国語科「すがたをかえる大豆」③発問の極意#6

連載
子どもの主体が立ち上がる 国語科 単元別 発問の極意

筑波大学附属小学校教諭

白坂洋一
国語科 発問の極意 バナー

前回の第2回では、説明文「すがたをかえる大豆」をもとに、単元計画づくりと単元導入の発問<きっかけ発問>を取り上げました。そこでは、単元計画づくりにおいて、第三次で接続語の観点を生かした「書く活動」を設定することが可能となること、そして、題名を使った単元導入の発問<きっかけ発問>を紹介しました。
今回は、単元展開の発問について<誘発発問>と<焦点化発問>を取り上げます。

執筆/筑波大学附属小学校教諭・白坂洋一

選択型の発問と問い返しで、事例のつながりを明らかにする

誘発発問を、私は「子どもの問いを引き出す発問」として位置づけています。この発問によって、子どもたちの考えや意見にずれが生じます。そして、文章中にある言葉が問題化され、そこで「考える必然性」がつくり出されるようにします。そのことによって、子どもの問いを引き出していくのです。また、子どもが学習に自然と入っていけるように誘うとともに、子どもたちの追求心をじわじわと高め、思考を練り上げる状態をつくっていきます。

説明文「すがたをかえる大豆」の単元展開における誘発発問は、

「5つの事例の中で、仲間はずれはどれ?」

です。

 では、どうしてこの発問が、子どもの問いを引き出すことになるのでしょうか。

はじめに、教材分析の視点から考えていきます。説明文「すがたをかえる大豆」の段落関係を文章構成図に表すと、次の図のようになります。

③~⑦段落の「中」の部分は③~⑥段落が中1、⑦段落が中2というまとまりになっています。これは第1回目でも挙げたように「大豆」と「ダイズ」という表記、そして、事例の観点である「手を加えて、おいしく食べるくふう」という点からも、このように分類されました。

図からも分かるように、③~⑦段落の5つの事例は並列関係になっています。「仲間はずれ」を問うことによって、子どもたちは5つの事例の関係性に着目することができます。そうして段落同士の関係を図に表していくことの必要性が自然と生まれてくるのです。

また、「仲間はずれ」という表現を用いているように、選択型発問を取り入れています。「どれか?」といった選択型発問は、子どもたちにとって考えやすい発問の表現です。そのため、単元展開の前半部分で用いることによって、学級全体の授業への参加度を引き上げることができます。

さらには5つの事例の関係性に焦点化することができます。実際に授業を展開すると、この発問によって、子どもたちの考えや意見には、ずれが生じてきます。

子どもたちの考えや意見が分かれ、ずれが生じてきたときには、教師の「出」を変えていく必要があります。

「それって、どういうこと? 詳しくお話ししてくれる?」
「どこでそう思ったの?」

このような問い返しによって、子どもたちの相互交流を促し、学びを組織化していくのです。子どもたちの発言をさらに促すとともに、「誘発発問」で生まれた問題意識を学級全体へと広げ、さらに高めていくようにする。言い換えると、最初に「子どもの心に火をつける」ことが、誘発発問の大きな役割だと言えるでしょう。

授業は「展開」するものだと、私は考えています。教材分析をもとに単元計画を立てて、授業を具体的に構想する。その構想を土台としつつ、目の前の子どもたちと一緒にその場で授業を「創る」ことに尽力しています。時折、「授業を流す」のように「流す」という表現が用いられることもありますが、言葉が象徴しているように、この表現は教師のかかわりが見えないため、私は用いることのないようにしています。

誘発発問では、「仲間はずれ」を考えることを通して、子どもたちは事例の関係性(つながり)にさらに着目していきます。そこで、

「だったら、この5つはどんな関係になっているんだろうね? 図で書けそうな人いる?」

と問い、事例の関係性(つながり)を視覚化することに誘っていきます。子どもが学びに自然と入っていけるように誘うとともに、子どもたちの追求心をじわじわと高め、思考を練り上げる状態をつくっていくように誘っていくのです。

文章全体でなく、中の事例である③~⑦段落を図として表していくとよいでしょう。そして、

「だったら、⑧段落(終わり)とのつながりは?」

と、「中」と「終わり」との関係性に目を広げていくのです。

仲間はずれの事例を考えることを通して、「中」の事例のつながり、そして、「中」と「終わり」(具体と抽象)を関係図に表すことができることをねらいとしています。

「焦点化」することで、単元の山場をつくる

焦点化発問を、私は「ねらいに迫る発問」として位置づけています。子どもたちは一旦、立ち止まって思考を巡らせます。はっきりさせたい、どうしたらいいのだろうと自ら学びを求め、追求しようとします。

説明文「すがたをかえる大豆」の単元展開における焦点化発問が

「『また』『さらに』は、『そして』と言い換えることができますか?」

です。

ここでは、「どの大豆のくふうが一番すごいか」を話し合うことを通して、接続語を観点として事例の順序性を読み、「また」「さらに」を生かした作文ができることをねらいとしています。先に紹介した誘発発問との大きな違いは、一人の読者として、「評価する」読みを取り入れていることです。

実際の授業では、出発点として、次の発問を用います。

「どの大豆のくふうが一番すごいですか?」

説明されている内容でもある事例を話題とした問いを、出発点とするのです。「くふう」を観点に評価することで、子どもたち同士の交流の契機とします。そして、交流にさらに深みが増すように、クラスの友達は「どれを選んだか」「どうして選んだか」など、かかわりを求めたくなるような発問づくりに留意していくことがポイントとなります。

そして、説明されている内容から論理性に着目する発問づくりとして、焦点化発問「『また』『さらに』は、『そして』と言い換えることができますか?」を用いることで、筆者の論の進め方の工夫に着目できるようにしていくのです。

今度は、教材分析の視点から、この発問について考えていきます。

「中」の事例の接続語に着目すると、「いちばん分かりやすいのは」「次に」「また」「さらに」「これらの他に」となっており、この接続語の効果もあって、大豆がすがたを変えながらさまざまに食べられていることが分かりやすく述べられています。そして、接続語を観点とした事例の順序性についての吟味や検討が、述べ方についてのさらに深い思考を生み出し、書く活動へとつながっていくのです。

そこで、焦点化発問として「『また』『さらに』は、『そして』と言い換えることができますか?」と問うていきます。「そして」に言い換えることによって、⑤段落と⑥段落の述べ方を評価します。さらには、「また」「さらに」を使って事例を述べることで、「手をくわえて、おいしく食べるくふう」のすごさがどのように変わっているかについて考え、話し合っていきます。接続語に着目することで、事例の順序性が見えることを本時では押さえ、書く活動へと生かしていきます。

焦点化発問では、単元の山場を作れるかどうかがポイントとなります。子どもたちの中に疑問や葛藤が生じるような学習課題を設定し、没頭状態をつくり出すことに力を注ぎます。ここでは最初に「どの大豆のくふうが一番すごい?」と問うことによって、追求が進むように、曖昧となってしまう課題を接続語に焦点化していきました。

次回は、単元終末の発問<再構成発問>と1時間の授業を取り上げて実際の進め方を紹介します。1時間の授業紹介では、今回取り上げた<焦点化発問>の授業の実際を取り上げます。

 

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