので、このメンバーが同じクラスで楽しくなりそうです

5年1組の中に、友達は5人いました。一番仲のよいDさんとクラスが分かれてしまったのが嫌ですが、がんばろうと思います

クラス替えの紙が配られて、友達がいるか不安でした。でも、3人友達がいたのでホッとしました。EさんとFさんとは3、4年の時も同じクラスだったので、また同じになれてよかったです

これらの言葉は、今年の4⽉、学級の子供と出会った2⽇⽬に、「5年⽣になって」という⼤括りなテーマで、今年がんばりたいことや不安に思っていることなどを⾃由に書いてもらったものの⼀部です。

これらの⾔葉を⾒た時、同じ空間で⼀緒に過ごしているだけでは、友達とのつながりは実感できないものなのかもしれない、⼀⼈一人が友達とのつながりを感じられる1年を過ごせるようにしたいと強く思いました。

もちろん、席を替えることが子供同⼠の⼈間関係を豊かにするわけではありませんし、頻繁に席替えすればよい、と考えているのではありません。毎⽇の授業の中で、互いのことを知り、互いに関⼼を向け合い、リスペクトし合える指導を⽬指しているのです。隣に座る子供とは⾃然と関わる時間が増えるため、毎⽇隣の友達が変わることで、多くの友達と関わる機会を量的に確保することができると考えたのです。

「毎日席替え」の進め方

【準備】
A4サイズ(または、縦20cm)の板目紙を2cm程度の幅に細断して、学級の人数分作っておく。

【流れ】
①カードを全員に配付し、それぞれが⾃分の出席番号を記⼊する。

裁断したカードを全員に配布し、それぞれが⾃分の出席番号を記⼊する。

②出席番号を書いたカードを隣の友達と交換する。

③カードをランダムに2~3⼈と交換する(友達と⾃然に関わりながら、誰が何番のカードを持っているか分からないようにする)。

④教室の後⽅を向き、教師はその間に⿊板に座席番号をランダムに書く。

教室の後⽅を向き、教師はその間に⿊板に座席番号をランダムに書く。

⑤⾃分の持っているカードの番号が書かれた場所に座席を移動する。

※座席の移動後、私は腕相撲や指相撲、⼿押し相撲、あっち向いてホイ、漢字しりとり等の短時間でできる簡単なゲームを⾏なっています。

※カードはそのまま道具箱や筆箱に⼊れて保管させ、翌⽇は③のカードをランダムに交換するところから席替えを始めています。

「教師の教えやすさ」のために席を決めていないか

座席配置は、学習環境づくりの⼀つです。だからこそ、「子供の学びやすい環境」をつくるために教師が意図的に座席を配置する学級も多いでしょう。しかし、その「意図的」が、本当に子供の学びやすさのためになっているかどうか、問い直すことも必要です。

教師が誰をどこに座らせようかと座席の配置に頭を悩ませ、⼀時的な効果をねらって席替えをするのではなく、席替えも子供にとっての⼤切な学びの機会だと考えることが⼤切です。

「教師が教えやすい環境」をつくるために席替えがあるわけではないのです。飾り物のような⾔葉として、「誰とでも」「男⼥関係なく」「学び合う集団」「協⼒」「協働」「学級の絆」「学級の団結」「全員参加」「⼀⼈も⾒捨てない」といった価値を伝えるのではなく、子供が真にそれらの価値に気が付けるような指導の機会に、席替えもなり得ます。

「毎日席替え」は学びやすさにつながるか?

1か月に⼀度の席替えで、1年間に隣に座る子供は12人。毎日の席替えでは、延べ200人以上。全ての子供が、学級の友達全員とある程度まとまった時間話したり活動したりした経験は、子供同⼠の関係性の質を⾼め、「子供の学びやすさ」の⼟台となります。そうして学級が集団として⾼まっていくことで、学びに向かう意欲や学びの質が変化していきます。「毎⽇席替え」を続けてきた子供たちに、「毎⽇の席替えは学びやすさにつながっているか」を問うてみました。

学び合う子供2人

毎日の席がえで、今までほとんど話してこなかった人と話す機会をもてました。自分から話しかけることが苦手な私は、こうしてとなりの席の友達が毎日変わったから、クラスのほとんどの人と自然に話すことができるようになったと思います。例えば、この間の国語の時間に、AさんやBさんと「筆者が一番伝えたい一文はどれか」をじっくり話し合えました。自分で話す相手を探したり活動したりする人を探したりする時にも、一人にならないか不安にならなくなってきました。

私は学びやすさにつながっています。「話し合いの時、Cはどう思う?」と聞いてくれる人が多くて、話さなくちゃ、何か言わなくちゃと思うことが増えました。今までだったら、仲のいい友達以外と話さなくちゃいけない時にはだまっていることがほとんどだったけれど、自分は変わったなと思います。それは、席がえをしながらほとんどの人ととなりになって、話せるようになったからだと思います。

※それぞれ、子供のノートからの抜粋。表記は、子供が書いた文章をそのまま掲載しています。

3学期に向けて、席替えの仕⽅を⾒直すことをきっかけに、学び合う集団としての育ちをさらに加速させましょう!

丹野裕基(たんの・ゆうき)●1986年、東京都生まれ。東京都公立小学校主幹教諭。菊池道場東京支部支部長。総合質問紙『i-check』商品開発協力委員(東京書籍)。学級経営機関誌『げんきの根っこ』(東京書籍)、『温かい人間関係を築き上げる「コミュニケーション科」の授業』 『「白熱する教室」を創る8つの視点』(中村堂)などに分担執筆者として参加。

イラスト/イラストAC

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